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〜前哨戦〜

すみません5話分くらいの分量をこの話に詰め込んだのでかなり遅くなりました。

これは前哨戦です。

  それは起きるべきして起きる。


「来たか....」


  死神大王はつぶやき席を立つ。

 テラスへ出ると空がいつもの黒い雲は晴れて大量の青い魂が空へと還る。

 黒の街の外壁よりも遠くに見える何かが蠢く。


 カーンカーン

 大きな鐘が鳴り響く音で目がさめる。


「なんだ?」


  カルシャはただ事ではないと、武器を握りしめリアを起こして、広場へと向かう。

 広場にいくとすでにあらかたの死神達は終結していた。


  城の中なから死神大王とカラト、レリューアなどの階級値の高い死神達が連なって出てくる。

 死神大王の前に整列し全員が緊迫した顔をしている。


「何か始まるのかな?」


  あいかわらず緊迫した状況を何も考えていないようなリアに少し安心感を覚える。

 重たい空気の中、死神大王はついに口を開いた。


「今ここにありし魂達よ、この時のために貯めてきた魂を解放する時が来た、命なき者たちよ奴らとの戦い存分に楽しむがよい」


  死神大王がいい終わると同時にゲートが多数出現し、一人また一人とゲートに入っていく。

 カルシャとリアもゲートへと向かう。



 ゲートを抜けるとそこは白い砂が舞う何もない大地であった。

 何もない平坦な地形、地平線が向こうまで続いているが真っ平らな風景は自然と一体化しているようにカルシャは見えた。


「大層なこといってたけど、なにもないな」


 カルシャがそう呟く。

 大量に死神を配置した割には何も起きない。


「な〜んか、いっぱい人がいてお祭りみたいだね〜」


 リアはあははとカルシャに向かって笑顔を振りまく。

 その笑顔を見て少し心が和んだ時。

 それは起きた。


 地平線の向こう、かなり遠い場所。

 そこの空間に亀裂のような波紋が生まれて何かが這い出してくる。

 それも無数に存在していた。

 遠目でも大きさがわかる物体が4つ、それ以外に豆粒のような大きさの蠢くなにかがこっちへと向かってくる。

 砂煙の上がりようからあちらの軍勢の多さがわかる。

 それを見た瞬間にこちらの空気も一瞬で変わる。

 皆武器を構え臨戦態勢を整える。

 あちらの軍勢はあるところまで来ると一度進軍をやめて第一陣とばかりに小型の化物供を進軍させて来た。

 小型の化物とはいえこちらの最前列は見習い達だ、果敢立ち向かう者もいれば一目散に逃げる者もいる。

 立ち向かったとしても闇雲に武器を振り回しているだけで小型に翻弄される者がほとんどだ。

 やはり、死神見習い達を先頭にしていたのが悪いのか一気に最前線から崩されていく。

 戦闘経験の少ない見習いを壁にして後ろのブロンズクラス達は相手の動きを見て学習する。

 リアがその様子を見て静かに震えているのがわかったカルシャは、そっとリアの手を握りしめて「大丈夫、私から離れないで」と出来るだけリアの不安を和らげる為に柔らかい口調でいう。

 効果があるかわからないがする。

 10分経ったかどうかのところで見習い布陣を突破された。


(なんで、戦闘経験の薄い見習い先頭に立たせた?)


 カルシャが疑問に思ったのはそこだ、ゲートを通った時から見習いブロンズシルバーの順に布陣を構えていた。

 見習いを前にすれば簡単に突破されるのはわかっていたはずだ、それなのに何故?。

 カルシャはリアが自分の後ろについて来てくれて良かったとこの時に思った。

 もしリアが最前列にいたならもうこの世から消えていたかもしれない。

 それを思うとゾッとする。

 戦い傷付き消えた見習い達の魂が一斉に天へと登って行く。

 生き残った見習い達はブロンズの布陣へ逃げ込んで行く。

 ブロンズ達は見習い達を布陣の奥へ逃げ込むように指示をしているように見えた。

 見習い達がカルシャ達の横を通りすぎて後ろに行くのがわかったからだ。

 ブロンズ達の布陣へと小型の化物供が攻め込んで来るが、階級が上がっただけあり簡単に突破はされない。

 ブロンズ帯になると武器をある程度扱え、魔法取得している者もいる。

 小型程度であれば充分すぎる戦力だ。

 敵の第一陣はブロンズ達の布陣でせき止めて辛くも勝利をもぎ取る。

 ブロンズ帯の布陣が最後の一匹を狩り取るとブロンズ帯から雄叫びのような歓声が上がる。

 カルシャはひとまず胸を撫で下ろす、(どうかここまで敵が来ませんように)と静かに祈る。

 自分達の所まで敵が来なかったことに心底安心したが、まだ油断はできない、所詮さっきのは先遣隊のようで敵さんは余力をまだまだ残している。

 敵さんの方にはでかい化物が四匹いる、それらを全て狩り終えるまでは死神勢の勝利とは言えないだろう。

 安心もつかの間、第二陣が進軍してくる。

 第二次は先程の小型ばかりではなく、中型が多数混じっている。

 小型の数も倍増しているようだった。

 ブロンズ帯の死神達は武器を手に立ち向かったが、硬い甲殻の化物や素早い狼のような化物、死神の衣装を纏って死神に擬態してくる浮遊霊の様な化物など、タイプが違い過ぎる中型の化物供に苦戦を強いられていた。

