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異世界ジパング戦記 ~いつか世界へ~  作者: 華研えねこ


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薬を作ろう(後)

昔語りを始めましょう……。

本日の昔語りは、上司である高崎家当主、通称は「赤入道」様と太郎佐、後の大隅豊熙との出会いで御座います。

診療所を作り、そこで薬を配るための準備を行うことを南川に告げた太郎佐でしたが、その後いつもの講義を行おうとした南川の背後から現れた「赤入道様」がどのような嵐を巻き起こすのか、それは本編以降のお楽しみ。

それでは本日もとくとご覧あれー……。

「さて、爺。薬の作り方は後で専門家に学ぶとして、他に何をすればいい?」

「そうですな、若がどういった境地を目指すかにもよりますが、将来的に赤入道あかにゅうどう様の小姓に登用されれば出世街道の第一歩と申せます。そして、若であれば恐らく登用が叶うと思われますが、そのためにもそろそろ軍学も座学だけではなく実践を踏まえる必要が御座いますな」

 赤入道というのは、太郎佐の父が仕える太守である。暗殺された大臣、毛野けの義円よしまるも輩出した毛野家の分家であり、毛野家が大臣として権勢を誇る前の時代から脈々と受け継がれてきた家筋でもあった。そして、当代である「赤入道様」は軍配確かな人物であり、彼が生きている限りは領国も安泰とも言えた。

「あ、ああ、わかった」

「……及び腰ではいけませぬぞ、若」

「ま、まあ俺が直接首級(くび)をとる訳じゃ無いもんね」

 この若、どういうわけか武術の類いはからきしであった。ひ弱というわけではなかったのだが、どうやら技を覚えるセンスというか、まあそういう才覚が無かったらしく武術訓練の際にも力任せに相手をなぎ倒す、といった戦法を多用した結果隙を突かれて負ける、ということも多々あった模様である。

「若、大隅家嫡男足る者武芸の才覚も必要では御座いますぞ? 第一、小姓になるにはそういった腕も求められます故な」

 小姓というのは、戦場では馬廻うままわりや城代となるとおり太守の親衛隊という側面も存在した。無論、人には向き不向きがあるのだが、彼はどうやら武芸の才覚には不向きな頭脳だった模様である。それは、恵まれた体躯から考えれば割と勿体ないと言えた。

「……一応、素振りや草飛びは欠かしてないんだけどな」

「若の身のこなしは妙でございますからな……」

「なんだったら、どうせ小姓になるというなら儂が手ずからに講義してやろうか」

「あ、赤入道様!?い、いつからここに!」

 いつの間にか、その話題の「赤入道様」が部屋に入ってきた。無論、太守が部下の家に入るのに許可は要らないのだが、それにしたって誰も気づかないのは異常であった。なぜならば……。

「お前が噂の太郎佐か。こんな小さい子供が薬を作ろうとするとはのう」

 と、いうや太郎佐をひょいと持ち上げる「赤入道様」。太郎佐も数えて12年の割に比較的恵まれた体躯を持っていたといえどまだ若年、せいぜい平均よりある程度上程度のものでしかない。確りした体格のできあがった壮年手前の「赤入道様」にとってはその程度の子供を持ち上げるのは造作も無かった。

「儂の名は高崎たかさき満豊みつとよ、おぬしの父の上司じゃ。と言っても構えんでええぞ。元服前の子供に礼儀など求めておらんし、儂も首都の作法など堅苦しいものは不要じゃと思うておる」

「赤入道様!」

 「赤入道様」改め高崎満豊がいると聞いて慌てて太郎佐の部屋に転がり込んできたのは太郎佐が父、宗熙。かなりの汗をかいていたことから、かなりの距離を走ってきたと思われる。

「おお、宗熙。邪魔して居るぞ」

「いらっしゃるならいらっしゃるで、一声掛けて下されば歓待致しますのに!」

「おう、その顔が見たかった。おぬしはいつも謀将気取りじゃからな、一本取ってみたくなった」

 宗熙の慌てふためいた顔を見てからからと笑う満豊。彼はその顔が見たくて仕方ないのか、態々大隅家の家人相手に黙るように命令して忍び込んだのだ。

「…………」

 妙な顔をしている太郎佐。眼前の上司たる人物に対して緊張しているのか、あるいは単に呆れているのか。それとも、また別の原因があるのか、抱きかかえられたにもかかわらず終始無言の儘であった。

それでは次回、「加冠式・前話」。ご笑覧戴ければ、幸甚の限り。

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