第四十三話 夜の店の窓際の席で
「美味しい……あったまるわぁ」
近くにあった飲み屋に入り、ココアを注文して窓際の席に座る。出されたラノココアという、元の世界のココアっぽいものこちらが飲むのを見た後で、恐る恐る口に含むと目を丸くした後でうっとりしそう言った。
何か食べるかと聞きながらテーブルにあったメニューを渡すも、人間族の文字は読めないと言われ、何かしょっぱいものが食べたいというので、メイクンというこの世界のジャガイモの揚げたものを注文した。
しばらくしてそれが出てくると釘付けになり、意を決して口の中に含み噛むとまたうっとりした顔をする。あっという間に一皿平らげたので、もう一皿注文すると彼女は歓喜した。
「人間族の食べものって見たことしかなかったけど、こんなに美味しいものなのね」
「そっちではこういうの無いの?」
「私たちはあなたたちより多くの面で秀でているけど、その分体力や生命力、それに力が弱いのよ。畑をするとかも無理だから、自力だと森で生るものとか昆虫食になっちゃう」
「そりゃ好んで食べたくないな」
「でしょう!? だから人間族とは取引とかは普通にしたい気持ちはあるの。でもイリスのことがあって……」
表情が暗くなり最後に残ったメイクン揚げの欠片をフォークで突く。もう一皿頼もうとすると両手を突き出し嫌々というので、止めようとしたところ、え!?と大きな声を出す。
店員さんは苦笑いしながらもう一皿持ってきますねと言って下がっていく。恨めしそうな顔をしながらこちらを見つつ力なく手を下ろしひっこめる。
「やっぱりあなた可笑しいわ」
「何が?」
「人間族となんて話すつもり無かったのに、なんか喋ってる」
「良いんじゃない? 別に。そういう夜があってもさ」
「軽いのね。私たちはあなたたちの事が嫌いなのに」
「知らないね。俺は別にエルフ族の事が嫌いじゃないし」
「……あなた名前は?」
「え?」
「あなたの名前は!? 特別に聞いてあげるって言ってるの!」
「そ、そりゃどうも。コーイチと申します」
「私はエイレア」
素っ気なく答えると店員さんが持って来てくれた皿をひったくり、こちらに顔が見えないようメイクン揚げを急いで食べ、案の定喉を詰まらせ咽たので店員さんと介抱した。
どうしたのか聞こうとした瞬間、物凄い殺気が宿があった方向からする。腰の袋からお代を出し、店員さんにお礼を言って急いで店の外へ出た。
「凄い瘴気を放ってるわね……黒騎士って」
エイレアと並走しながら宿へ向かっていると、彼女の見解を話してくれる。遠くからでも分かる殺気と町の空気からして、黒騎士は呪いを纏っているのではないかという。
自分自身が呪いの防具などを身に着けることにより、本来の能力とは別の能力を身に着ける、かなり強引な方法があるらしい。
以前聞いた強い者と戦いたいという彼の言葉を謳えると、その為に禁忌と呪いに手を染めてエルフ族を出て行ったのかも、とエイレアは話す。そうなればエルフ族というよりも魔族に近く、共に行動していても可笑しくないとも言った。
「おや、エルフの女と連れ立ってお越しとは随分と呑気なものだな。だが待っていたぞ? コーイチ」
角を曲がって宿の前が見える位置まで来ると黒騎士が立っており、こちらにすぐ気づいたようで振り向き剣を構える。
「ま、待て黒騎士! 今の相手は俺のはずだ!」
黒騎士の後ろを見るとリックさんが片膝をついて息を切らしており、そう叫んでいた。黒騎士はそれにはなにも反応せずにこちらに斬りかかってくる。
「剣を抜けコーイチ。俺はあの魔族どもを倒した時のお前の力を見に来たのだ」
「イリスは!?」
「俺は興味がない、というのは分かっているだろう?」
「俺と戦う為にわざわざ来たのか」
「それ以外に何がある!」
エイレアを突き飛ばして逃がし、剣を抜いて弾きながら下がり宿やエイレアから距離を取った。剣を合わせて分かるが、今回は前回よりも力も早さも一段上に感じる。気安く受ければ剣を弾き飛ばされるだろう。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十七シルバー




