第二十五話 二刀流に必要なこと
うちで飼うことになった馬の馬房に行くと、馬はこちらに気付いて顔を出し頭を下げる。たてがみの部分を優しくなでながらおはようと声を掛けた。
「んんー!」
大きな声を出さないようにいわれているからか、イリスは口に手を当てたまま足をバタバタさせている。驚いて馬と共に彼女を見た瞬間、急に止めて背筋を伸ばして直立不動になった。
「こ、ここ、こちらの方は?」
「馬だけど」
お見合いみたいな感じに緊張したイリスに聞かれ、馬だと答えると何故か太ももを叩かれ睨まれる。最初と比べて喜怒哀楽がしっかり出てきて良かった思いつつ、なんで叩かれたのか考えてみた。聞き方からして名前かと気付き名前はまだないと答える。
「サジーがいい」
「じゃあサジーにしよう」
「本当に!?」
小さな子供のネーミングにしては渋いなと思ったが、馬も気に入ったのかいなないたのでそうしようと言った。声を出さないようイリスが飛び跳ねているところに、厩務員さんが着てブラシを貸してくれたので、イリスを抱えたてがみへ近付けブラッシングをさせる。
しばらくブラッシングをしるといつ乗れるか聞かれた。リックさんにも伝えた方が良いと言われていたので、この町を離れる時だよといつとは言わずに答える。
「……そっかぁ。わかった」
元気のよかったブラッシングは止まり、小さくそう言うと行こうと言うのでブラシを返し、防具屋へと戻った。おかみさんを見ると下ろしてと言うので下ろすと、こちらを見ずにおかみさんのところへ走っていき抱き着く。
俺は近付かずにおかみさんとウェンディさんに頭を下げ、その場を後にしリックさんとの稽古の馬へと向かい走る。
「おう、今日もよく来たな。時間が惜しいからとっとと始めるぞ」
前回と同じ場所にリックさんは立っており、挨拶する間もなくそう言われ森へ向けて走った。森に入っても先導するリックさんは止まらず走り続け、木を避けて進むも彼は速度が落ちず徐々に放されていく。
「咄嗟に素早く動けないとアヤメにまた一方的にやられるぞ? 寝る時以外は常に頭と体を連動させるのを意識しろ。殺気を感じたら最初の内は迷わず動くよう気をつけるんだ」
真っ直ぐ走ってくれたお陰で見失っても追いつけ、走った先にあった湖の近くで待っていたリックさんにそう言われる。平和ボケした日本から来たので、殺気とか素早く動くという戦闘向けの動きにまだなれていない。
棒を使った剣の稽古ではフォームチェックから素振り、その後に打ち込みを始めるも今回は素早さと的確さをと求められた。
「お前さんも分かっての通り、二刀流は手数が求められる。力を入れるなら一本で良い、よりパワーを求めるなら大剣で良い。左手で牽制しいなし、右手で斬りつけ突き致命傷を狙う。特にコーイチは不殺を貫くのであれば手数と正確さ、戦いにおける素早い思考が大事になる。難易度最高レベルだから稽古をきっちりやるんだ」
「押忍!」
適当で雑な斬りつけは隙を生む。こちらは防御を捨てての二刀流なのだから、隙を作っては意味がない。小さく細かく素早く斬りつけながら隙をつく。ある程度の打ち込みが終わると筋トレを命じられる。
やはり今の筋肉ではパワーが足りないのか、と思っていたがどうやら素早さを維持するために必要なようだ。一週間が終えた後もこれを続けるよう言われ、今後は日課に加えることにした。
この日から一週間は何事も無く平和な日々が続く。もうそろそろかと思ったところで、ギルドから早朝宿に使いの人が来て許可が下りたと言う。
出来ればイリスの為に二、三日別れの時間を作ろうかとも考えたが、長引けばそれだけ去り辛くなるとも思い今日出ようと彼女に告げる。
「うん……」
小さく頷くもこちらを見ない。哀しいしなんでと思っているだろうからその反応は正しい。俺を恨んでも良いなどという言葉を言えば、彼女はそれを出来なくなってしまうので飲み込み、いつも通りに行こうと促した。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
サジー(白毛で小さめの馬)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十三ゴールド三十八シルバー




