第五十一話 自分の求める国の形
「随分と賑やかな到着だな、リック」
「よく辿り着いてくれましたコーイチ、お礼を言います」
「パパ! ママ!」
前を見ると多くの兵を従え、二人の人物が並んで現れる。白銀の凝った鎧にマント、王冠とティアラをそれぞれ付けた、姿以上に大きく見える気がする二人を見て、イリスは声をあげ荷台から降りて駆け寄った。
二人は膝を折り駆け寄ったイリスを抱き止め、顔を寄せお帰りと囁き涙を流す。家族がようやく元に戻れた姿を見て、俺の依頼はこれでしっかり終わったんだな、と感じサジーから降りる。
イリスたち親子が互いの無事を喜び噛み締めている間に、サジーは騎士たちが小屋に連れて行ってくれ、家族が落ち着いたところで俺たちはヲスカーの城へと招かれる。
門から中に入った瞬間、うわぁと感嘆の声を漏らしてしまう。他の町と違い二階建てが多く、メインストリートと思われるところに立っても、遥か先に城があるのは分かるがどれだけ建物があるのか、他の町のようには分からなかった。
塀の近くの建物は塀より高く、恐らく敵兵が塀を登り切っても全貌は分からないだろう。道を進みながら横を見ると間はしっかり空いており、火災があった時には燃え広がるのを多少遅らせられそうだ。
道には小さな溝が縦に両脇に掘られており水が走っている。細かいところを時間を掛けて見れば、もっと色々な工夫が凝らされているのだろう。まさに人間族の最後の砦であり、防衛都市としてのレベルが違うと驚く他無かった。
かなりの長さ歩いてやっと城へ到着する。塀も高く水堀もあり、中庭も広く幾つもの橋を超えて城の中へ入った。町の中の兵士の数も多かったけど、城の中は間隔は空いていても兵士がいない場所は無い。
これだけの警備をしていても、テロを起こしイリスを連れ出せたエルフは脅威だなと思う。あとでエイレアにその辺りを聞いてみようなどと思っていると、王座の間に付いて扉が開かれる。
王たちが先に入り、こちらはボディチェックをされたのちに通された。広く天井が高い部屋の一番奥に玉座が二つあり、その後ろの壁にある美しいステンドグラスに陽が射して、すべてが神秘的な雰囲気が漂っている。
衛兵に先導され玉座近くまで行くと、リックさんから左ひざを突き右ひざを立てて腕を乗せ、頭を下げるよう促された。
チラッと見ただけだが王様は自分と似ているとは思えず、王妃様はイリスの大人版エイレアを切れ長の目にした、綺麗で凛々しい西洋の美人だ。
イリスはというと安心したのか、王妃の膝の上で口を開けて寝ている。哀しい別れをするのは嫌だったので安心した。
「冒険者コーイチ、そなたは記憶喪失だと聞いている。なので自己紹介からさせてもらおう。私が人間族の現国王であるタウマス、そしてこちらが我が最愛の妻にして我が国の要、エレクトラ王妃。さらにその膝にいるのがお前も存じているだろうが我が娘イリスだ。この旅の働きに私は最大限の報酬をもって報いたいのだが、何か願いはあるかね?」
容姿が似ていると言われたタウマス王だったが、その声は王という重責を長年務めてきたからか貫禄があり、自分の声とはまったく違うなと思い恥じる。質問に関しては何が良いだろうかと思ったものの、自分がやりたいことはただ一つなので、そうしたいとだけ伝えることにした。
「願いと言えばいつか自分の国を持ちたいと思っております」
「……冒険者であるのに国を持ちたいとは、少し変わった奴だな。死ぬまで遊んで暮らせる金銭などで無くて良いのか?」
「自分としてはそういったものより、自分の国が持ちたいと思っております」
前の世界でもそうだけど、老いれば金持ちというだけでは奪われるだけだ。自分はそれよりも顎で使うより使われる立場、いや、今は守りたい人たちを守れる国が欲しいと思っていた。
人間族のみという感じではない国を作りたい、そんな気に今はなっている。恐らくイリスと過ごしたお陰だと思う。各種族がいがみ合う世の中で、すべて混じり合った国を作って見たくなった。
どの種族だろうと自分の国こそが一番で愛している、そういう国民のみの国を見てみたい。帰属意識が無ければ言葉も覚えず相手の文化も尊重しない、元の種族の事ばかり言う国ではきっと持たないだろう。
その辺りの法律なんかもしっかり作りたいなと今考えて思い、少しずつでも作っていこうと決める。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド




