第百十五話 恐ろしき魔神
クリスタルソードに気を流し、タイミングを見計らい魂斬りを撃てるようにしつつ、冥府渡りをリズムを変えながら発動させ斬りかかる。
先ほどまでと違ってギリギリで避けず、魂斬りを警戒してか余裕をもって回避し始めた。
やはり何かに憑りついている相手には、魂斬りが有効だなのだ。魂斬りは憑りついている対象ではなく、中の今回で言えばラヴァルにのみダメージを与えられる。
ラヴァル戦の為に与えられた技だと改めて思い、エリザベスに感謝しつつ気合を入れリズムを変えて放っていく。不規則なリズムで飛んでくる光の刃に対し、ラヴァルは徐々に大きく距離を取り始めた。
冥府渡りを使って素早く距離を詰め斬りかかる。もう少しでその体に届くと思った瞬間、これまでにない速度で動きこちらの剣腹を殴りつけられ、踏ん張り切れず吹き飛ばされてしまった。
「思った以上にやるな、コーイチ。不規則な攻撃、不規則な光の刃、どれをとっても黒騎士などとは比べ物にならない。宜しい、ならば私も少し本気を出して得物を呼び出すとしよう。魔神の三又槍よ来い」
そう言いながら緑のマントを脱ぎ棄て、ラヴァルは右手を空高く掲げる。現れた豪華な服の上からでも分かるほどの、華奢なエルフとは真反対の筋骨隆々の体に驚く。
暇に任せて鍛えてきたのかそれとも元の体の主がそうだったのか、どちらか分からないが鍛えたのであれば相当な努力を感じた。
努力というワードが不釣り合いに思えるエルフと魔神であるが、魔神の中の人は転生者であり研究者のような立場らしいので、合理的理由があれば体を鍛えるのも厭わないのだろう。
「この鍛えた肉体に驚いているようだが、私はクロウとの再戦の為、この体の元の主は長生きと権力維持のために鍛えていた。お前のように必要だから自然と身に付いたものではないが、なかなか良いだろう?」
空間を割き現れた三又の槍を手に取り、こちらに穂先を向け構えつつ魔神は言う。恐らくジョークのつもりなのだろうが笑えない。
部分部分を長い年月をかけ鍛えた動きこそが、先ほどのあの動きであり魔法でも何でもない、純粋な積み上げてきた差であると言われたのだ。
こちらは冥府渡りを使ってやっと少し上回れている。連続使用できるのもマナの木との接続が成ったからであり、彼の言った通り全面的なバックアップが無ければ終わっていた。
「化け物め……!」
「おいおいコーイチ、悪役みたいな台詞を言うなよ。私はただの弱いおじさんなのだから」
「あまりジョークのセンスが良くないようだな」
「そうか? 魔界ではこれでもウィットに富んだジョークを連発する紳士、として有名なのだが。まぁそんなものは今はどうでもいい。さっそく得物を持つ者同士、これで五分なのだから存分に剣戟を交わそうぞ」
得物のリーチは槍の方が長いだろうにと思ったが、これ以上相手のペースに飲まれると不味いと考え、会話は止めて先に仕掛けて槍の腕前を見ることにする。
突き出している穂先を先ず切り払い、横へ動いたのを確認して間合いを詰めたが、直ぐに弾かれた槍を戻し薙いできた。素早く飛び上がり左へ着地しそのまま切りかかるも、こちらより早く槍を戻して両手で横へ持ち防がれてしまう。
筋肉だけでなく得物の扱いまで訓練しているとは恐れ入る。何から何までボスに相応しい強さだが、今さらそんなことで驚いてもいられない。
勝たなければいつラヴァルが飽きて滅ぼしにかかるか分からない。黒騎士でさえ壁を壊せなかったのに、他の者でそれが可能とは思えなかった。
魂斬りを使える自分がやるしかない、そう考え全身全霊を掛けて挑む。
「ううむ……私の計算とは少し違うな。技の補助などがあってこそ動きは黒騎士程度だと思っていたが、まさか魂斬り以外もこうも出来るとは……楽しませてくれる!」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
神の使いの剣
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




