第一話 転生おじさん、冒険者ギルドに立つ
「ここが冒険者ギルドか……たのもう! 我が名はコーイチ! 前世は個人でルート配送業を営んでいたが、なぜか今はこの世界に転生したらしく冒険者を始めた者なり! 率直に言う! 仕事をくれ!」
冒険者ギルドと書かれた看板の建物に入り叫ぶと、前方に居た人たちは蜘蛛の子を散らすように消えた。残ったのはバーカウンターの奥に居る、赤いベレー帽に赤いシャツとジャケットを羽織った、童顔の少女だけだ。
真顔だった彼女はニコリと微笑んだ次の瞬間、バーカウンターを飛び越えて目の前まで来た後で腰に佩いた剣のグリップを握った。
「……それ以上訳の分からないことを叫ぶと切り殺しますよ?」
「ひっひぃ! この世界は物騒すぎないか!?」
「あなたは研修の時からそうやって意味不明なことを言い続けて……やめるよう言ったはずですよ?」
「え、いやまぁこういうのは一応説明が必要かなと思いまして……」
「説明? 何の?」
「私という名の人間の」
「変人コーイチの名は、ここ数日でアーの町では有名になりましたから必要ありません」
「ここはやはり世界に響くくらい有名に……っておわっ!?」
殺気を感じ素早く身を仰け反らせた数秒後、鼻の先を剣が通り過ぎて行く。以前の自分なら切られていただろうけど、異世界転生したからか身体能力が上がっているのだ。
「甘い!」
「んごぉ!?」
剣が通り過ぎ避けたと思ったら次は掌が現れ掴まれる。
「ったくしょうもない……無駄に元気なようなので冒険者研修で行った、隣町のアタへ荷物を届けて来てください」
「ふ、ふぁひ……」
転生して能力は高くなったものの、今のところ俺は最強で無敵ではないらしい。剣を振った受付嬢であるエリナは怪我でリタイアした元冒険者で、他の人の話では小さい頃から有名な腕利きの冒険者だったようだ。
止むを得ずリタイアするしかなかった彼女にすら勝てないのでは、立身出世は望めない。せっかく転生したのだから顎で使われるより使う立場になろうと決め、稼げると思って冒険者になったのだから、先ずは彼女より強くなろう。
意気込むこちらを他所に彼女は顔を掴んだまま引きずりだし、依頼書にサインしろというので見えない状態でサインする。
サインをし終えるとまた引きずられ、解放されたと思ったら首根っこを掴まれ放り投げられ外へ出た。
「はい、お仕事よろしくねー」
「いたたっ……うわっ!?」
受け身を取って立ち上がろうとしたところへ、中から抱えられるくらいの大きさの木箱が飛んでくる。
「それをあっちの町のギルドに出してくださいね? あ、そうだ。あっちでも今みたいのやったら……どうなるか分かってますよね?」
「は、はい……」
目を座らせて凄むエリナに対し、現時点では勝ち目がないので大人しく引き下がることにし、荷物を持って立ち上がると一目散に逃げだした。
まさか冒険者としての第一歩がこんな感じになるとは思わなかった。前と同じように一番下からスタートだけど、転生したからには一番を目指して頑張ろうと気合を入れて走る。
所持品
武器:銅の剣(初心者講習修了記念)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:木の箱(依頼品((開封厳禁と書かれている)




