ある日、森の中、熊さんは出会った
俺たちは、もくもくと黄色い道を進んだ。
もくもくと、、、
『なぁトトさんや』
「トトって誰よ!」
『なぁベルさんや』
「何っ!」
睨まれた。
短気さんだなぁ。
もくもくで思い付いたが、スライムは喋れるのだろうか?
ベルに聴いてみたが、知らないとそっけなく切り捨てられた。
ふむ、魔法でなんとかなる物だろうか?
イメージ、イメージ、、、と言っても、声帯や口蓋のリアルなイメージなんてわからんぞ。
イメージさえできれば、流動体ボディなんだから、なんとかなりそうな気がするんだが。
人間を真似るよりは、スピーカーでも目指すほうが楽か?
いやアレだって結構複雑だぞ。
電磁石とかどーやって真似りゃ、、、あっ。
別に動力なんかどうでもいいのか?
単に体の表面を振動させてやれば、、、よし、試してみよう。
「あーあーあーテステステス」
成功だ!
ついでにベルが驚いている。
「何、今の!」
「頑張ったら喋れた」
「えーーーーっ!? でも何で私の声!?!?」
すんません、それしかリアルなイメージができなかったっす。
ベルの声って、改めて意識して聞くと、鈴を転がすような可愛い声ってやつだよな。
と言ったら、あの部屋に有った着ぐるみで街に出たときのイメージで作った声との事。
なるへそ。
確かにこの熊には向いてる気がするな。
人に会ったらコレでいってみるか。
そんなこんなで、半日ほど歩いたところで、辺りは山道になってきた。
と、先のほうから獣のような声と、女の子の悲鳴が聞こえる。
ついに黄色い道のイベント来たか!
さて、登場するのはライオンか、案山子か、ブリキっ娘かと思いながら急いで駆けつけると、何の引っかけもなく、女の子が狼っぽいのに追い詰められていた。
赤いフードを被っているのが目を引く可愛い娘だ。
あのクソ姫もそうだったが、異世界人の見た目は普通に人間だなぁ、日本人っぽくはない。北欧系の中学生くらいの女の子に見える。
『ベル、この着ぐるみは狼より強いか!?』
「え? ああうん、あのくらい全然ダメージ来ないけど?」
それなら、やってみたい事がある。
俺は赤ずきんちゃんの前に割り込むと、すかさず狼の口に左手を突っ込んだ。
噛み裂こうとした狼の口が、しかし腕を食い破れず、閉じることができない。
「よっしゃ!食らえ、クマダロスアタァック!!」
白熊ポッケから、格納されていた[泉の水]を一気に放出する。
と、寸刻ももたずに狼は水しぶきとともに弾けとんだ。
やり!大成功!!
「な、なに、今の、、、」
助けた赤ずきんちゃんとベルが、展開の早さについていけず、ポカンとしている。
「大丈夫か? 怪我は?」
「ふぁ、ふぁい、大丈夫れふ、、、じゃなくて、大丈夫です。ありがとうご、、、、」
ペコりとお辞儀をする赤ずきんちゃん。
うむ、パニクっててもお礼は言える。良い子や。
が、顔を上げた時点で動きが止まった。
「えっと、、、わたしを食べますか?」
※1 ペロー版は食べられて終わり(汗)