第四話 剣士への道
「ぜひお願いします」
悩むことなく即答する。最初の依頼であの醜態だ。今回は運良くリックさんに助けられ帰ってこれたが、この先ずっと運が良いだけで生き残れるはずはない。特に俺はおっさんなので、若い冒険者よりも成長面で残された時間は少ないだろう。
「よし、そうと決まれば早速始めるとしようか」
「よろしくお願いします師匠!」
「俺のことを師匠と敬って呼ぶとは良い心掛けだ! 先ずは走り込みから行くぞ!」
「押忍!」
小さい頃に虐めらて死に掛けたことがあり、両親や周囲の勧めで高校生まで空手の道場に通っていたので、体を動かすことには抵抗は無かった。とは言え道場に行かなくなってもう長い時が立っている。転生してどの程度おまけがあるか分からないが、全力で取り組んで強くなろうと気合を入れ後を追った。
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「うーん、以前何をしていたのか気になるレベルで体力があるな」
「え……そ、そうですか?」
結局この世界の月二つが隣り合う夜遅くまで走らされ、リックさんについて行けず倒れ込んで地面に寝ころがる。体力がある判定をされたもののリックさんは汗すら掻かず、七聖剣という称号は凄いのだろうなと漠然と思った。
「じゃあ今日はここまでだ。明日は早朝から基礎トレーニングをした後、昼食を食べた後で剣の稽古を始めよう」
「あ、ありがとうございました」
なんとか立ち上がりお礼を言って一礼する。リックさんは町に家があるらしくそちらへ向かって去って行った。見送った後で鉛のように重い体を引きずりながら、町の入口近くにある初心者専用宿へと戻り、風呂に入る気力もなくそのまま就寝する。
「いくぞコーイチ!」
「ふ、ふぁい……」
それこそ数秒に感じられるほどあっという間に朝は来て、リックさんに叩き起こされ宿を後にした。最初はストレッチから入り、次に筋肉トレーニング、その次にランニングをこなして昼を迎える。
「……コーイチその左手の動きは何だ?」
「え?」
昼食を食べ終えると剣の稽古をするため町の外へ出て、素振りをするよう言われたのでしていたところ、リックさんからそう指摘される。自分では分からないので首をかしげていると、彼は腰に差していたショートソードを鞘に入れたまま投げて寄越した。
「左手に装備して素振りして見てくれ。右はそのままで」
どうして良いのか分からないが、取り合えず自分で思うように動いてみる。
「コーイチ、食事している時も左右の手を器用に動かしていたが、お前ひょっとして両利きか?」
子供の頃に通っていた道場の先生から、左の方が有利に働くからと徹底的に左構えを教え込まれ、それ以降は右も左も使えるよう日常生活から気をつけていた。まさかそれを説明する訳にもいかないので、
「……あまり気にしたことは無いですが、両方の手を使うのに不自由はないですね」
そう答えるとリックさんから二刀流にしてはどうか勧められる。二刀流というと自分が知る限り、厨二っぽくて痛いイメージしかない。
「二刀流ってちょっとカッコつけすぎじゃないですかね……若い子なら良いかもしれませんが」
「確かに曲芸みたいでご婦人受けを狙っている、と言われないよう努力しなくてはならんけどな。まぁそこは心配する必要はない。これから一か月、曲芸などと言われないようみっちり稽古を付けるから」
「い、一か月ですか」
「俺の予定もあるが、コーイチの能力ならそれくらいで一人前になれるだろう。そこから先は自分で磨いていくしかない」
「わかりました、頑張ります!」
「今日朝からやったメニューを一か月通してやっていく。内容は徐々に厳しくしていくから、気を引き締めて励んでほしい」
「お、押忍!」
こうしてリックさんによる特別訓練が始まった。期待と不安を振り払うように一心不乱に剣を振る。
仲間:なし
師匠:七聖剣リック
所持品
武器:銅の剣(初心者講習修了記念)
リックさんから借りたショートソード
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:無し
所持金:ニ百ゴールド
↓
リックさんへの稽古代として百ゴールド支払い
↓
残り百ゴールド




