ルーレットは回る。婚約破棄をしないと破滅? そして恋。公爵令嬢は人生を賭ける。
「赤黒賭けで参りましょう。」
金のボールがルーレッド盤の中に落ちてクルクルと回る。
男が笑う。
「さぁ、お嬢様。どちらに賭けますか。」
「赤に賭けるわ。」
「それじゃ俺は黒ですね。」
憎い…そして愛しい人…
わたくしは人生の全てをこの勝負に賭けるわ。
アレクシーナ・テネシルク公爵令嬢はまだ、18歳。縦ロールの美しき銀の髪の令嬢だ。
王都にあるテネシルク公爵家の自室で読書をしていると、メイドが来客を告げて来た。
「レリーヌ・ハルディスク公爵令嬢様がお見えです。」
客間へ行ってみれば、レリーヌが目に涙を浮かべながら、縋って来て。
「お兄様がまた、カジノに行ってしまわれたのです。」
「まぁ、またカジノに?」
テリー・ハルディスク公爵子息は、レリーヌの一つ年上の兄であり、歳は18歳。
アレクシーナの婚約者だ。
最近、悪い友達に誘われてカジノに出入りしていると聞いた。
レリーヌの話によると、テリーはあちこちに借金をこしらえてまで、カジノにのめり込んでいるらしいのだ。
アレクシーナは立ち上がって、
「どこのカジノです?わたくし、この目で確かめますわ。場合によっては。」
レリーヌは涙を流しながら、
「婚約破棄だけは…お願いです。アレクシーナ様。我が家は落ち目の公爵家。近々、お詫びの品を持って両親と兄を連れてご挨拶に伺います。ただ、アレクシーナ様にお知らせしたのは、わたくしではどうする事も出来なくて。両親は領地へ戻っておりますし…どうしようも無くて、手紙を昨日書きました。この事をまだ知らないのですわ。」
「よく、知らせてくれたわ。さぁ、案内して頂戴。勿論。調べてあるのでしょう。」
アレクシーナはイライラする。
一年前に家同士が決めた婚約者。
自分の父はテネシルク宰相。王宮での実力者である。
その父はハルディスク公爵と長年の友であり、若い時に恩を受けていると聞いている。
その縁で息子テリーと婚約を結んだのだが。
テリーは飛んでもない息子だった。
王立学園でも勉強に励まず、色々な女性達と遊んでばかり、アレクシーナに対してはそっけない態度で、無視ばかりしていた。
テリーの妹のレリーヌ。
アレクシーナより一つ下のレリーヌはとても良い子で、アレクシーナを慕ってくれていた。
アレクシーナもレリーヌが可愛くて、良く相談に乗ってあげたりしていたのだ。
ハルディスク公爵家の両親は、事業が思わしくなく、領地へ帰ったきりである。
両親の目が届かない分、テリーは王都で好き勝手しているのだ。
お父様が決めた婚約者。ああ、あの男と結婚しなければならないだなんて、それに比べて、
我が国の王太子殿下はなんて立派なのかしら。
今、婚約者を探している最中のオイール王太子。
王家特有の髪色は華やかな金の髪、金の瞳で、それはもう、美しき王太子殿下だった。
彼は文武両道、学園女子生徒の憧れだったのだ。
時折、クラスメートとして話をする事もあるが、あまりにも博学な為、アレクシーナはこんな素敵な方が自分の婚約者だったらと、心に思ってみたりした。
叶わぬ夢である。
テリーは茶髪の冴えない容姿の男だったが、口は上手く口説くのが上手だったので、女生徒達にモテた。だが、色々な女生徒と付き合っているので、中には遊ばれ捨てられて恨んでいる女生徒もいるらしい。大事にならないのは、テリーはアレクシーナの婚約者。騒ぎ立てたら、テネシルク公爵家に婚約者のある男性と付き合った淫らな女性として逆に訴え兼ねられない。
テリーなんて本当にクズな男。
何でそんな男の為に、わたくしは苦労しなくてはいけないの。
でも、放ってはおけない。
レリーヌが泣いているのだ。
