第百六話 エルフの森を行く
「魔神と戦いに行くんだ。マナの木と子供を助けにな」
妖精の態度からしてラヴァルのことを知っている気がするが、演技かもしれないのでここは正直に話してみよう、そう考え話すと妖精は唖然とした顔で俺の掌の上で停止した。
「マ、マナの木は人間族に関係無いのになんで行くんだ?」
「関係無いことは無いだろう? マナの木から取れるものを人間族は買ってる訳だし。それに俺は子どもを助けに行くのが一番の理由だから、それは変じゃないだろう?」
「マナの木と子供を助ける為だけに戦うのか!? 相手は魔神だぞ!? 人間如きが勝てるわけないだろう!?」
停止してから少し間があって妖精は俺に問い、その応えに驚愕したのか叫び終わると髪の毛をかきむしる。
「お前馬鹿だなさては」
「他人から見ればそうかもしれないな」
「~! 馬鹿にされたら怒るのが人間なんじゃないのか!? 癇に障る人間だなお前!」
「はいはい、じゃあもう追ってくるなよ? これ以上こっちも時間を取られたくないし、お前もイライラするだろうからさ」
「どこへなりと言っちまえ! バーカ!」
目を瞑り舌を出しながら、両手人差し指を口の両端に引っ掛け引っ張り、威嚇した後で掌から飛び立ち森の奥へと消えていった。取り合えずこれで邪魔しないでくれるといいな、と思いつつ皆のところへ戻りサジーに跨り移動を再開する。
賑やかなお客のお陰で大分遅れてしまったらしく、その分をサジーと軍馬に無理をしてもらう他無いらしい。というのもキャンプ地として見ている場所以外は、草木が生い茂り火が風で燃え移った場合、ハクロまで被害が出るかもしれないからだ。
さすがに火災でマナの木にダメージを与えるのは不味い。弱っているだけでなく魔神まで居る今、致命傷になりかねないし、そうなるとイリスも危なくなってしまう。
徐々に森も夕方から夜になり、小さな光の球が周囲に浮遊し始めた。エイレア曰くこれは魔術粒子の濃度が濃いと出るらしく特に問題無いらしい。
灯りを付けなくとも前に勧めるのは有難いが、軍馬が疲れを見せ始め速度が遅くなる。自分ならこんな距離を走っただけでも音を上げそうなので、感謝の気持ちしかない。
ヴァルドバからもそろそろ限界かもしれないと言われ、いざとなれば周囲の草木を刈って道を作ろうと覚悟を決めた。
「見えたわ! あそこが目的地よ!」
エイレアの言葉にヴァルドバと見合ってほっと息を吐く。森が切り開かれ星空が見える場所に付くと、軍馬はゆっくりと足を止めしゃがみ込んだ。ヴァルドバと二人で軍馬を優しく撫でブラッシングし、近くに水と飼葉を置いて荷車を外す。
サジーにも同じようにした後で、こちらも急いでテントを立てて食事の用意をする。またいつ妖精に出くわすかも分からない為、交代で就寝を取ることにした。
「じゃあみんな先に寝てくれ。俺が先に番をするよ」
食事が終わると皆眠そうだったので、其々の場所で休むよう告げ焚火の前に座り星を眺める。ここから先は人間族のいない俺にとって未開の地だ。魔神と戦う前に負傷する訳には行かないので、明日はさらに気を引き締めて行こう。
「おいなんだ? また悪戯に来たのか?」
森の方から何かが飛んで来たので手に取る。木の実を投げてきたらしく掴んだ掌が赤くなった。
「真っ赤っかだな手が!」
「何も面白くはないぞ?」
暗闇の中を光る球が浮遊しこちらに近付いてくる。夜空の月に照らされて現れたのは、先ほど蜘蛛の巣に掴まっていた妖精だった。
「面白い悪戯をしに来た訳じゃないからな! 俺は良い妖精だからお前が馬鹿だというから渡しに来たんだ」
「何を?」
「前に魔神を倒した人間族の馬鹿が、同じような馬鹿が現れた時にこれを渡してくれってさ」
そういうと妖精は両手の空にかざす。しばらくすると夜空が割れ何かが落ちてきた。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




