第五十三話 新たなる旅の始まり
「コーイチ殿、せっかく娘を苦労して連れ戻してくれたのに、こんなことになって申し訳ない」
「王妃様」
後ろから低めでハキハキとした女性の声がして振り向くと、エレクトラ王妃が立っている。傅こうとしたところで手で制され、長旅の連続で申し訳ないがエルフの里に向かって欲しい、と頼まれた。俺は勿論行きますと即答するも、人間族がどうやって入れば良いかと尋ねたところ、王妃は自分のしていたネックレスを外しこちらに渡してくる。
「これは私の友の形見、追憶のペンダントです。彼女が消えた夜に私にプレゼントしてくれたもので、これがあれば里に入れるでしょう」
「通行証みたいなものですか?」
「違います。これはマナの木の精霊の持ち物。エルフの古い慣習に従い、マナの木を復活させる為、わが友エリザベスは長老たちに促されマナの木と同化した。その日の夜現れた彼女がこれを寄越したのです。長老たちもこれを見れば人間族と言えど拒めない」
「そんな大切な物を……」
「先ほどの声と言葉を聞いて、あなたに持たせるべきだと思ったのです。あの声はきっと彼女の声で間違いない……長い時が過ぎて忘れてしまったことを恥じています」
エレクトラ王妃はそういうと俺の後ろに回り、ペンダントを俺の首に付けてくれた。付け終えると前へ戻って来て哀しそうな目でこちらを見、それに気付いたのか一度天井を見上げて深呼吸をした後で、強いまなざしでこちらを改めて見る。
「娘とわが友を頼みます。彼女がせっかくあなたを寄越せと教えてくれた。私はあなたとあの子を信じてまっています」
「全身全霊をかけて任務に望みます。では早速出立しますので失礼いたします!」
一歩下がり頭を下げて踵を返した瞬間、ヴァルドバとエイレアが起きてきた。エイレアについてどうしますかと聞いたところ、案内役で連れて行ってほしいという。
本来であればテロリストとして処罰をする予定だった、今回の件で役に立てば多少軽くすると言われ、エイレアは現金にやったと声をあげて喜ぶ。
「コーイチ殿、言うまでもないでしょうがエイレアには気をつけて。私の妹ながら油断できません。テロを起こした人間族の町に平気で戻ってくる、その神経こそがエルフそのもの。故あれば斬り捨ててくれて構わないですので」
「姉さま酷い!」
「……お前が起こしたテロのせいで、亡くなった我が部下の人間族遺族の前で言うが良い。その時はためらいなく貴様の首を刎ねる」
「……頑張ります」
先ほどまでこちらに対して接していた感じと違い、戦場で勇ましく戦う彼女が顔を出した気がするし、それをエイレアも感じたからこそ大人しくなったのだろう。
「任せろ! 俺コーイチの部下だから気にせずコイツ潰す!」
「頼もしいなワーウルフの者。お前の方が妹よりも信用出来そうだ」
あっさりヴァルドバの正体がバレたものの、王妃様的にはオッケーのようでほっとする。しょぼくれていじけるエイレアを無視し、行くぞと二人に声を掛け王座の間を出て、そのまま町まで急いで移動した。
やることは多くあり、先ずは依頼完了の旨をギルドに伝え報奨金があれば貰い、それを元手にエルフの里へ行く準備を整えて出なければならない。
イリスがどういう目に遭うか分からない今、一刻も早く出た方が良いだろう。首都へ入って来た門の近くまで行き、通る人に聞いて冒険者ギルドを探し出す。看板は変わらないが建物はやはり立派で、ここなら大分稼げるんだろうなと思いながら中に入る。
「お、お疲れ様ですコーイチ様」
「コーイチ様?」
ギルドに付き荷物の中から依頼書を出し、完了した旨を伝えると知ってますと言われ、さらに様付けで呼ばれ驚いた。ギルドの受付嬢のユニフォームなのか着ている服は同じだが、西洋のモデルさんみたいな人が担当しており、その人に恐る恐る言われると何の罠だと勘ぐってしまう。
「あなたの功績を知らぬ首都の民はおりません。まさか今日お会いできるとは思っておらず……あ、依頼完了の報酬なのですが、あいにくとギルドでは受け渡し出来るものがございません」
「え!? ギルドで受けたのに!?」
「そうなんです。あれは特別依頼よりも上の国からの勅命ですので、直轄している国に申請して頂く形なんですよ」
冒険者ランク:ブロンズ初級
↓
シルバー級へ昇格(依頼時に試験であると伝えてあり、完遂したため自動昇格)
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
所持金:三十三ゴールド




