第一話 誕生
「は?」
見たことない変な部屋で寝ていた。昔、ドイツに行ったときに見たなんとか城の中みたいだ。
ご丁寧に、巨大なシャンデリアが釣り下がっていた。
寝ぼけているのかと思い、目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしながら、また開いたが
さっきと同じ光景が見えた。
なんでこんなところで寝ているんだ。
それ以前に、俺はさっき死んだはずだ。なのにこうしてまた生きている。
しかも、さっきから起き上がろうとしているのに、起き上がれない。
それどころか、寝返りも打てないし、手足も少ししか動かない。かろうじて目だけを動かして周りを見渡すと鏡に赤ん坊が映っていた。
手を動かすと、鏡の中の赤ん坊もまったく同じように手を動かす。
おいおい、まじかよ。
アハハハハハッ。
笑わずにはいらなかった。
どういうわけか、俺は、また赤ん坊として生き返ることが出来たようだ。
俺が死に際に願ったことが、かなったみたいだ。
生まれてこの方一度も神を信じたことはなかったが、一瞬だけ神に礼を言いそうになった。
「ガチャ。」
誰かが部屋に入ってきた音がした。
――っ!
いきなり大きな手につかまり、持ち上げられた。
金髪の顔立ちの整っている若い男だった。
これが俺の父親だろうか。なんだか、ひょろひょろで頼りない。
ニコニコ笑いながら
「ssmkmbs:zgmbns:ngb:あfdbs」
といった。
物覚えはいいほうだったので、いろんな言語を知っていたが、
どれにも属さない不思議な発音の言葉だ。
母親は見当たらない。
産んだばかりで、違う部屋で休んでるのだろうか。
持ち上げられて初めてきずいたが、外はとても暗くなっていた。
それなのにもかかわらず、なぜか照明らしいものはどこにも見当たらなかった。
分からないことが多すぎる。
だが、まあいい。
分からないことは、たくさんあるがそんなものはあとでゆっくり考えればいい。
時間ある。
俺は、男の顔をみながら、ひそかに誓った。
前世よりもましな人生を送ってやると。