第十四話 サノンへ向けて再出発
「えっほ、えっほ」
緊張が緩和されたからか、背負うイリスはご機嫌でキャッキャし始めた。追撃の可能性も考えたが怪我人に追いつかれるほど、リックさんやアヤメさんとの稽古は伊達ではない。
町に着くか着かないかで兵隊たちと合流し、詳細を離すと戦闘を行った場所へと走っていく。こちらはそのまま町に入り冒険者ギルドへ行って報告する。労をねぎらわれた後で、依頼を中断するかと聞かれたが即答で継続を選んだ。
それこそリックさんかアヤメさんが代わりにする、というのであれば譲るがそうでないなら自分がイリスを守る。二人に推薦されたのもあるけど、大人が付いたり離れたりを繰り返しては彼女が辛いだろうと思った。
「イリスはそれで良いかい?」
「うん!」
お伺いを立てたところ了承いただいたので、このまま二人で首都ヲスカーを目指すのは続行だ。本当なら直ぐに出た方が良い気もするが、陽が傾き出したので明日朝改めて出発することにする。
イリスは緊張したままなのか、今日はテンションが高く賑やかなままだった。襲撃されたことで町は兵士が厳戒態勢で多く出ており、今なら町を出歩いても問題無いだろうと考え、イリスを誘って観光することにする。
人手はアーの町よりも多く露店などもあって、彼女のテンションは爆上がりだった。結局眠くなるまで二人で露店を回って買い食いしたり、イミテーションのネックレスを買ってあげたりと、楽しい時間が過ごせたことだけは魔族に感謝する。
翌朝宿を出て馬車を探すためにギルドへ向かった。魔族に襲われたという話は皆知っているだろうし、見つからない可能性の方が高そうだなと思いつつギルドへ入る。
「こ、こんにちは」
「あらコーイチさんいらっしゃい、馬車の相乗りを探しに?」
「そ、そうなんですけど、ありそうですか?」
「お好きな条件を選んでください」
「え?」
キョトンとしたこちらに対しカイの町の冒険者ギルド受付嬢は、相乗りの申し出が指名で複数きていると教えてくれた。なぜなのか問うと魔族に襲撃されたことより、魔族を撃退したことを高く評価されたらしい。
今は義賊コンスタチオに憧れ失望した盗賊たちが多いが、魔族の襲撃自体の数は多く無いものの元々あったものであり、襲われたことよりも撃退したというのが大事だという。
イリスを狙っての襲撃というのは受付嬢も知っているだろうけど、それを彼女やこちらが馭者さんたちには言えない。一応事情が事情なので危険ですよねと言うも、彼女は危険なことには変わらないし襲撃も減ることはない、と暗に大丈夫だと教えてくれる。
「そんなことより大事なのは、魔法を使った相手に勝ったという点が大きいんです。それもたった一人で」
「運が良かっただけですよ。相手は油断してましたし」
「油断してる魔法を使う魔族相手に、誰でも勝てるなら苦労しないんですよ」
それを聞いてリックさん効果は凄いなと思うし、俺何かやっちゃいましたにならないよう、これから先気をつけようと思った。謙虚も過ぎれば傲慢になる。
指名してくれた馭者さんたちの条件を見るも、皆次の町までという点は同じで、それ以外は金額の違いそしてアイテムの有無だった。
1.二ゴールド
2.三ゴールド
3.一ゴールド+水晶の荒粒
受付嬢が選別してくれ、これ以下の条件は断ってくれたという。感謝を伝えつつ三番目の水晶の荒粒とは何かと聞いたところ、水晶のペンダントを作る際に出たあまりらしい。
数が集まるとクロウ教で買い取ってくれると聞き、何か用途がある気がして三番目の馭者さんと共に行くことにする。相手も準備が完了しているらしく、直ぐに出発となってカイの町を出た。
今日の馭者さん曰く、次の町までは少し距離があるから一ゴールド以上が適正なようだ。魔族との戦闘場所を通過ししばらくすると一回目の襲撃があったが、こちらも一度経験しているのでなれたもので、棒や石を投げて道を作り通過した。
幸い魔族やエルフ族は出なかったがそれでも四回も襲撃があり、ついに荷台の道開け用の石や棒が底をつく。ここから先は降りての撃退になるため、時間も喰うし襲われる可能性も高くなる。
どうしたものかと考えている最中に、五回目の襲撃者が前方に現れた。ふと貰った水晶の荒粒の袋が目に入り、中に手を入れ大き目のを取り出して、左先の茂みへ放り投げてみる。
前方に居たのは盗賊で、こちらが投げた光るものに集団で群がり取りに行って道が開いた。なんとか降りずに五回目の襲撃をクリアし、その後は襲撃に遭わず暗くなったタイミングで草原に出て、サノンの町に辿り着くことに成功する。
冒険者ランク:ブロンズ初級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
仲間:イリス(護衛対象のエルフ族の子ども)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック(非常食、水、依頼書、身分証、支援金)
水晶の荒粒
所持金:四十八ゴールド(露店などで使った分は護衛代で回復)