連れ戻しにいかなくては。
女性二人では不安なので、騎士団の騎士二人に警護を頼んで、王都の中心街にあると言うカジノへ出かけた。
中心街の割と目立った所にカジノはあるのだが、その周りの店もバーとか、娼館とか、あまり治安が良くなくて、アレクシーナは眉を潜める。
「凄い所ですのね。」
レリーヌも怯えたように、
「わたくし達は場違いですわ。使用人が調べたところによると…」
紙に書かれた地図を見ながら、レリーヌは指さして、
「カジノはあそこです。」
大きな黒い建物に、灯りが灯っていて、外から見れば、どこかのお屋敷のような店構えである。
扉を開ければ、黒いベストに黒いズボンを着こなした洗練された中年の男性が出て来て、
「ここは会員制になっております。」
アレクシーナは、男に向かって、
「ここに来ているテリー・ハルディスク公爵子息に用があります。通しなさい。」
レリーヌも男に向かって、
「兄を連れ戻しに来たのですわ。お願いですから、通して下さい。」
男は困ったように、
「通すわけにはいきません。お客様には楽しく遊んで貰わないと。」
「お通ししてもよいじゃありませんか。」
黒髪の黒のベストとズボンを着たスタイルのいい男性が声をかけて来た。
若そうだ。30歳は行っていないだろう。
青年は笑って、
「お嬢様達も遊んでいきませんか。カジノは面白い所ですよ。」
アレクシーナは毅然と男性に向かって、
「わたくしはテリーを連れ戻しに来たのです。賭け事ですって?そのような物に使うお金なんてないわ。」
そう言うと、強引に中に入りアレクシーナはレリーヌと一緒にテリーを探す。
後ろから騎士達二人もついてきてくれている。
すると、テリーは数人の男達と一緒に、ルーレットに夢中になっていた。
ディーラーがボールをルーレット盤に投げ入れる。ボールがルーレット盤の中でクルクルと回っていて、ディーラーがチップを置く合図の言葉を告げると、
「黒の14だっ。それから、20」
テリーは賭けるチップをテーブルの数字の上に友達達と共に置いている。ディーラーが鐘を鳴らせば、ルーレット盤の中で回っていた、ボールが数字の上に転がり落ちて。
「くそっーー。また、外れた。」
賭けたチップは全てディーラーに回収されていった。
アレクシーナはテリーに声をかける。
「テリー。貴方、何をやっているのかしら。」
レリーヌも泣きながら、
「お兄様。こんな所にいないで帰りましょう。」
テリーは二人に向かって、
「ええい。煩い。私の遊びの邪魔をするな。」
ディーラーがテリーに向かって、
「テリー様。お友達達の分も含めて金30たまっております。いい加減にお支払い頂かないと。」
テリーはふんぞり返って、
「ふん。私はハルディスク公爵家の者だ。そんな金、いつでも払えるわ。」
この国の騎士の一月の給料が金3である。
レリーヌが真っ青になって、
「お兄様っ、そんなお金。お父様に知られたら。」
「煩い。おい、もう少し遊ばせろ。」
アレクシーナは、テリーの腕を引っ張って、
「帰りましょう。ハルディスク公爵家の恥になりますわ。」
「私はお前のそう言う高飛車な言い方が嫌いなんだ。」
「わたくしは当たり前の事を言っているまでですわ。」
先程、応対した若い青年が、
「他のお客様のご迷惑になりますので、ね。店で喧嘩は困りますよ。」
アレクシーナは青年を睨みつけて、
「貴方は?」
「俺はこのカジノのオーナー。レイド・シューリストと申します。」
「それならば、命じます。テリー・ハルディスクを店に出入り禁止にしなさい。わたくしは、アレクシーナ・テネシルク。テネシルク公爵家の者。テネシルク宰相はわたくしの父です。父を敵に回したくはないでしょう?」
「ほほう。あの、テネシルク宰相の。確かに、敵に回したら怖そうですね。でも、こちらも商売。勝負いたしませんか?赤黒賭けで。貴方が買ったら、テリー様を出入り禁止に致しましょう。何だったら、借金も帳消しにしても良いですよ。でも、もし、俺が勝ったら、貴方は何をくださるんです?」
「貴方は何を望むのかしら。」
「アレクシーナ様を…と言いたい所ですが、一夜のデートで如何です?なぁに、ちょっと食事をするだけですよ。その他は望みません。」
「そんなもので良いのかしら。それでよろしくてよ。」
ディーラーの席に行き、レイドはボールを指先で、ルーレット盤に投げ入れ回す。
「赤黒賭けで参りましょう。貴方は何色に賭けますか?」
「わたくしは赤で。」
「それじゃ俺は黒ですね。」
カラカラと音を立てて、ボールは赤の文字盤の上に転がり落ちた。
「わたくしの勝ちだわ。」
「それじゃ、約束ですから。テリー様。借金は帳消し、店は出入り禁止に。」
テリーは喚いた。
「冗談じゃない。私は遊び足りないぞ。」
友達と言う連中達はテリーに向かって、
「テリー様、借金が帳消しになったのですから。」
「他の店で遊びましょう。」
レリーナが泣きながら、
「お兄様帰りましょう。」
「ええい、煩い。」
妹を突き飛ばす。アレクシーナはレリーナを抱き起して、
「大丈夫?レリーナ。」
「アレクシーナ様…」
テリー達は店を出ていった。
アレクシーナは怒りを感じた。
なんて男なの…ああ…わたくしの婚約者があの男だなんて…
怒りを覚えながら立ち上がる。
共にいた、レリーヌが部屋からいつの間にか消えていた。
周りにいた客達も、アレクシーナとあの男、レイドの二人きりになっている。
「何?何が起きたの?他の皆は?レリーヌは?」
「少し、遊んでいきませんか?アレクシーナ様。」
レイドが近寄って来て、アレクシーナの耳元で囁く。
「カジノのオーナーの俺が言う事ではありませんが、あのような男と結婚したら、貴方の人生は破滅ですよ。」
「破滅…わたくしの父は宰相よ。お父様が助けて下さるわ。」
「膨らみ過ぎた借金を支払う程、貴方の父上はお人よしではないでしょう。」
アレクシーナは真っ青になる。
父はアレクシーナを可愛がってくれる。愛してくれる。
いざとなったら、助けてはくれるだろう。
テリーを切り捨てる形で、離縁と言う形で。
離縁された自分に再婚先が見つかるだろうか…
王宮の社交界で華やかに過ごしたい。
アレクシーナは高位貴族の女性である。公爵家の娘である。
そのような想いを小さなうちから持っていた。
レイドが両手を広げると、宙にルーレット盤が出現する。
「さぁ、回しましょうか。予言のルーレットを。」
キラキラと光り輝いて回るルーレッド盤の中でボールが回る。
そして、カランと音を立てて、数字の上にボールが転がり落ちた。
「黒の4、破滅の数字だ。」
「破滅…わたくしが破滅すると言うの?」
「貴方では無くて、貴方の夫がですよ。勿論、貴方はテリー様と結婚なさったのだから、破滅に巻き込まれるか、助けられたとしても、ろくでもない人生を送るでしょうね。」
「嫌だわ。わたくし…どうすればよいの?」
「あの男と結婚しないように、ね…貴方自身が努力しなくては…もし、あの男との結婚を避ける事が出来たら、婚約を破棄する事が出来たら、貴方の人生は…」
アレクシーナの手にレイドは金のボールを手渡して、
「さぁ、あなた自身の手で、ルーレッド盤へ投げ入れるといい。」
両手でその金のボールを掴むと、宙に浮かぶルーレッド盤に向かって放り投げた。
キラキラと光ってルーレッド盤の中で回るボール。
それはカランと音を立てて赤の7の上に落ちた。
「栄光の番号だ。」
レイドの言葉と共に、アレクシーナの目の前に映像が浮かんだ。
金の髪のオイール王太子殿下に手を取られて、共に歩む自分の姿。
頭には王妃の印のティアラを被っていて、にこやかに微笑んでいる。
「テリーと婚約破棄をしたら、わたくしは王妃になれると言うのね。」
「何事も貴方次第という事ですよ。」
「解ったわ。有難う。レイド。」
テネシルク公爵家に戻ると、父であるテネシルク公爵に直訴した。
「お父様。テリー様のギャンブル狂いには愛想がつきましたわ。
わたくしと結婚した後もそれは収まらないでしょう。女性関係も色々とあるようですし、
そのような方と結婚しなくてはならないのかしら。」
テネシルク公爵は腕を組んで、
「お前は大事な私の娘だ。ハルディスク公爵には恩があって、この婚約を結んだのだ。多少の事は目を瞑ろうと思っていた。お前が愛想が尽きたと言うのなら、婚約破棄をするとしよう。問題はあちらの息子にあるのだから当然だ。」
「有難うございます。お父様。」
母は亡くなっていて、兄がいるのだが、兄のフィリップも、
「私もお前の幸せを願っているよ。婚約破棄をした後に、そうだな…殿下にお前を勧めてみよう。」
王太子殿下の側近を勤める位、優秀な兄。
ああ…思い切って言ってよかったわ。
わたくしには栄光が約束されている。
そう、思っていたのだけれども…
まさか、テリーがあのような行動に出るだなんて思いもしなかったですわ。
二日後、学園から帰るため、門の前でアレクシーナが公爵家の馬車に乗ろうとしたら、テリーに腕を掴まれて。
「婚約破棄なんて認めない。お前は私の婚約者だ。結婚するんだ。」
「テリーっ。離してっ。」
そのまま、馬車に押し込められる。
御者に向かってテリーは叫んだ。
「馬車を走らせろ。近くの宿まで。」
首筋にナイフを押し当てられる。
このまま、言う事を聞かないと、殺される。
「この男の言う通りにしなさい。」
アレクシーナは瞼を瞑った。
馬車は道を進んでいく。
宿に着いたら入る前に逃げ出そう。
助けを呼ぼう。
アレクシーナはそう思ったのだが、
馬車が止まったので、テリーと共に降りる。
人っ子一人いない、草原で。
「いつの間に?町から出た?そんな馬鹿な。」
「カジノのオーナーの俺が言う事じゃありませんが、まったく酷い男ですね。」
テリーは現れた男に向かって叫ぶ。
「オーナー。何だ?御者はどうした。お前が連れてきたのか。」
「ええ。さてと…アレクシーナ様。頑張りましたね。」
ルーレッド盤が空中に出現する。
「死神のルーレット。テリー様、回してあげましょうか。死神のルーレット。」
「死神だって?」
「貴方のようなクズにはふさわしいルーレットでしょう。」
黒いボールをレイドは投げ入れる。
クルクルとルーレッド盤をボールが回る。そして…カランと音を立てて、数字の上に落ちて。
「黒の4、貴方がモテ遊んだ女性達の恨みを受けて頂きましょうか。」
オオオオオオオンンと音がして、地面からどす黒い塊が湧き出て、テリーの身体を包み込む。
恐ろしい形相の女性達の怨霊だ。
「うああああああああっーーーーーー。ひいいいいいいーっ。」
テリーは悲鳴を上げながら、その場を走り去っていった。
アレクシーナはレイドに向かって、
「テリーはどうなるのかしら…」
「まともな精神状態でいられるとでも?」
「そうね…恐ろしい顔をしていたわ。あの怨霊たち…ところで、貴方は何なの?」
「カジノのオーナーです。それ以上の何者でもありません。」
「助けてくれて有難う。レイド。」
「どういたしまして。」
何故、自分を助けてくれたのか、この男の表情から伺い知る事が出来ない。
だが、もっとこの男を知りたいとアレクシーナは思った。
この事件から一月経った。
テリーは精神に異常をきたして、領地で病気療養に入ったとの事だった。
妹のレリーヌは、
「返って安堵しておりますの。お兄様にはハラハラさせられていましたから、大人しくなって良かったですわ。」
酷い言い草だが、テリーに苦労してきたレリーヌに取って、やっと安心して過ごせる事になったのだから当然といったら当然の言葉だろう。
アレクシーナは、一月ぶりにレイドの居るカジノへ出かけた。
「オーナーいるかしら。」
受付の男性に言えば、レイドが出て来て、
「おや、アレクシーナ様、何用で?」
「賭けをしたいわ。二人きりで。」
「ええ。いいですよ。それではこちらの部屋で。」
部屋に案内される。
アレクシーナはレイドに向かって、
「貴方のお陰で、テリーとの婚約破棄が成立しましたわ。色々とテリーが不義を働いていた上に、精神異常をきたしたのだから、慰謝料まで貰えましたのよ。そして、王家からオイール王太子殿下の婚約者にならないかと、打診がありましたわ。」
「それはおめでとうございます。貴方様が素晴らしい御令嬢だからの縁ですね。」
「勝負がしたいわ。」
「勝負ですか?」
「我が公爵家は王家に対して返事をしていないの。わたくしはどう生きればいいのか、この勝負にて決めたいと思っていますのよ。」
「ほほう。それはどのように…」
「わたくしが負けたら、貴方の物になりましょう。」
「俺は貴方を望んではいませんよ。」
「会った当初の勝負でお食事でもと言ったのはどういう事かしら。」
「あれは、ただの社交辞令で…」
「貴方が勝ったらわたくしは、貴方の物になります。そして、貴方と共に困っている人を助けたい。そのルーレット盤の力を使って。貴方の手助けがしたいのよ。」
「俺は人助けをするつもりは…」
アレクシーナはレイドの顔を正面から見つめて、
「わたくしのように、酷い男性に苦しめられている人達を放っておいていいの?貴方の力で助けなさい。わたくしはそのお手伝いをいたします。わたくしが勝った場合は…」
アレクシーナは宣言する。
「王太子殿下の伴侶となり、王妃として、困っている女性を助ける機関を作るわ。貴方はわたくしを欲しいの?欲しくはないの?」
ああ…最後まで表情が読めない人…
貴方はどうわたくしの事を思っているのかしら…
憎い…そして愛しい人…
レイドは答えた。
「解りました。それでは勝負いたしましょう。」
金のルーレッド盤が宙に現れる。
「赤黒賭けで参りましょう。」
金のボールがルーレッド盤の中に落ちてクルクルと回る。
レイドが笑う。
「さぁ、お嬢様。どちらに賭けますか。」
「赤に賭けるわ。」
「それじゃ俺は黒ですね。」
ボールはカランと音を立ててルーレッド盤の数字に落ちた。
ああ、わたくしの生き方は決まったわ…
後悔はない。レイドのルーレッド盤が出した色。
後悔はないわ…
「母上…その勝負どうなったの?」
「母上っ。その勝負の先、わたしも聞きたいっ。」
アレクシーナは可愛い双子の子供達に向かって微笑んだ。
「聞くまでもないでしょう。その勝負があったから貴方達が生まれたのよ。わたくしの生き方も決まった。今、とても幸せだわ。」
子供達は父親そっくりの金の髪で、とても可愛くて愛しくて…
「あ、父上が戻って来た。」
「お迎えに行くっーー。」
双子達が部屋の扉に向かって勢いよく走って行った。
アレクシーナも愛しい夫を出迎えに、部屋の扉へ向かうのであった。
- 俺はカジノのオーナーですよ。アレクシーナ様。それを忘れて貰っちゃ困る。
お金を賭ける連中がいるから、成り立っている職業なんでね。
貴方は王妃におなりなさい。それが貴方にふさわしい生き方だ。そして、困っている女性を助ければいい。さようなら。アレクシーナ様。お幸せに。-