第三十八話 クロウ教のシスター
話しを聞き終えて思ったのは、黒騎士が他者を利用して敵を倒すという点に違和感を覚えた。強い相手を真正面から倒す、そのことにこそ喜びを覚えるタイプではないだろうか。陽動だと分かったのも気になり来てみる。
「陽動だと分かったのはなぜですか?」
「黒騎士がマイアに言ったそうです。生き恥を晒すレオンを許せないから始末しに来た、俺の目的はあの子どもではない、と。コーイチに伝言を残したのも、その証拠なのでしょうね」
イリスが目的でもないという言葉のみ信用出来るが、俺への伝言の為に大勢に知らせる必要があるのか。しかも卑怯な手を使ってまでレオンさんを始末した、そうわざわざ言ってるのも変な気がした。他に思惑がある気がしてならない。
「あの魔族三人は?」
「出来れば私の手で殺したかったのですがね……黒騎士が兵士たちを殺して連れ去ったそうです」
それを聞いて愕然とする。あの時に自分も一緒に行っていれば、彼らは死なずに済んだのではないか。悔しさで前を見れず顔を手で覆う。
「戦場では誰がいつ死ぬか分かりません。ワーウルフとの戦闘でも数名死者が出ています。それもあなたのせいですか?」
「それは……いてっ!?」
ワーウルフでも死人が出ていたのに驚き手を顔から退かすと、アヤメさんが手を振り上げており、防ぐことも出来ずに右頬を叩かれる。
「思い上がるなよおっさん……禁忌の術が使える程度で強くなった気になるな」
見下ろし歯を剥き出しにしながらそう言われた。たしかに言われてみればその通りだ。俺がリックさんくらい強ければ誰一人死ななくて済んだだろう。
「すみません」
「分かれば宜しい。今回の件についてはリックさんに多大な失点があります。クロウ教としてはそろそろ打って出るべき、という意見が多くなってしまいました」
最後の方は何故か嬉しいのか声が上ずっていた。彼女にそのまま問うと嬉しいという。大義名分を得て異教徒を滅することが出来るのだから、嬉しくないはずがないと言い切る。
「他種族は滅ぼしたいですか?」
「違いますよ? あくまで異教徒には厳しく行くのです。改宗する気がある者やクロウ様以外を拝んでいなければ、他種族であろうとクロウ教の教義を侵してなければ、厳しくはしません」
神を信じたことは無いので、半ば呆れつつクロウ教は素晴らしいものなんですねというと、単純明快だからですという。他者を貶めず他者をみだらに攻撃せず、自らを律し鍛え命尽きるまで修行をする、可能な限り他者を許し共存の道を探れ、それが基本理念だそうだ。
「故にテロリストであるエルフ族と魔族は滅びるべき、と言っているのです。わざわざ自分たちの欲望のために話すこともせず攻撃するなど、説得する気にもなりませんので」
そう話す彼女はシスターという立場に相応しい、清廉な雰囲気を醸し出していた。大義名分を得られたと喜んでいた顔と今の彼女を比べて思えば、宗教は恐ろしいなと思わずにはいられない。
「取り合えず二、三日は大人しくしててくださいね。イリス様はこちらで面倒見ておきますから」
若干最後の方は嫌そうに言って視界から姿を消す。少し気になり慌てて上半身を起こし、部屋のドアへ移動するべく背を向ける彼女に、イリスに乱暴はしないで欲しいと頼むと
「馬鹿なことを……あれでも次の王になるかもしれませんからね。適度に扱いますよ当然」
そう言って部屋を出て行った。文字面を見ただけでも気に食わないのが分かる。出来れば後を追いたいが、大人しくしていろと言われたのを破った場合、イリスが余計酷い目に遭わされる気がして自重した。
どうか無事でいてくれと祈りながら、ベッドに横たわり目を閉じ眠りに就いた。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




