第四十五話 連続使用
「まったく……転生しても厳しい人生とはね……神様も余程俺が嫌いらしい」
「ふふふ……神に嫌われている同士、死ぬまで仲よくしようではないかコーイチ」
怯える自分を奮い立たせるべく軽口を叩き、それに対して悍ましい呪詛を黒騎士は吐いてくる。冒険者としてまだ普通の依頼も大して受けてないのに、こんなとんでもないことに巻き込まれてしまった。巻き込まれた以上もう無かったことにはならない。
それこそこちらが死ぬか相手が死ぬか、どちらかでしか終われないのだろうと思う。今度があるならもう少しまったりゆっくり強くなりたいものだ。
「さぁ残り時間までお相手しましょうか」
「なぁにそれほど長くはない。終われば私は去る。それまで精一杯私を倒しに来てくれたまえ」
「冥府渡り!!」
息が切れることを考えるのは止め、息を止めつつも全力で黒騎士に斬りかかる。こちらが十切りつけても全て捌かれ、相手の一振りであっさり下がらされてしまう。エイレアは呪いの鎧を着て強制的に能力を上げている、と言っていたがそれだけではないと思った。
上げてはいるだろうがそれ以上に鍛えている。自分が彼の立場であったとしてもそうしているし、冥府渡りを習得しても鍛え続けるだろう。
鍛えれば鍛えるほど底上げになる、戦うことが大好きな黒騎士なら喜んでやっているはずだ。攻めては下がらされを三回ほど繰り返したところで、息を止めるのも限界に近付き思い切り下がる。
黒騎士は追って来ずに剣を軽く振ると足を止めた。こちらが思うほど時間は経っていない様で、霧は掛かったままだ。五回目の冥府渡りとなると、本当に死ぬかもしれないと思いながらも呼吸を整える。
なんとか呼吸も落ち着きもう一度と思ったところで、エイレアが黒騎士に声を掛けた。
「ちょっと待って、あなたに聞きたいことがあるの!」
「何の用だエルフ。私は今最高に楽しい一時を過ごしているのだ。お前のお陰だから少しは許してやるが、短めで頼むぞ?」
黒騎士はエイレアを見ずに剣の切っ先をこちらに向けながら、彼女の問いを待つ。問いたいのは三つだと宣言し、一つはエルフ族かそうでないのか、二つめはその呪いの鎧はどこで手に入れたのか、三つめは契約をなぜ果たさないのか、と質問を端的に素早く提示する。
「賢いなお前は。その賢さに免じてこちらも簡単に応えてやろう。一に関しては想像にお任せするし知りたければ私を倒せ、二に関しては武具を手に入れたのはエルフの里とだけ、三つめは魔族に契約の順守など意味がない、これで十分かな?」
「今はそれで充分よ、ありがとう黒騎士さん」
エイレアは嫌味なくそう伝えた瞬間、黒騎士は構えを解いて切っ先を下げると鞘に納めた。どうしたのかと聞くと興が削がれたという。個人的には有難いが突然の心境の変化に驚きを隠せない。まだエイレアの仕掛けたであろう霧は完全に晴れてはいないが、取り合えず彼の気は収まっておりホッとする。
「コーイチ、お前との付き合いは長くなる。是非次はもっと強くなっていてくれよ? でなければあっさりお前もイリスも殺してしまうかもしれんからな」
そう言って下がり始めると四歩目くらいで景色に溶けて消えた。しばらくは警戒していたものの、完全に気配が消え町も普段と変わりなく感じたところで、ようやく普通に息を据え地面に寝転んだ。
「あなたって本当に凄いのね、コーイチ」
駆け寄って来たエイレアは俺の顔を覗き込みながらそう言った。黒騎士は俺を子ども扱いしていたよと返すも、あんな反則じみた奴を相手に出来るだけ凄いという。
リックさんも近付いて来て、あんな凄い技を持ってるなんて驚いたと言うので、習得した時の状況を話すも二人は困惑した表情を見せる。
「クロウ教徒みたいなことを言うな……神のお告げってやつか?」
「そう言うんじゃないと思いますけどね。何しろこの技を不用意に使い続けると死ぬらしいので」
「うーんでも見た感じも生命力の流れも、疲労はあっても寿命が縮んだようでもないわよ?」
「え、そうなの?」
三人でよく分からずに唸っていたが、しばらくしてイリスの事を思い出し急いで宿の中へ移動した。
「どごいっでだの!!」
部屋のドアをゆっくりそっと開けたところ、毛布を握りしめ仁王立ちするイリスが出迎えてくれる。号泣しながら激昂し暴れるイリスを宥めつつ、リックさんとエイレアにはまた明日の朝と告げ、部屋の扉を閉めて就寝した。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十七シルバー




