おまけ
私、アケミは友達三人と共に近所で有名な廃屋敷、『お化け屋敷』にやって来た。それも夜に。
私が持つ懐中電灯で辺りを照らしながら屋敷の中を歩く。こんな真夏なのに屋敷の中は少し肌寒い。クーラーも無いはずだし……実に不思議だ。
「本当にここで肝試しするの?」
「もっちろん! なんか雰囲気が良いよね! ぞくっとする!」
「えー? そうー?」
「私は早く帰りたいです……」
「べ、別に怖くなんかないんだから。」
いつものように皆でペチャクチャ喋りながら暗い屋敷内を散策する。
「もーいーかい」
「「「「っ!」」」」
その時私達の真後ろから声が聞こえた。それも少年の声で。
「もーいーかい?」
「……。」
「もしかして……ゆ、ゆ、」
「そんな怖いこと言わないでよ!」
トシコもルミもタエミも私もサッと顔を青ざめさせる。ここには私達四人しかいないはずなのに。それも四人とも女であるはずなのに……。ということはこの声の主は絶対ゆ、ゆ、ゆ……
「ねぇねぇ、無視しないでよ。無視されると……殺してしまいそう!」
無邪気な声で物騒なことを言う少年の声。殺されたくはないので私達は意を決して後ろを振り返り、声の主を懐中電灯の明かりで照らす。
そこにいたのはニコニコ笑顔を浮かべた少年だった。
「やぁーっと向いてくれた! もう少し遅かったらこれで殺してたかもねー?」
そう言って少年は手に持っていた斧を見せてきた。少年の細っこい腕で持つには重そうなそれにはベットリ黒いものが付いていた。
「僕はコウスケ。ねぇねぇ、僕とかくれんぼしよう?」
コウスケと名乗る少年は、にぃ、と口角を上げる。
その目に涙を浮かべて。