第四十話 首都の手前の町へ
「私もお家、帰りたいな……」
レオンさんたちから離れ、二人で賑やかな町を散策しているとイリスがそう呟く。初めて聞いた言葉に驚くと共に、この旅がもうすぐ終わりであることを思い出させる。本来であればもう少し早くあっさり終わっていたものが、いつのまにか長く密度の濃い旅になっていた。
異世界に来て冒険者になり、それから数回目の依頼でこんな大仕事を任せられるなんて、まるで年齢と経験の差を埋めるかのようだなと思えた。
「そうだな、もうイリスのお家に帰ろう」
「一緒に帰る?」
「もちろんだよ」
それが俺の受けた依頼だから最後まで行く、とは言わずに短く答えるに留める。首都ヲスカーに着けば依頼は終わり、俺はそのままアーの町に帰るだろう。以降は冒険者として色々学んで行こうかな、と漠然と思いながら散策をした。
夜まで露店で色々摘まんでいたのでお腹は一杯で、宿に戻るとお風呂に入った後は即眠りに就く。
「おはよう!」
「ぐぉ!?」
これまでで一番強めのダイブで起こされる。心なしか背が少し高くなった気がしたが、子どもは成長する生き物なので不思議ではないだろう。
朝のルーティーンをこなして宿からギルドへ向かい、受付嬢のマイアさんに出発しても良いか確認を取ると、出ても良いと許可を得たので宿へ戻り急いで支度をして出た。
どうせ敵が来るにしても不意を突くような形で移動すれば、それだけ相手に動揺や考えさせる時間を作れる。イリスに聞くと首都まではあと一つ町を通過すれば良いらしい。
相手も首都近辺で大規模な行動を起こしては来ないはずだ。こちらの動向を探っているついでに、首都のことも調べているだろう。そう考えると双方ここから首都までの間が、この旅の最後の勝負になる。
出来れば戦うことなく首都へ到着し、イリスに両親との再会を果たさせてやりたい。良い旅だったという締めの言葉で依頼を終えたい。
「サジー!」
「サジー頼むぞ!」
門を出て小屋に行き、サジーに荷物を乗せながら声を掛けるといなないて返してくれた。他の馬よりも小さいサジーだが、速さではそれらをあっさり抜き去るほど早い。
森に入る前に石と枝などを拾い集め道案内はイリスに一任し、俺は前方の敵に集中しながら手綱を握り、敵が待ち受けているであろう森へと入っていく。
「待て!」
「待つかよ! サジー!」
盗賊が現れたのでイリスから石を貰い投擲する。コントロールには自信がなかったが、これまで筋トレをしていたこともあり結構早く投擲でき、一人の顔に当たり倒すことに成功した。
「クソッ!」
人間の野良の盗賊だったのか一人倒れただけで意欲を無くし、サジーの道を開けてくれる。助かったと思いながら石をイリスから貰い次の盗賊に備えた。
予想通り次々と盗賊が来たもののなぜかやる気のある盗賊はおらず、あっさり通過し森を抜け首都手前の町であるナクルに到着する。
時間的に昼を過ぎてしまっていた為、無理をして森で夜を迎えるのは不味いと考え、ナクルで一夜を過ごすことにした。
サジーを小屋に預けてから町の中へ入り、いつも通り冒険者ギルドにも報告して宿を紹介してもらって、さっそく最後の町を散策しに出かける。
「食べたいものとかあったら言ってくれ。多少軍資金に余裕があるんだ」
「本当!?」
「もちろん。一応イリスにこれまで嘘ついたことは無かった気がするが」
そういうとイリスは手を振り払い背中をよじ登り始め、肩車の位置にすると頭にしがみ付き早くと急かしてきた。取り合えず支援金ももうすべて今袋に入れてきたので、ある程度なら買ってあげることが出来る。
―こんばんは
不意にどこかから声が聞こえてきた。誰だと思ったが
―あなたと話がしたいわ。その子が寝た後で会いましょう、夜の町で待っているわ。
前に会ったイリス似のエルフだと気付く。行かなければ襲撃してくるのは目に見えているので、会いに行くしかない。イリスを放置して会いに行く訳には行かないので、後でギルドに護衛を要請してから会いに行こうと決めた。
「いよう、お二人さん」
「あ! リックだ!」
もうある程度の事情は把握している今、いったい俺に何の話があるのかと考えつつ、二人での最後の買い食いを楽しんでいたところにリックさんが現れる。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




