第三十七話 久しぶりの再会と驚き
門に兵士がいたので挨拶し中へ通してもらい、そのままギルドへ向かい中へ入ると丁度マイアさんがいた。イリスちゃんも一緒で良かったと言ってくれたものの、レオンさんの容体はどうかと尋ねると目を伏せる。
挨拶をしたいと頼んだが良い澱まれたので、ひょっとしたら力になれるかもというと空笑いされた。人間族では魔法は限られた人、限られた場所でしか使用を認められていない、というアヤメさんの言葉が蘇る。
タスラの町にもクロウ教の司祭がいるものの、ワーウルフの襲撃があったせいで冒険者の怪我人を多く治療し、魔力が尽きてしまい首都からの応援を待っているという。
「待っていて間に合うものなのですか?」
「そ、それは……」
口ごもるマイアさんを見て、神に祈るレベルなのだろうと察する。レオンさんはリックさんの師匠でもあるし、イリスもお世話になった人物のようなので、出来る限りのことはしたいと思った。
「ならダメ元で俺にやらせてもらえませんか?」
「ダメ元?」
「あ、駄目で元々ってことです」
マイアさんは俺を見て小さく笑い、そこまでいうならとレオンさんのいるギルドの二階へ案内する。部屋には血の臭いが充満し、ベッドで横たわるレオンさんの右肩に撒かれた包帯は、血が止まらず溢れ出ていた。
顔も青白くなっており、明らかに首都から応援を呼んで間に合うものではないと分かる。この場に魔法が使えるものがいない以上、生命変換を使用してなんとかするしかない。
イリスを下ろして近付こうとするも、しがみ付いて離れてくれない。やっと安心できると思ったらまた酷い状況なので、怖い気持ちは分かるがなんとか優しく頼んで離れてもらう。
マイアさんにはもし倒れたらどこかのベッドに寝かせてと頼み、左手に意識を集中しながらレオンさんの右肩にある、血でふやけた包帯を退けて左手を当てる。冥府渡りを使用した直後だからか、それとも重症度が高いからか何度も意識が飛びそうになった。
徐々に血は引いたのを見て手を離して確認すると、傷痕から血が止まり顔色も改善される。なんとかなったと思った瞬間、視界が揺れドスンという音と共に真っ暗になった。
「目を覚ましなさい」
「いてぇ!?」
ゴンという重い音がしたと同時に頭部に激痛が走り目を開ける。目の前には知っている顔があったが目が座っており、何を怒ってるのかなんとなくわかったので逃げたい気持ちになった。
「まさか使えるとは思っていませんでしたが、勘の良い私は言いましたね? 使うなと」
「はい……」
「今回のことは礼を言いますが、次やったら殴りますよ?」
「もう殴られましたが」
「何!?」
「いえすまむ」
そう、目の前に居たのは最初に魔法の授業? を受けた、シスターアヤメだったのである。どうやらマイアさんから詳細を聞いたことで気付いたらしい。
「禁忌と呼ばれる術をどこで知って使えるようになったかしりませんが、あなたのためにも使わないよう警告しておきます。マイアには忘れるよう言っておきましたし、父にもこのことは言わないように。昔気質なので禁忌の術で助けられたと知れば、自ら命を絶ちかねないので」
「父……?」
「そうですよ? レオン・フォン・アドラーは私の父です……なんですかその目は」
何となく似てはいるけど、まさかこの世界で数少ない知り合いの父親とは思わず驚き、そう伝えるとたしかにそれは驚きますねと素直に納得してくれた。
話しを変えてこちらの体調の件になり、体力的には異常は無いし禁忌の術を使わなければ問題無い、と言われほっと胸をなでおろす。
アヤメさんにレオンさんがどうしてやられていたのか聞くと、ワーウルフを陽動に使った森で戦った魔族三人も陽動で、本命は黒騎士によるレオンさん殺害だったという。
冒険者が出払ったところで魔族三人は町に侵入し、レオンさんと対峙する。そこへ黒騎士が現れレオンさんと戦闘開始し、その間にイリスは連れ去られたらしい。イリスに気を取られた一瞬の隙を突かれ、右肩に重傷を負わされたようだ。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




