第三十四話 ワーウルフ襲撃戦
北門に着くと兵士の人に門を開けてもらい、敵は真っ直ぐ行った所だと教えてもらいそのまま走る。しばらく走ると大声が聞こえ、見ると戦闘は始まっていた。ワーウルフはコボルトよりも体が大きく、二メートルあるかないかの身長で狼が二足歩行している感じだ。
武器は持たず爪と牙で襲い掛かっているように見える。動きは速いのだろうが混戦になっているため、身動きがとり辛いように見えた。そうなると小回りが利く方が有利だ。
「いくぞ!」
自分に気合いを入れ混戦の中へ入る。なるべく味方と交戦しているワーウルフの近くを、足を高く上げながら音を出し走り相手の注意を引きつつ、この群れの大将を探すことに専念した。
聞いた話では彼らは獰猛だが力が上の相手に降伏する、そう聞いているのでこれが群れなら上の相手が率いているはずだ。群れの大将を叩けばこちらが力が上と示せ、恐らくその他も引くだろう。
敵も味方もなるべく死人が少ない方が良い。何しろこれで得するのは、ここにいないワーウルフを操っている者だけだ。
「おいクソ人間待ちやがれ!」
怒号の方へ向くと爪を振り被ったワーウルフが突っ込んで来たので、それを避けて混戦の中に再度紛れ込む。偶々冒険者を退けたかあぶれただけのワーウルフかもしれない。大将だと確定するまでは戦闘状態になるのは不味い、そう考え走り回る。
しばらく走り回っていると一匹だけ混戦から抜け出し、町へ行こうとしたのでそれを追うと足を止め飛び掛かってくる。
「来ると思ったぜ! てめぇがこの群れの頭だな!?」
「違うがお前はそうなんだな?」
攻撃を避けながら動きを見ているが、コボルトよりも早いしパワーも上だろうけど、黒騎士やリックさんそしてアヤメさんよりも早くはない。
群れの大将かどうか疑問を抱くも、混戦の中で走る俺を見もしなかったワーウルフが、今回はこちらに視線を向けたのを見逃さなかった。
間違いなく大将だと確信し戦闘に入ることにする。足を止め向き合い爪による斬撃をすべて切り払い、隙をついて蹴りを鳩尾に入れてみた。皆鎧も着ずにいるだけあって皮膚は堅いようだ。強めに蹴りを入れたのに何のダメージも負ってないように見える。
「……話がちげぇな」
「どうした?」
「ここにはちょろい奴しかいないから、適当に時間を稼げって言われたんだよ」
「時間稼ぎだからここで戦いを初めて動かないのか」
「そうだよ。本気で町まで攻めたら、お前ら人間族も必死に抵抗してくるだろ? こっちは使われる身だから、なるべく被害なく餌をもらいたいんだ」
「仲間のことは良いのか?」
そう聞くと目を丸くした後で声をあげて笑う。別に面白くは無いが話からして、明らかに彼らは使い捨てだろうなと察した。
ワーウルフたちも分かっているようだし、現金な感じがするので交渉しがいがある。これだけ色々教えてくれるなら不満があるのだろうし、ひょっとしたらせいこうするかもしれない。
「悪ぃな、いかにも人間らしい言い方だからよ。強い奴は生き残り弱い奴は死ぬし家族も持てない。こんなことはそこらに生きてたら当たり前の話だろう?」
「そうだな。じゃあ提案だが、黙って引いてくれたら後で食料をプレゼントするがどうだ?」
「……駄目だな。バレたら殺されるから俺はやらない。他の生きてるのが居たら聞いてみな。まぁお前はここで死ぬんだけどよ!」
「バレたら誰に殺されるんだ?」
「エルフ族と魔族だよ。俺たちは連中に負けて仕方なく従ってるんだからな」
現状を考えれば人間族に釣られて良いことは無いので、この返答は群れのトップとしては当然のものだろう。素直に話してくれたことに感謝しつつ、飛び掛かって来た相手を避け、なるべく早めに戦闘不能にするべく関節を狙う。
こちらの動きを見ていたからか、相手も先ほどのようにスムーズにダメージを与えられない。それでも女性でないというだけで、これまでで一番戦いやすくて気持ちが軽かった。
相手はこちらを殺すつもりで来ているのもあり、全力で叩きつけることが出来る。つい気持ちが高ぶってしまいリズムが雑になって、右腕の肩あたりを爪がかすめてしまう。
呼吸を整えつつ距離を測り隙を逃さないよう集中し直す。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




