第二十六話 サノンからの出立
宿の皆さんにも挨拶をして外へ出る。いつもならイリスは手を繋いでくるが、今日は少し後ろを歩いていた。首都に母親がいるなら一日も早く行きたいだろうけど、サノンでも仲良くなった人たちがいて、別れがたい気持ちになっているのがとても分かる。
こういう時はどうすればいいか分からないけど、前に立ち彼女より先に別れの挨拶をする姿を見せようと思った。イリスを確認しつつ朝から開いているお土産屋により、彼女におかみさんやウェンディさんの好きなものを聞いてみる。
ワンピースの裾を握りながら、甘いものが好きと教えてくれたので、奮発して十シルバーするお菓子の詰め合わせを購入しイリスに持たせ店を出た。徐々に近付く防具屋を見て、イリスの歩く速度が遅くなる。
少し歩いては確認して待ちを繰り返し、されども急かさずのんびりとお店に向かった。いつもより長い時間を掛けて防具屋に到着し、入り口でおかみさんとウェンディさんたちがいたので一礼する。
「コーイチさんおはようございます」
「おかみさん、ウェンディさんおはようございます。実は今日はお世話新田お二人に、別れの御挨拶をしに参りました」
こちらがそう告げると二人は言葉を失い立ち尽くす。しばらくして中で話しましょうと促され、優しくイリスの背中を押して中に入った。カウンターの前までくると椅子を持って来るとおかみさんは奥へ行き、ウェンディさんは一旦お店を閉めてくると入口へ移動する。
イリスはお土産を抱きしめたまま俯いていた。初めての自分から始まる別れなのだろうな、と思いここは自分が進めつつ所々彼女にも話してもらおう、そう考えしゃがんで肩を抱くと涙ぐみ始める。
椅子を持って戻って来たおかみさんに座るよう促され、イリスを座らせ自分も座った。ウェンディさんも戻って来たところで改めて別れの話を切り出す。
「ギルドから今朝使者が来まして、俺とイリスに町を出ても良い、という許可が下りたと伝えられました。俺たちは首都ヲスカーを目指して旅をしています。ですからどうしても行かなければなりません」
自分もすべての情報が開示されている訳ではなく、イリスも話せないことがある。なので今話せることで二人を不安にさせないよう言葉を選んで伝えた。
「イリスちゃんは小さいから、早い時期に別れる時が来るって分かっていたけど、いざ来てみるとなかなか……ねぇ?」
「そ、そうだね。長く一緒にいた訳じゃないけど、一週間くらい毎日仕事してご飯食べてってしてたら、なんだか家族みたいで」
ウェンディさんの家族という言葉に反応し、イリスは号泣しお土産を放り投げおかみさんに抱き着く。放り投げられたお土産をキャッチしつつ、イリスが泣き止むのを待つことにする。
「お二人には突然イリスを預かって頂き、さらに彼女に色々教えてくださって感謝しています。これはつまらないものですが……」
泣き止んだイリスはおかみさんに抱かれつつ、疲れ果てたようで寝てしまった。二人からはイリスはとても器用で頑張り屋で、お客さんにもとても評判が良かったと教えられ、なぜか大人三人も涙がこぼれ始める。
「この子のお母さんも寂しい思いをしてらっしゃるでしょうし、早く会わせてあげてくださいね」
「はい。お二人ともお元気で。またお会いしましょう、ありがとうございました!」
別れない訳にも行かず、しばらく話し込んだ後でイリスを受け取り、二人に見送られながらお店を後にした。その足でギルドまで行き、ハルさんにもこれまでの感謝を伝えてから東門へ向かう。
チェックは早く終わりそのまま小屋まで行き、厩務員さんにもお礼と町を出ることを伝える。外で待っていろと言われ待つと、荷車を引き鞍を付けてサジーを連れて来てくれた。
「では、お元気で」
「ああ、また町に遊びに来てくれよな!」
厩務員さんに別れを告げてから荷台に荷物とイリスを寝かせ、鞍にまたがり手綱を引くとサジーは走り始める。リックさんとの稽古場所まで向かうと彼は待っていて手を振った。
「今日出るのは当たり前だが知ってる。なんとなくわかっているだろうが、こちらは魔族とエルフ族関連では手を貸さないので十分注意して行ってくれ。首都で待ってるよ」
「はい。一週間お世話になりました! また首都で!」
こうして色々あった町、サノンを後にする。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




