第二話 初戦闘
「ちょっと待てやお前! その荷物置いてけ!」
「え、展開早くね!?」
町から出て森に入り、馬車が通る舗装された道を走っていると脇道から何かが飛び出してきた。大体飛び出してくるのはモンスターか盗賊しかいない、と冒険者研修でエリナも言っていたが後者が飛び出して来て驚く。
「展開とか知らねーし! 黙って置いてどっかいけバカ!」
「ば、バカとは何だバカとは! 他人にバカなんていっちゃいけません! お父さんやお母さんが泣くぞ!」
「お父さんとかお母さんとか関係ねーしうるせーし! 殺されてーのか!?」
年齢は十代くらいで髪がボサボサ長髪で目付きが悪く頬がこけ、ボロボロの皮の鎧を着た刃こぼれのしているナイフを振り回す男は、こちらへ徐々に近付いてくる。
荷物を置いて研修終わりに頂いた剣を腰から引き抜くも、まだ研修を受けて一日しか経っていない状況なので、見なくても様になってないと分かるし相手も察するだろう。モンスターどころか手慣れてそうな盗賊と初実戦とはツイてないにも程がある。
「げへへ……テメーさてはおっさんのくせに初心者だな? 商売失敗したのか没落貴族か知らねーが、運が無かったと思って諦めて死にな!」
「ち、ちくしょう!」
ナイフが当たる距離になると同時に突き出して来たので、それをなんとか横へ移動して避けるも、相手は余裕で読んでこちらへ直ぐ斬りつけてきた。
「もらった!」
「わぁ!」
振り下ろされたナイフは避けられたが、素早い返しは避けられそうもなく刺さる、と思った瞬間、
―ドン!
「おっと間に合った」
「何ッ!?」
横から声がしたと同時に盗賊の肩へ、緑のポンチョにテンガロンハット、皮のズボンにゴツイブーツを履いた人が体当たりをしてくれ難を逃れる。
「お前名前は?」
「あ、コーイチと申します。危ないところを助けていただき感謝します」
「呑気にご丁寧なこって……おい盗賊、悪いことは言わないから引け。やるなら殺すしかなくなる」
吹き飛んだ先で起き上がろうとする盗賊に対し、目の前の人物はこちらを背にしてそう問う。
「……チッ、覚えてろよ!」
しばらく間があった後で、盗賊は分が悪いと感じたのか捨て台詞を吐き、走って脇道へ消えて行った。
「ふぅ……お前さん知らない顔だな、どこの町の冒険者だ?」
「アーの町です」
危機が去ったようでこちらを向いた命の恩人は、彫りの深い顔に口髭を生やしている感じを見るに、自分と同じくらいの世代に思える。この世界に知り合いは居ないが、同年代だと思うだけでも少しほっとした。
「そりゃ俺のホームだ。初心者にしては随分更けてるな」
「そうですね……気付いたらアーの町の近くに居まして……」
事情を離さないのは失礼だなと感じ、転生諸々は抜いてここまでの話をする。
「そっか、記憶喪失なんてよくある話だが、お前さんみたいに年取ってなるのは大変だな……。あ、そうだ。改め自己紹介させてもらうが、俺の名前はリックだコーイチ。よろしくな!」
「リックさんこちらこそよろしくお願いします。命を助けて頂き感謝します!」
「たまたま通りかかっただけだから気にするな。それよりこれからどこまで行くんだ?」
「隣のアタの町まであの荷物を届けに」
「アタの町までまだ距離があるじゃないか……こうしてせっかくあったのも何かの縁、俺も一緒に行こう」
「それじゃあ依頼達成になりませんし、お金を払う余裕もないのでお気持ちだけで充分です」
「あんな目に遭ったってのに断るとは……気に入ったぜあんた。こっちは勝手について行くことにするよ」
「いや申し訳ないですよ」
「ここだけの話、神様じゃないから全員は救えないが、知ってる人間くらいは助けたいと思うお節介な人間なんだ俺は」
リックさんはなぜだか楽しそうに口笛を吹きつつ歩き出す。何度も断るのも失礼になると考え、荷物を抱えながら後に続くことにした。
謎の冒険者リックが仲間になった!
所持品
武器:銅の剣(初心者講習修了記念)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:木の箱(依頼品((開封厳禁と書かれている)




