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転生おじさん立志伝~一国一城の主を目指して~  作者: 田島久護
冒険者初心者の章

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第五話 リック式稽古と魔法との出会い

二刀流初日から夜遅くまで剣を振り続け、倒れずになんとか乗り切ることができた。次の日から同じメニューが一週間続き二週間目に突入すると、筋トレの数もランニングの距離も伸び、剣の稽古も素振り後に木の枝に変え実戦形式に変わる。


三週間目には筋肉痛で体が悲鳴を上げ、体を動かせば激痛が走る状態になってしまった。稽古中止かと思いきや、リックさんの紹介でこの世界の神であるクロウを信奉する、町外れの教会で回復魔法をかけてもらうことになる。


来て大した日数は経っていないが、そう言えば魔法を見たことがなかったなと気付く。筋肉痛になったことで魔法を知れるなんて、偶然にしては出来過ぎな気もした。


担がれて訪れた大きな白い建物の玄関扉の上の壁には、円の中に三日月の形とその逆の形が書かれた印が見える。


「当教会に何か御用ですか?」


 扉の一歩手前くらいに来た瞬間、扉が開き修道服を着た目鼻筋の通った切れ長の目をした女性が現れた。


「ああシスター居て良かった。悪いんだけど彼に回復魔法をお願いできないか?」

「これはこれはリックさん、御久し振りですね御病気の治療ですか?」


「俺は元気なんだが彼を治療してくれないか? 今稽古中なんだよ」

「魔法は限られた場所、人にしか使うことが出来ない、など使用に際しては細かい法があると知っていて、あなたは私に彼の治療をお願いしているのですか?」


「事情は後で話すよ。兎に角頼めないかな」

「……わかりました、そうまでいうのであれば中へどうぞ」


 シスターはそう言って中へ促す。背負われながら進んだ先には凝った装飾の壁や柱が並び、長椅子が幾つも置かれその一番奥のステンドグラスの前に、ローブを着た初老の男性が両手を広げる像があった。


「ここに」


 像の前にある椅子に座らされ、肩を叩くまで目を閉じ耳を塞ぐよう言われる。なんとか手を動かし耳を塞ぎ待っていると、段々体が暖かくなり痛みが解けるように消えて行った。少しして肩を叩かれたので耳から手を離す。


「これで治療は終わりました。体の具合はどうですか?」

「す、凄い……動かしても痛みが全くないです! ありがとうございます!」


「大いなる神クロウのご加護です。今後とも稽古頑張ってくださいね」

「頑張ります! ところで今耳を塞ぎ見えなくしたのは、魔法を見たり聞いたりしてはいけない、ということですか?」


「魔法は使いようによっては悪用出来てしまう、人には過ぎた力なのです。なくても生活には困らないので町ではここ以外に魔法は無いのです。目と耳を塞いでもらったのは、極稀に見聞きしただけで使えるようになってしまう人がいるので、その為の対策です」


「昔から才能のある法や規律を嫌う者は法を無視して外でも使うし、魔族やエルフ族は攻撃魔法も使える上に法を無視しての使用例もある。こちら側だけが使わない、というのも俺はどうかと思うが……そうだ、一か月の鍛錬後にシスターから魔法などの授業を受けるといいよ」

「魔法の知識はぜひ欲しいです! お願いします!」


「わかりました。喜んでお手伝いさせて頂きますが……」


 シスターは笑顔のままその後の言葉を言わない。リックさんから五十ゴールドくらい授業料をと耳打ちされたので、使いやすいように予め崩しておいた五十ゴールドを前払いで支払った。


「心からの寄付、誠にありがとうございます。では来月からコーイチさんには我が教会で授業を行いますので、逃げずに一か月通ってくださいね?」

「わ、わかりました! よろしくお願いしますシスター! ところで逃げずにとは……」


「あ、そうだ。私の名前はアヤメ、シスターアヤメと申します。以後そうお呼びくださいませ」

「改めましてコーイチと申します。シスターアヤメさん来月からお世話になります!」


「それではごきげんよう。これから礼拝の時間ですのでまた来月」


 こちらの問いに答えては貰えず、シスターアヤメに見送られながら教会を後にする。リックさんに聞いてみたが、彼女とは古い知り合いだが日常生活では敬虔な人物なので大丈夫だろう、という余計謎が深まる答えが返ってきた。


「さて体も万全になったし稽古を始めよう。俺との稽古はもう二週間だけだし、ここからはさらに厳しく行くぞ! 走れコーイチ!」

「あ、はい!」


 筋肉痛が治ったのに休む暇もなく稽古が始まる。リックさんの宣言通り、この日の稽古から筋トレの姿勢から走る姿勢、剣を振る動きなど細かい修正が入るなど濃く厳しくなっていった。


最終週は実戦形式の立ち合いが始まり、結局一度も良い打ち込みが出来ず稽古はお終いとなる。


「よく一か月ついて来てくれたな! これで最初よりは強くなったし今度盗賊に襲われても撃退できる」

「ありがとうございます! 一か月お世話になりました!」


「明日から俺は別のところへ行くが、この町にも帰ってくる。今度会う時にどれだけ鍛えたか見せてもらうから、稽古を怠らないようにな。終了記念として最初に貸したそのショートソード、それをプレゼントするよ」

「え、良いんですか? 高そうなショートソードなのに」


「腕のいい鍛冶師につくってもらったんだが、俺はショートソードを頻繁に使わないしまた作ってもらうから良いよ。ガンガン使ってくれれば鍛冶師も満足だろう。じゃあまたなコーイチ!」


 こうして冒険者ギルド前でリックさんと別れた。風のように現れ去っていく人だなと思いつつ、突然一人になった寂しさを感じながら宿へ戻った。

二刀流剣士初級になった!


仲間:なし


所持品

メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)

サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)

防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)

アイテム:無し


所持金:百ゴールド

    ↓

    シスターアヤメへの授業料として五十ゴールド支払い

    ↓

    残り五十ゴールド

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