第百五話 妖精の悪戯
しばらくするとガラガラと音を立てて周囲の景色が崩れ、足元で氷が割れるような音がする。ゆっくり前に進んでみると景色もそれに合わせて動いた。
どうやら周りを囲まれルームランナー状態にさせられていたらしい。悪質な悪戯だが誰がやったのだろうかと思った時
―な、なぜそれを人間が!?
上の方から声がしてみるとそこには鳥くらいの大きさで、四枚の蝶の羽が生えた人間が二人降りてくる。切っ先をそちらに向けた瞬間、相手も両掌をこちらに向けた。斬るつもりはないが邪魔されるのも面倒なので、死なない程度に吹き飛ばそうと考え気を剣に注ぐ。
「ま、待って! あなた何者なの!? 人間がなんでそんな技を」
「他人に聞くよりそっちが名乗るのが先だろう? それにこの悪戯はお前たちの仕業か?」
「そ、そうだ人間族の癖に生意気な奴! お前に名乗るななど無い!」
「魂斬り!」
「きゃあっ!?」
アライアスで慣れているが彼より手ごわそうなので、下手に出るより力を示した方が早そうだとなり、魂斬りを当たらないよう放ってみる。
「くっ野蛮な人間族め! 覚えていろ……きゃあっ!?」
どうやら交流する気もないようなので、魂斬りを当たらないよう放ち追い払う。
エイレアにあれが妖精かと聞くとエルフとは元は同じ精霊だが、より現実世界に生きる姿に進化したエルフに対し、妖精は現実と幻想の狭間にいる生き物だと教えてくれた。
「連中はとにかく上から目線で嘘しか言わないから、他人と交流なんてしない生き物だし舐められたら死ぬまで舐めてくる。だからコーイチの追い払い方は正しいわ」
「妖精面倒臭いし危ないから見つけ次第食べてた」
「ヴァルドバ、あんなもん食うのか。腹壊しそう」
「美味しくない。幻想種だから魂みたいなものだしすぐ消える」
食いたくないなぁと思いつつ、クリスタルソードを鞘に納め気を取り直して森を進む。この森はエイレアにとって庭らしく、迷うことなく道を進んでいる。
キャンプできそうな場所も特定済みらしく、夕方までには到着するという。このまま邪魔が無ければ二日でいけそうとエイレアは声を弾ませた。
着いたら即魔神戦なのでこちらはあまりテンションは上がらない。勝ち目が見えない戦いだが、イリスを無事に家に帰すためにも負けられない。
とにかく諦めず勝つまで立ち向かうしかないだろう、そう考え少し気持ちが沈んだ瞬間、周囲が真っ暗になる。今までにないことなので気を失ったかと思い、試しに頬をつねってみるも痛いので意識はあることを確認し、ならば魔法によるものかと考えた時に先ほどの妖精が思い浮かんだ。
こちらが察したのと同時に追憶のペンダントが光り、クリスタルソードが鞘から抜け目の前に柄が来たので取り、高く掲げると前のように景色が崩れ元に戻った。
ーくっ……やっかいな人間族め! きゃっ!
サジーを止めて声のする方に魂斬りを放つと、小さな悲鳴が聞こえる。先に行っていた皆が驚き戻って来たが、ここで待っていて欲しいと言い声のした方へ向かう。
「な、なんだ人間!」
雑草を分けて進んだ先で見つけた妖精は、勇ましい言葉を吐いているが蜘蛛の巣に掛かり、身動きが取れずにいた。蜘蛛の餌を取っては悪いかと思ったものの、とうの蜘蛛は妖精に近付こうともしない。
蜘蛛にまで嫌がられているのかと不憫に思い、助けてやるから暴れるなと告げ、なんとか蜘蛛の巣を破壊しないようゆっくり静かに引き剥がしていく。
「ほら、もう蜘蛛にも俺たちにも迷惑をかけるなよ?」
「ふ、ふん! 人間のくせに生意気な!」
「俺たちは急いでエルフの里に行かなきゃならないんだ。あまり執拗に邪魔をするなら容赦しない」
「……エルフの里に何しに行くんだ?」
エルフの里に行くという言葉を聞いて、妖精は怯えたような顔をする。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




