第十五話 不測の事態
荷物検査をクリアしサノンの町へ入った瞬間、カイの町とは違いカジノやキャバクラみたいな飲み屋など、都会的なお店が出て来て驚く。人通りも多く危なかったのでイリスを抱えて歩き、冒険者ギルドへ到着を報告した。
直ぐに宿の手配をしてもらえそこから直接向かおうとするも、イリスが露店を見つけては指をさして興奮する。カイの町での露店めぐりが楽しかったのだろう。
馭者さんたちとの会話で首都まで半分の位置までは来たので、少しくらいは良いかと荷物を抱えながら露店を見て回る。串焼きや焼きお菓子などが売られており、あまりにも美味しそうな匂いに釣られ購入した。味は甘辛い濃いめのタレで表面がパリッとした、鳥皮のようなものは格別でお腹いっぱいになるまで食べてしまう。結局宿へ到着すると食事は断り、お風呂を頂いてそのまま就寝する。
「朝早くすみません! コーイチ様、起きて頂けますか!」
ドアを激しくたたく音に驚き飛び起きた。何事かと思っていると切羽詰まったような声がし、一応用心のため左腰のショートソードの柄に手をかけつつ、扉をゆっくり開ける。
「ギルドの受付のハルです! 町の東部の森にコボルトの群れが現れました! ギルドからの緊急依頼が発動されたので討伐に向かってください!」
緊急依頼とはギルド憲章の重要事項の一つで、冒険者ギルド周辺地域において危機的状況が発生した際、該当ギルドは冒険者たちを強制招集し討伐に向かわせることが出来る、というものだ。
個人的にコボルトというのが全く分からないので、エリナと同じ服装だがお下げでそばかすのあるハルさんに聞くと、獣族の狼族と先祖が同じだがモンスターへ進化した方だと教えてくれる。
知能は五歳児程度で背丈もにているが身体能力は狼族の大人と大差なく、群れで常に行動し畑や倉庫を荒したり、モンスターの住処を壊滅させたりと暴れるという。
普段は人里から離れた火山地帯に住んでいるため、サノン周辺で見ることはないようだ。見ることはあったとしても今回の数は異常で、そのために緊急依頼をサノンのギルド長が発動させたらしい。
「分かりました。出来る限りやってみます。その間、イリスの警護をお願いできますか?」
「こちらでお預かりしますので、コボルトの方を宜しくお願いします! 現地にはギルド旗を背負ったゴールドランクの方々がいるので、到着したら声を掛けて指示を仰いでください!」
「了解! じゃあイリスちょっと出かけてくるからお留守番しててくれ!」
しゃがんでそう伝えるも俯いたまま何も言ってくれなかった。出来れば色々話したかったけど、緊急なのでとハルさんに促され、後ろ髪引かれる思いで部屋を出て現場へ向けて走る。
「急げ! 先発隊が接敵したらしいぞ!」
多くの冒険者が得物を持ちながら走っていると、後ろから馬に乗った鎧を着た人がそう叫んで走り去っていった。
「やべぇ俺たちの分は残ってるかな」
「大丈夫だろ? 論功行賞のためにゴールドランクも出張って来てるし、首都からも来てるって噂だ。横取りするほど兵士たちも強くないさ」
一緒に走る冒険者たちの話を耳にし、ここでポイントを稼げば旅費が増えるのかと思い、気合を入れ直す。見ると皆最低でも皮の鎧くらいは着ており、布の服に得物だけというのはあまり多くない。
今回の緊急依頼は防具を揃えるチャンスでもあると考え飛ばして走る。
「各人見つけ次第、戦闘を開始せよ! 間違っても味方を攻撃するなよ? その場合は大減点対象だからな!」
森にはいる手前からやたら大きな声が飛び込んでくる。声の主は黄金色の鎧に身を包み、青いマントを付けた金髪の女性だった。
「おお不動のマチルダが来てるのか! こりゃ勝ち戦だな!」
「伝説のゴールドランクの一人、魔族ハンターとも言われる女帝か! やる気が出てきたぜ!」
どうやら凄い女性らしい。戦場にいるだけで味方を鼓舞できるなんて、冒険者より国に使えた方が良い気がするが、余計なお世話だなと思いつつ敵を見つけるべく横を通り過ぎる。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:四十八ゴールド(露店などで使った分は護衛代で回復)




