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「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞  応募作品

無限増殖おにぎりオメガ

作者: マガミアキ

 一生食うに困らない。

 そう聞いて通常頭に思い浮かべるのは資産や収入のことだろうか。

 俺にとっては、おにぎりだ。

 バイト帰りの夜道、無限増殖おにぎりオメガという新商品のモニターに参加しないかと、ある女にもちかけられた。遮光器土偶のようなヘルメットを被ったいかにも怪しい女だった。

 文字通り無限に増殖するという画期的なおにぎりで、()()()()()()()()()()のだという。

 つまりこのおにぎりは六時間後に二個に増える。朝食に一個食べれば昼食時には残り一個が二個になっているということだ。昼食にまた一個食べれば夕食時には――、繰り返していけば、おにぎりだけは、それこそ一生食うに困らない。本当にそんなシロモノがこの世に存在するのか?

 疑いの眼差しでおにぎりを見つめる俺を残し、遮光器土偶の女は姿を消していた。結果的に俺の手の中におにぎりが残った。

 翌朝、おにぎりは二個になっていた。信じられない思いで俺は一個を頬張った。具は梅干しだ。昼飯に増えたもう一個を食う。具は鮭だ。これはもの凄いモノを手に入れたのではないだろうか。

 夜はバイト先の仲間との飲み会でおにぎりを食べることはできなかった。二個のおにぎりは、翌朝倍の四個になっていた。まあいい、一食で二、三個食べれば別に多すぎることもない。俺はそうしておにぎりを増やしたり減らしたりしながら過ごしていた。

 誤算だったのは年末年始に実家に帰省した時、住んでたアパートにおにぎりを一個、置き忘れたことだった。アパートを留守にしたのは三日、しめて七十二時間。十二回増殖したおにぎりは、二千四十八個に増えていた。最早、ひとりで食える量ではない。ワンルームの部屋はおにぎりで埋め尽くされていた。

 仲間を呼んで食ってもらうか。しかし多少減らしても六時間後には……。まごついている間に、おにぎりは四千九十六個に増えた。

 俺はアパートから逃げ出した。おにぎりが部屋から溢れ出るのも時間の問題だ。

 あと五日もすればおにぎりは四十二億九千万個。

 機動隊でも自衛隊でもいい、助けを呼ぶべきだ。こんな話信じてもらえるのか? だが早く何とかしなければ。地球の表面積は、五億一千万平方キロ。手のひらサイズのおにぎりが100平方センチだとして、単純計算で十日後に……!?

なろうラジオ大賞2 応募作品です。

・1,000文字以下

・テーマ:おにぎり

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― 新着の感想 ―
[良い点] 増殖したおにぎりが単なるコピーではなく、別の味になっているのが面白いですね。 最初の頃は鮭や梅干しのようなポピュラーな具でしたが、四千九十六個になった辺りでは、おにぎりスタンドでも扱ってい…
[良い点] 倍々ゲームの恐ろしさですね... それをおにぎりで表現するところが個性的で面白かったです!
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