第十八話 足止め
抱き着いているイリスの手を取ると離れ、二人そろってギルドの中へ入る。受付嬢のハルさんは笑顔で労をねぎらってくれた。イリスは良い子でお留守番をしていましたかと聞くと、なぜか本人に叩かれる。
とても大人しく一緒にお留守番していましたよ、とハルさんは教えてくれた。感謝を述べつつ論功行賞について聞くも、確定するまでに時間がかかるらしい。お金が欲しくて聞いたわけではなく、明日にでもサノンを離れる予定なのでというと
「上からコーイチさんとイリスさんの移動にストップがかかりました」
そう申し訳なさそうに言われる。なぜなのかと問うも分かりませんという言葉だけが帰って来た。ギルドが俺にイリスの護送を依頼して来た訳だし、こういう事態になった以上ターゲットを首都に近付けない、という措置を取るのは理解出来る。
理解すると同時にあのエルフがイリスを連れ去って、それをリックさんが取り戻したと言うのもまた本当だろうと思った。それにしても人間族の首都にテロをしかけるなんて、相手は思ったより強気に出て来るなと驚く。
これまでは依頼で首都へ行くという感じだったけど、自分の目と耳で真実を確かめるために首都へ行くべきだ、と今は思っている。この世界の人間族の首都にして、イリスの母が幽閉されていると言うヲスカーへ。
とは言え動くなと言われた以上、強引に行くべきではない。エルフに言ったようにもし仮にすべて相手の話が真実だった場合、俺も覚悟を決めて動くからには軽挙妄動は慎むべきだろう。
なぜ最近知り合った子供のためにそこまでするのか、と言われたら答えらしい答えが一つだけある。それは俺が虐められた最初の頃、大人に相談しても相手にされず、死にかけて病院に運ばれてやっと守ってもらえたからだ。
俺は自分に子供が出来たら早めに助けようと思っていたし、会社勤めの頃も同僚や友人には早めに介入するよう力説していた。異世界に来たところで俺が変わることは無い。
この世界で何をしろとか使命は無く、敢えてしたいことと言えば最初に思ったように、顎で使われるより使う立場になるというのがある。
イリスを守るために必要なことは、俺の目標と合致しているからこそためらわずやれるのだ。とてつもなく険しい道なのでイリスを巻き込む場合は、彼女に確認してからになるだろうが止まることは無い。
「滞在中はギルド経営の宿を利用料なしでお使いになれますので、そちらでゆっくりして頂ければ」
「ギルドの命令であれば仕方ないですね。逗留する間に依頼とか受けても良いですか?」
「サノンの町周辺ならば可能です」
「良かったです。さすがに生活費は出ないでしょうから稼がないと」
「かせぐ!」
「フフ、そうですね。私も微力ながらお手伝いさせて頂きますから、是非相談してください」
「なら早速なんですが、この周辺で美味しいご飯屋さんとかありますか? 頑張ってお留守番してくれた彼女に御馳走したいので」
丁度ギルドの近くに美味しいご飯屋さんがあるのでと言い、ハルさんは他の人に受付を頼んで案内してくれる。コボルト襲撃があったからか町は少し静かで歩きやすく、あっというまに中央付近にあるそのお店に到着した。
良かったら一緒にどうですかと誘うも、イリスちゃんを褒めてあげてくださいと言って去っていく。案内させただけになってしまって申し訳ないと思いつつ、主役の手を引いてお店に入りご飯を食べることにする。
材料に関して詳しくは知らないが、ハルさんがおススメしてくれた通り美味しいお店だった。イリスにはダックス卵のオムレツというものを、こちらには旬の野菜とハムのパスタを店主にお勧めされ、出て来たものを頂いたがまた来たくなるほどだ。
お値段もそれなりで家計にも優しい。さすがに毎日宿で出されるご飯を食べたのでは、イリスも飽きてしまう。何しろいつまでここに留め置かれるか予想がつかないのだから。
周辺であれば依頼を受けられるということなので、生活費を稼ぐためにも依頼を受けようと考えている。恐らくそんなに難しく危ないものではないだろうし、イリスを連れて行っても良さそうなもの限定だが、そこはハルさんに相談して決めようと思った。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:四十七ゴールド九十シルバー




