第三話 謎の冒険者リック
盗賊の襲撃後歩いていると馬車が通りかかり、なぜかリックさんに馭者さんが護衛してくれるならただで乗っていいよ、と声を掛けてくれた。俺の依頼ってことで乗ろうとリックさんが言ってくれ、ご相伴にあずかり荷台に乗って護衛をしつつ町に移動する。
あっという間にアタの町に着き、馭者さんにお礼を言って別れその足でギルドまで向かう。中に入り依頼で来たことを告げ荷物を渡し証明書を貰うやり取りの間、受付嬢はこちらに対応しつつリックさんをチラチラ見ていた。
さっきの馬車の件といい受付嬢の件といい、リックさんが腕の立つ人の好い冒険者、というだけではないのではないかという気がして問うも
「長いこと冒険者をしているから顔が広いだけだよ」
と流されてしまった。こちらにも一応転生前の話など話しずらいことがあるので、それ以上聞いたりはせず証明書を受け取りギルドの外に出る。
アの町にリックさんも戻ると言う話をギルド前で聞いた瞬間、丁度帰りだという馭者さんがリックさんに声を掛けてきて、帰りも馬車に乗りながら帰ることになりあっという間に着いた。
「どうも皆様こんにちは! 只今初依頼を終えて帰ってきましたコーイチでございます!」
「あ、変人コーイチさんお帰りなさい! 随分と早いお帰りでした……ね?」
ギルドへ入りつつ元気に挨拶したところ、皆こちらを見て間を置かず目を見開きあっという間に消えてしまう。エリナは笑顔で出迎えつつバーカウンターを飛び越え、こちらの目の前まで来たものの、なぜか彼女も目を見開き動きを止めてしまった。
「ようエリナ、久し振りだな」
「おじ……じゃない、七聖剣のリックさんがなんで一緒に?」
「偶然通りかかって一緒に散歩したんだ」
「偶然?」
エリナは訝しみながらそう言って剣の柄から手を離し、こちらに手を差し出してくる。一瞬何かと思ったが依頼完了証明書を出せ、ということだろうだと気付き手渡す。
「まーた新人のお節介ですか? リックさん」
「違うよ本当に偶然通りかかったんだ。それよりコーイチは全然なってないようだけど、これで本当に初心者講習終わってるのか?」
「あんまり言いたくないんですけど、国の方針なんですよね……あ、そうだ。コーイチさんちょっと待っててくださいね」
リックさんの問いに対し、視線を下に落としながらエリナはそう言った後、何かに気付きバーカウンターへ戻り袋を取り出してこちらに戻ってくる。
「これは?」
「報酬ですよ、ほ・う・しゅ・う! あなた何しに行って戻って来たんですか?」
「あ、ああそうか。何か今色々ありすぎてすっかり忘れてた」
「じゃあこれいらないんですね?」
「いりますいりますくださいごめんなさい!」
「初依頼達成おめでとうございます。国からの支援金もプラスした二百ゴールドです。大事に使ってくださいね」
袋を開け中を見るとそこには金で出来たコインに、”100”と書かれたものが二つ入っていた。初心者講習終わりに頂いた十ゴールドは、初心者専用宿屋の月額利用料で消えている。
単位としてはブロンズまであり、それは冒険者ギルドでのランクも同じで、俺は一番下のブロンズランク一級だった。所持金ゼロからブロンズでも無くシルバーでも無く、二百ゴールドも貰えるとは夢にも思わず、テンションは爆上がりである。
「ありがとうございます!」
「二百ねぇ……まるで死ぬかもしれないと分かっての値段みたいだな。普通ならあんな依頼は二十ゴールド程度のもんだが」
袋を高く掲げ喜びつつお礼を言うこちらの背後から、何か含みのある言い方をするリックさん。たしかに言われてみれば彼がいなければ、俺は転生して数日後にこの世界で死ぬ羽目になっていた。
どんな職業でも新人の内は安全で簡単な仕事しか任せない、それは会社にとってもその方が安全だからだ。いくら支援金とは言え二百ゴールドもの大金をくれるなんて、よく考えればおかしな話である。
「そういうことは私に言わないで国に……ってまさかそれで来たんですか?」
「さてね……そうだコーイチ、その二百ゴールドの使い道はあるのか?」
聞かれて考えてみるも、まだこの世界の物価に疎いので思いつかない。何しろいきなり森のど真ん中に立っていた俺は、通りすがりの馭者さんに親切にしてもらい、この町に来て冒険者ギルドを案内され今に至っている。
「いえ、今貰ったばかりなのでこれといった使い道は……」
「なら俺から良い提案があるんだが」
「なんでしょう?」
「百ゴールドで俺がコーイチを今よりマシな剣士に鍛える、というのはどうだろうか」
仲間:謎の冒険者リック
↓
七聖剣リック
所持品
武器:銅の剣(初心者講習修了記念)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:木の箱(依頼品((開封厳禁と書かれている)
↓
依頼完了証明書
↓
無し
所持金:ニ百ゴールド




