第二十話 イリスと町の人たちとの交流
「コーイチさんイリスちゃん、こんにちは!」
ギルドは今日も賑わっており、人が減るのをカウンター横にあるラウンジで待っていたところ、ハルさんが出勤前なのかワンピース姿で挨拶してくれる。イリスはそれが自分と似た服装だからか、わぁと言ったあとでハルさんの周りを走り回った。
嬉しいのは分かるが出勤前なら遅刻させては悪いと思い、イリスを捕まえ膝に座らせる。やはりハルさんは出勤前だったようで、申し訳なさそうにまた後でと言って去っていく。
イリスにはハルさんはお仕事前に声を掛けてくれたんだよ、と説明するも首をかしげている。しばらくして受付に現れたハルさんを見て、イリスは私もあれ? と指さしてこちらを見た。
「ハルさんの制服とは素材が違うけど、まぁ似たようなものだよ。イリスも町に居る時はその格好で、外に出る時は注文してある服を着ることになる。ハルさんみたいに着てるものが変わるんだ」
「へー! いつかな! 出来たらハルちゃんに見せたい!」
「もちろん出来たらイリスが変身した姿、見てもらおうな」
喜び過ぎて暴れる彼女を何とか落ちないように支えつつ、人が減ったタイミングで出来そうな依頼がないか相談してみた。するとアーの町と違い、荷物運びやお使いの仕事をさせてもらえることになる。
どうやらリックさんたちのことは知られてないらしい。大金を稼げなくとも出来れば旅を快適に楽しくし出来るくらい、金銭的に余裕を持ちたかった。
さっそく荷物運びの仕事を受け、東門近くの倉庫へと移動する。そこにいた人たちはガタイと元気がよく、よく来てくれたと大声で歓迎してくれた。
イリスは倉庫のオーナーのおかみさんが見てくれるという。助かるなとは思ったけど、アヤメさんの話ではエルフをあまり良く思っていないのを思い出し、オーナーに耳を貸してもらいこっそり聞いてみたところ
「俺たちはそうでもないよ。昔からお互い得意なことが違うから交易をするし、今は国全体でエルフに悪感情は無いから」
という想像していたのと違う答えが返ってくる。まぁアヤメさんは前線で戦っているから、市井の人たちとはまた違った面が見えているのだろう。
カイなどから馬車で運んで来た荷物を倉庫に入れ、受け取りに来た業者に伝票を見ながら渡す作業を、町の門が閉まるまで行った。イリスはというとおかみさんに面倒を見てもらいつつ、近所の子どもたちと鬼ごっこをして遊んでいた、と楽しそうに話しながら教えてくれる。
ギルドに着き完了書を出して報酬の十シルバーを受け取り、それをもって宿に帰って食事とお風呂を頂き就寝した。次の朝ギルドへ赴くと、昨日の倉庫から今日も頼みたいという連絡があったと聞き、依頼書を持って倉庫に出向く。
「ようおはようさん! あんたみたいに真面目に働いてくれる冒険者は珍しくてね。出来ればしばらく継続して来てくれないか?」
つくなりオーナーはそう言ってくれた。有り難いがいつ町を離れるか分からないと言うも、それでもいいと言ってくれたので受けることにする。
こうして連日倉庫の仕事が始まった。ギルドには次の町へ行く許可が出たら教えて欲しいと伝えている。正直長居をするとイリスも離れるのが辛くなるので、出来れば早いうちにとも言っておいた。
三日目の朝、ギルドに行くとハルさんから、防具屋のウェンディさんから言伝がありますと言われる。そういえば名前も聞いて無かったなと思いつつ、言伝は何かと聞くと防具が出来たと言う連絡だった。
一旦倉庫へ出向いて防具の受け取り後に来ても良いか確認し、問題無いと言ってもらえたのでさっそくイリスを連れ、お店を訪れウェンディさんに声を掛ける。
「おはようございますウェンディさん」
「おはようコーイチさんイリスちゃん。言伝聞いてくれたみたいだね」
イリスはまだ苦手なのか真顔でうなづいた。苦笑いしつつウェンディさんは一旦店の奥へ行き、完成したイリス用の皮の鎧を持って戻り装着し始める。
「わぁ!」
装着し終えたイリスは鏡の前でくるくる回り出した。本当に大人用を小さくしたような感じで、これなら今よりも防御がだいぶ上がっただろうと思える。
「これ、おねえさんが作ったの?」
「そうだよ。私頑張ったんだけどどうかな」
「すごい……凄いねおねえさん!」
ウェンディさんはイリスの目線に合わせ、自信なさげに聞いていたものの、イリスはとても気に入ったらしく感激し飛び跳ねながら歓喜した。
しばらく飛び跳ねていたが急に冷静になり、どうやって作ったのか知りたくなり質問攻めを始める。出来れば満足いくまで質問させてあげたいが、倉庫の荷物運びの仕事があるからというも、なんでと言われがっかりされてしまった。
「もしよかったらうちで預かろうか?」
奥からウェンディさんが年を取ったような人が、エプロンに三角巾を付けて現れる。どうやらウェンディさんのお母さんらしく、もしよければ預かってくれるといってくれた。イリスにどうするか聞くと今日はここにいる! と興奮しながら言われる。
預かってもらうのでお昼代などを含めた気持ちを強引に渡し、急いで倉庫へ出向き仕事に掛かった。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:三十八ゴールド十シルバー




