第四十七話 予想通りの訪問者と意外な訪問者
太っているつもりはないが、こんなおっさんを軽々投げ飛ばせるなんて、アヤメさんはやっぱり強いななどと思っていると、彼女はこちらに近付き胸倉を掴むと顔に近付け言った。
「よく聞けコーイチ。弱い奴ほど魔法や特殊な技に頼る。だから我々はその類を限定しているのだ。一般人までそれが広がれば、異教徒との戦い以外で人が死ぬし死に掛ける。お前のようにな」
「す、すみません……」
怒っている顔をしているが、なぜかそこには少しだけ哀しさが混じっているように見える。彼女の言葉からして、これまでもそういう人がいたのだろうと考え素直に謝罪した。
分かってもらえたのか胸倉から手を離してくれ解放される。顔は真顔に戻ったが腕を組み見下ろされ、圧が半端なくて怯えざるを得ない。
「言っても分からないのは十分理解した。お前は依頼が終わったらしばらく首都の我が教会で、私が許すまで修行をさせる」
「え!?」
「何?」
「いやぁ出来れば依頼が終わったらのんびりしたいなぁなんて……無理ですかそうですか……」
「はぁ……もうこれ以降は何も来ないでしょうから、さっさと首都へ行ってあの子を親に帰してください。これ以上面倒が増えるのはごめんなので。ほら、耳塞いで!」
言われた通りに指を突っ込んで耳を塞ぐと、寝転がるこちらの胸に左手を当て素早く口を動かす。少し間があった後で手が光り、じわじわと体があったかくなって満たされていく感じがした。
暖かさを体で味わっていると肩を叩かれ、顔を見るとアヤメさんが頷いたので耳から指を離す。
「これでもう大丈夫でしょう。面倒な連中を連れてさっさと首都へ来てくださいね?」
忌々しそうに言って彼女は部屋を出て行った。イリスの為に首都へ行くが、その後でアヤメさんからの修行が待ってると思うと、出来ればこっそりギルドで依頼完了させアーの町へ戻りたい。
戻ったところで地の果てまで追いかけてきそうなのが怖いので、大人しく従うしかないのがつらいところである。一つ深呼吸をしてからベッドから勢いを付けて起き上がり、久し振りに一人での散歩に出ることにした。
いつもイリスが隣にいたが、首都へ着けば彼女ともお別れになるだろう。とはいえ修行してるから近いと言えば近いだろうけど、外出する権利が与えられるかどうかはアヤメさん次第だ。
「おい」
気ままに露店を見て回ったり、防具屋を覗いたりして久々に一人を満喫していたところに、突然二メートルはあろうかという大男が立ち塞がる。髪の毛は白く腰まであるボサボサ頭で、目付きは鋭く筋骨隆々、袖なしシャツにスラックスそしてブーツという、簡素な格好の人物だった。
「何か?」
「腹が減った。飯が食いたい」
「……なにを言ってるのか分からないが、飯が食いたいなら冒険者ギルドで仕事を受けて、稼いだお金で喰えば良い。あいにく女性と子供以外に奢る財布は持ってない」
「なんだと!? 食料をプレゼントするって言ったじゃないか! あれは嘘か!?」
こんな大男に食料をプレゼントするなんて言ったっけ、とこの世界に来てからの濃くも短い日々を思い返す。食料で釣るような展開って言えば……ああそうかワーウルフの襲撃戦の時にそんな話したなそう言えば。
ということは目の前にいるのはあのワーウルフなのか? と話しの内容を聞けば思うが、目の前にいるのはワーウルフではなく人間にしか見えない。ワーウルフのとは言えないので、名前だけ聞いてみることにする。たしかヴァルドバって言ってたはずだ。
「お前もしかしてあのヴァルドバなのか?」
「俺以外に誰が居る! 約束を守らないのか!?」
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十七シルバー




