第百十六話 フルパワー魂斬り
槍の方がリーチが長く距離を取られると不利になるため、多少危険を冒しても剣の間合いに居続ける。直撃こそしないものの剣腹で何度も受けたり頬をかすめたりと、ギリギリの戦いを強いられていた。
「アリエル、もっとコーイチをフォローしても良いのだぞ?」
「私は今何もしていないよラヴァル。何かする為の準備はしているがね」
「ほほう、これはコーイチ自身の能力だというのか?」
「転生者としては基礎能力は低い方なんじゃないか? ひょっとすると別の才能があるのかもしれないな」
ラヴァルがこちらの後ろにいるアリエルとの会話を終える間際、一瞬槍から力が抜けたのを見逃ない。左手で槍を握り、クリスタルソードの剣腹を相手の左わき腹に叩きつける。
さすがのラヴァルもこの攻撃にはダメージを受けたらしく、顔を歪ませさがろうとするがこちらは掴んだ槍を離さない。数少ないチャンスの頭を掴んだんだ絶対に離すものか。歯を食いしばりながら暴れる槍を抑え込み、クリスタルソードの剣腹を必死に叩きつけた。
「おのれコーイチ! 離せ!」
「離すものか!」
引こうと振ろうと離さないこちらに対し、ラヴァルは前蹴りを放ってくる。剣腹を叩き込むため引いたタイミングを狙われ、防御するにも間に合わずそのまま腹へ受けた。
「どうだ……なに!?」
恐らく普通であれば悶絶ものであろうが、あいにく自分にはそこまでの効果はない。何故ならこの世界でも鍛えていたけど、いじめを受けていた時に最も受けたのが腹への攻撃であり、道場でも一番鍛えられたのが腹だったのだ。
よく考えれば哀しい自慢だが、それでも今鍛えた腹が役に立っているし助かったのは事実である。前蹴りを放ったせいで態勢が不安定になり、こちらの剣腹による攻撃を受けて槍から手を放し、そのまま左へ転がって行った。
ここで決める! 両手でクリスタルソードを握って掲げ、ありったけの気を振り絞って注ぎ込み
「喰らえ! フルパワー魂斬り!」
叫びながらラヴァル目掛けて振り下ろす。光の刃はいつもの状態よりも大きく早く、目標へ向かって飛んでいく。
「うぉおお!」
立ち上がったものの逃げるには間に合わないと悟ったのか、逃げずになんと光の刃を掴もうとしてきた。憑りついているラヴァルへの直接攻撃なのに、あれを掴むことができるのだろうか。
「ぐああああ!」
理屈は分からないが光の刃を掴めたものの、そのまま引き摺られ後退し、離れた先で爆発音がした後で光の柱が立つ。爆風がこちらまで飛んで来たので、視界を守る為背を向ける。
いったい何が起こったのか分からず呆然としつつ、風が収まってからラヴァルが進んだ方へ向き直り、見ていると何かが歩いてきた。
「う、嘘だろ?」
「嘘なものか……想像以上だコーイチ。逃げることも出来ないところに魂斬りをフルパワーで打ち込まれた。さすがの私も死を覚悟したが、全身全霊で掻き消すことを試み成功したのだ」
これまで爆発することが無かったが、魔神なのでそういう状態になるのかもしれない、そう思い込んだがまさか掻き消されるとは思わず愕然とする。
さらに驚いたのはこちらの目の前まで来たラヴァルは、明らかにエルフではなく爬虫類のような皮膚をしていた。
「掻き消すことに成功はしたが、その代わりこの体ももう限界が近いらしい。私が消えればこの体も朽ちるのだから、ここは最後まで私に協力してもらうことにした。いやそれにしてもお前は凄いぞコーイチよ。私は今、生きていることを実感しているし、何より欲しかった生きたいという衝動に駆られている!」
そう言い終えると顔まで爬虫類のようになり、両手を広げて空を仰ぎながらラヴァルは笑い出す。
「な!? 最長老様は何処へ!? 人間族の者! そいつはなんだ!?」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
神の使いの剣
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




