第三十話 レオン・フォン・アドラー
「さて、イリス様もいなくなったことですし、さっそくその腕前を見せて頂きたい」
「話をするだけでは?」
「剣士同士の話とは剣を交えることでもありましょう。特に……」
天井にあったフックに持っていたランタンを引っ掛け下げた後で、両腕を上げ振り下ろすと両手には剣が握られてた。
「同じ二刀流とあっては確かめぬ訳にはいきません。御手合せよろしくお願いします」
こちらの答えを待たず綺麗なお辞儀をし終えた次の瞬間、身を屈めたと思ったらあっという間にこちらの前まで飛んでくる。辛うじて得物を引き抜くことは出来、間を開けず放たれた切り上げと袈裟斬りの連続攻撃を、下がりながら斬り払うことに成功した。
「多少はやるようですな。宜しい」
素早い右の突きを繰り出してきたので左足を引いて半身で避けたが、待っていたとばかりに左で薙いでくる。飛び退き下がるが逃すはずもなく、体を一回転させた後で突きを放ちながら飛んで来た。
なるほどこういう戦い方もあるのかと学びつつ、この突きを左で上から叩きつけたらどうなるか知りたくなり、足を後ろに下げながら半身で避けやってみる。
足を踏ん張りながら剣腹を上から押し付け、さらに左からの攻撃を銅の剣の切っ先を向けけん制してみた。
「良い攻めだ」
踏ん張らずに切っ先を下げ体を回転させ、こちらを攻撃せずに通り過ぎていく。少し離れた位置で着地した音が聞こえ、相手の方へ体の向きを変え改めて身構える。初めて自分と同じ型の相手と戦ってみたが、得られる経験値が倍以上違うように感じた。
体を鍛え絞り身軽であることは、手数や戦術を増やすことにもなるのかと今学んだ。チートものでありがちな死んだら生き返る、という特典があるかどうか分からない中で、生き残るために必要な方法や手段は幾ら知っても足りることは無い。
しばらくレオンさんの攻撃を凌ぎ続けていたが、攻められた場合の返しは何があるかと思い、今度はこちらから攻めに行くことにする。先ほど見せてもらった左での突きを真似て突っ込んでみた。相手もこちらがしたような返しをしてきたので、そのまま同じように続けてみる。
例の突きに対して同じように上から叩くところで、こちらもその力を利用し流れに任せて地面を蹴って飛んでみた。
「いたっ!」
トレーニングの成果か転生の効果なのか、レオンさんと同じように回転は出来たが着地に失敗し転げる。素早く立ち上がろうとするも当然詰めて来ており、相手の切っ先が眉間まで来ていた。
「ま、参りました」
「私も年を取った。昔であれば稽古であれど、何かに挑戦しようなどとは思われなかったのですが」
「申し訳ありません。イリスを守るために怯えて引く、ということは考えられない旅路だったもので」
「それだけでしょうかね。どうもあなたからは自分自身の死に関する恐怖が感じられない」
それは痛いところを突かれたかもしれない。実のところこうして異世界を旅しているなんて、未だに実感が無い時があるのだ。もちろん陽の光も匂いも風も感じているし、人々も作り物でなく生きていて自分も痛みを感じている。
だけど気付いたら自動車の座席に座っていて、次の仕事のことを考えるのではないか、朝目が覚める度に思っていた。いつかこの気持ちが晴れることがあるのだろうか。
得物を仕舞い手を差し出してくるレオンさんの手を、得物を仕舞った後で握り立ち上がりながら思う。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




