2度目のスライムは復讐の為に這いつくばる
「遅いのですわね、あのスライム」
まったく、なんでワタクシがこんな所で待たされなければいけないのか。
レッドも気紛れに何処かへいってしまった。
イライラと待ちながらも思い出す。
そもそもはお姉さまから、ドラゴンの秘宝を持ってくるよう頼まれたのだ。
なぜそんな物が必要なのかは知らないが、お姉さまの為ならばしかたがない。
幸いこのドラゴンの巣には、もう何年もの間、巣に戻るドラゴンは確認されていない。
他のモンスターの類いも、あんなヤバイやつの巣へは近づかない。
ワタクシの実力があれば、特に問題は感じられなかった。
この部屋が何をしても開かない以外は、、、
内側からならば開けられるのではないかと、巣の外で従魔にしたスライムに入らせたが、あんな下等な者では荷が勝ちすぎただろうか。
他に何か方法があるだろうか。
外で待たせている兵士どもも、この扉の前では無力であろうし。
さて。
と、次善の策を考えていると、音もなく扉が開き始めた。
が、扉以外には何も動く気配がない。
あの下等生物はどうしたのか?
何かのトラップにでも引っ掛かり、それで扉が開いたのか?
だとすれば、迂闊に踏み込むのは危険かもしれない。
しばらく様子をうかがうが、特に何も起こらず、物音ひとつしない。
魔法の明かりを灯し、中をうかがうと、、、
「ひっ」
壁に多数の獣人が吊るされている!?
いや、よく見ると脱け殻のようだ。
道化の着る等身大のヌイグルミのようでもある。
ピンク色の一着が下に落ち、まるで這いつくばっているかのようだ。
そちらから目を離し、テーブルらしき物の上に卵の殻の残骸を見つけた瞬間、ワタクシの世界が止まった。
『ぐぅ、めっちゃ疲れた』
「ちょっとあんた、今なにしたのよ!?」
『全力をもって凍らせた』
「へ?」
ベルが言うには、氷の魔法には見えなかったらしい。
身体中の分子運動を止めるイメージをしてみたら、本当に止まったので俺も驚いた。
まぁ確かに、氷の魔法ではないよなこれ。
結果的には凍っているはずだが。
いやしかし、魔力とやらが全部持ってかれたような脱力感だ。
動くのがとてもしんどい。
この手は無茶すぎたようだ。分子運動停止を軽々しく使うのはよそう。
脱力中に襲われたら即死もんだぜ、これ。
取り敢えず、凶悪な敵は滅んだ。
めでたしめでたし。
-fine-
じゃないだろ。
今始まったとこじゃん。
頑張れや>俺
ふぅ。