第四十九話 首都へ向けて
「おはよう!」
「おはようコーイチ! イリスももう起きてる!」
「……お前ら俺を殺す気か?」
大きな声を出されるだけならまだ良い、イリスだけがダイブして来るならいつもの朝だから許そう、だがワーウルフとイリスが一緒になってダイブして来るのは違う。目が覚めたが一瞬で永眠しかけるほど、凄まじい勢いと重さで押しつぶされそうになった。
こちらの抗議に対しニヤニヤしている二人に、早く退いてくれというとやっと退いてくれる。昨日の今日でなんで仲良くなっているんだと思いつつ、朝のルーティーンを三人で行い宿の食事へ向かう。
大食いの仲間がいるのでと昨夜伝えたので、腹が膨れやすそうなパンとかご飯系のものが多く出て、なんとか宿の食堂を壊滅させずに済んだ。
本人も満足だったらしく、宿を出る時は鼻歌交じりである。イリスはヴァルドバに肩車してもらい、いつもより高い景色にご満悦のようだった。
ギルドに行きいつ出立できるのか尋ねると、いつでも準備出来ていますと言われ、その足で宿へ戻り出立の準備を始めることにする。リックさんはどこか知ってますかと聞いたところ、安全に首都へ入れるよう警備へ向かったと言われた。
これほど心強いことは無いと感謝しつつ、ギルドにもお世話になりましたとお礼を言って宿へ向かい、部屋に入ると荷物をまとめ始める。
「おあよ」
「あー! 寝坊助だ!」
「寝坊助良くない! 飯抜きだお前!」
「テンション高っ……」
荷造りをしていると頭ボサボサのエイレアが入って来た。常時テンションが高めな二人に対し、うんざりした顔をして部屋を出て行こうとするので、もう少ししたら首都へ向けて出るぞと伝える。
分かったと言いつつのんびり歩きながら向かいの部屋へ入った。一応同室は不味いので開いてる部屋を貸してもらい、エイレアは向かいの部屋で寝ている。ヴァルドバはというと一人は嫌だというので、床に毛布を敷いて包まって同じ部屋で寝ていた。
「お世話になりました!」
「「ました!」」
「お世話になりましたー」
全員荷造りを終え部屋を出て、宿の受付と食堂で皆さんに挨拶をして外へ出る。気の抜けた挨拶をしていたエイレアに対し、イリスとそれを担ぐヴァルドバから彼女は注意を受ける。はいはいと流しながら町の東へ向かい、荷物チェックを受けてサジーを迎えに行く。
「ヴァルドバはどうやって乗る?」
「俺は要らない。俺の方が早い」
サジーの荷台へ荷物とエイレアとイリスを乗せ、ヴァルドバをどうするかと思ったらそう胸を張って言う。たしかにそうかもと考え彼の思うようにしてもらいつつ、エイレアがイリスを連れ去らないようにマークしてくれ、と本人に聞こえるように伝えた。
「そういうので良いのよそういうので。コソコソやられたら殴るくらいしたけど、はっきり聞こえるように言われるのはいっそ清々しいわ」
「悪い奴の癖に偉そうだなお前」
「ワーウルフのアンタに言われたくないわよ。なんで急に人間側に付いてるのよ」
「俺はコーイチに負けた。コーイチは黒騎士に及ばなくとも、他の魔族より強いのは間違いない。なら付くのはコーイチだ。ご飯くれるしそれが大事」
「よく分からない理屈ね」
「めちゃくちゃ分かりやすいだろヴァルドバの話」
「黒騎士に付いた方が良いじゃんアイツ強いしコーイチより」
「アイツはきっと誰の命も見ていない。この世の誰も」
ヴァルドバに言葉に俺もエイレアも黙ってしまう。きっとヴァルドバの言葉は正しくて、黒騎士にとって自分より強い者でなければ意味がないが、殺しても次を探すだけでそこには何もない気がする。
他人の感情や環境などは、戦いにおいて利用できるならする程度の認識だろう。もしかしたら過去に何かあったのかもしれないが、今はそれを知るすべがない。
エイレアに黒騎士に付いて知る方法はないかと聞くと、エルフの里の長老を締め上げれば行けるかもよ、とヤバいことを提案された。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
リック(七聖剣の一人であり剣の師匠)
エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド




