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好きなように呼べばいい  作者: マキシマムザナンコツ
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捨てられた


「すごい…大きいね」


視界いっぱいに広がる大きくて美しいジンベイザメ。沖縄にある水族館へは同棲中の彼氏との旅行でやってきていた。


人間に見られていてもそんなことお構いなしで自らの美しさを見せつけているような、そんな存在に目を奪われていると彼が肩を叩いた。


「真紀」


名前を呼んだ彼の方を見ると彼は優しい目でこちらをみており、その手には小さな指輪の収まった箱を持っていた。


「真紀、僕と結婚してほしい」





あれから2年の月日が経ち、螺旋巻真紀は再びジンベイザメを見に来ていた。


お前たち人間の出来事など些細な出来事にすぎない、とでも言われているかのように変わらず美しかった。


肩を叩いてプロポーズした彼の姿は無い。


プロポーズされたもののお互いに忙しく、やっと結婚の準備をし始めた矢先に真紀が見たのは彼の携帯にポップアップされた「私も好きだよ」のメッセージ。


「そういう迷惑メール」「この子の勘違い」「風俗店の営業」言い訳はいくつだって思いつくはずなのに問い詰めたところ、あっさりと浮気を認めて結婚の話は無かったことになった。


「彼女、俺がいないとダメでさ…。だから、別れよう」


そのあとの事はよくは覚えていないが、散々叫んで怒鳴って暴れた。


いつも通りを期待した翌朝は、彼と彼の必要最低限であろう荷物がなくなっていた。




いわゆる傷心旅行で彼との思い出の場所を辿ることで、未練や思いを断ち切ろうとした。


(2人で初めて行ったカフェ、京都に…)


真紀は帰りの飛行機に乗る為に那覇空港の椅子に座って、傷心旅行で行った彼との思い出の場所を指折り数えていた。


必死に、好きだった彼の好きな女になろうとダイエットも頑張ってスリムを維持し、色んな色にしてみたかった髪も黒くてサラサラのストレートにして…。


そう考えている内に最後に回る予定だった思い出の沖縄は終えてしまっていることに気が付いた。


畳みかけていた指の動きは止まり、代わりに涙があふれてきた。


悲しい、悔しい、寂しい、溢れだした混ざった感情は止めることができず、真紀は自分の手を握って椅子に座ったまま蹲ってしまった。



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