 ついにシルバー帯カルシャの所まで敵が攻め込んで来た。


「リア!行くよ!、絶対に私から離れないで!」


 カルシャは二本の鎌を同時に構えて魔法の詠唱を始める。

 甲殻類の硬い装甲に風の魔法を当てる。

 だが、風は甲殻にあたるや否や四散してしまいダメージなどほとんど無いようであった。

 カルシャは舌打ちしながら近づいて鎌を振るい一度に双方の刃を当てる。

 一撃、二撃、一発目で軽く傷を作り二発目で肉を裂く。

 体じゅうにある出っ張った甲殻の部分は硬いがお腹の部分は柔らかい。

 さっきのブロンズ帯の戦いは後続が活かす、絶対に無駄にはしない。

 確かに切り裂く感じが手に伝わってくる、あともう少し殴ればこいつは倒れる。

 再び武器を振り上げて切り裂こうとした時に、腕を狼型の化物に噛まれる。

 意識が甲殻の化物一体に集中しすぎたのが原因で他の敵を視界に入れていなかったのがこの状況を生んだ。

 カルシャがガムシャラに武器を振りまくり狼に傷をつけるが、何発入れても離れる様子がない。

 甲殻の化物がゆっくりと拳を振り上げてカルシャを狙う、奴の巨体から繰り出される拳をまともにくらえば死亡もありえる。

 そんな時、カルシャ後ろから火花がほとばしり狼の化物を焼き殺す。

 痛みがなくなった瞬間に後ろに跳びのき間一髪のところで攻撃を躱せた。

 火花が飛んで来た方向を見ると、そこに立っていたのはリアだった。

 体は震えて少し泣きそうな顔になりながらもカルシャに向かって叫ぶ。


「リアも...、リアも一緒に戦う!」


 リアは叫び終わると魔法の詠唱を始める。

 凄まじい暴風と肌が凍てつくような冷気が発生したかと思うと甲殻の化物を氷漬けにした後に風の刃が甲殻の化物をサイコロステーキのように切り裂きバラバラにする。

 リアの魔法の威力の凄まじさに開いた口が塞がらないカルシャだったが、それに関して考える余裕もなく次々に新型の化物が出てくる。

 カルシャとリアは背中合わせに少しずつ敵の数を減らしていく。

 ほかのシルバー帯も善戦しているようで少しずつ押し返しているような気がする。

 いける。

 確かに新型が出てきてきついことに変わりはないが、シルバー帯の死神達は皆どこかに強みを持っているようだ。

 だんだんと敵の数が少なくなり盛り返すことに成功した。

 だがシルバー帯の顔は以前険しいままだった

 奥にいる四体の大型、あいつらを倒さない限りこの戦いは終わらない。

 カルシャとリアは顔を見合わせると敵陣深くへと突っ込んでいく。


「私とリアであのデカブツ達をやる!、皆は中型をお願い!」


 リアが魔法の詠唱をする。

 1秒....2秒....、2秒だ、リアは2秒だけで上級クラスの魔法を唱えている。

 しかも二つの魔法を同時に放つことができるようでさっきは風と氷、今度は火と雷。

 リアの両手から火龍のブレスと見間違うほどの熱量と落雷が落ちたかのような威力の電撃が放たれる。

 二つの力が弾けあい凄まじい爆発を起こしてデカブツ達までの活路を開く。

 リアは風を巻き起こし大剣を浮かしていち早くデカブツ達の元へとたどり着く。

 カルシャは少し遅れてそこへと足を踏み込む。

 カルシャとリアは4体のデカブツ達と面を合わせる。

 カルシャとリアが睨み合っていると突如空中から大剣を振りかざした死神が割り込んで入ってくる。


「カルシャ、久しぶり、あの時より随分成長したねぇ、あん時は匂いにつられて食われそうになってたっけ」


 カルシャはその死神の方を向いて少し表情和らげる。


「チハヤさん、お久しぶりです、また出会えて光栄です」


 チハヤとの再開はこんな形でも嬉しいものだった。

 さらに魔法陣のようなものが展開され、そこから死神が現れる。

 変な文字が描かれたメガネをかけるその死神はクイっとメガネあげる仕草をしてデカブツ達の方を見る。


「こんなんじゃあ落ち着いて本も読めないですね...」


 魔法陣の中から現れたのはレルカだ。


「レルカさんも久しぶりです」


 カルシャはレルカにも挨拶をする。

 レルカは少し手を振るとデカブツ達に向き直る。

 リアは二人のことを全く知らないのでとりあえず挨拶だけしておいた。


「まあ、とりあえず4対4にはなったわけか、皆油断しないでね、コイツらかなり出来るみたいだから」


 カルシャに言われなくても分かっているといった表情で皆真剣な眼差しで各々の相手を見定める。

 リアはすぐに決めた、カラス型の化物だ。

 あいつは空を飛べる、4人の中でおそらくリアが一番奴の相手をしやすだろう。


「カルシャ!、コイツは私に任せて!」


 リアは火球を投げつけてカラスのヘイトを自分に向ける。

 上手くつられたカラスがリアめがけて飛んでくる。

 リアは急上昇して戦闘の場を空中へと移した。

 至って普通のカラスだが、異常なのはその大きさとクチバシの長さだ。

 人間の大人でさえも一口で平らげられるであろう大きさのカラスは、羽ばたくだけでこちらが立っていられなくなるほどの風圧を生む。

 リアは上手いこと風圧が起きない地点を移動し続けて風圧による体感バランスの崩壊を防ぐ。

 もしも大剣から落ちて地上に叩きつけられればそれでおしまいということはリアの頭が能天気でも分かることだった。

 リアは魔法の詠唱を始める。

 1秒...2秒...。

 その間にカラスが反撃してくる。

 カラスの体に紫色の波紋が浮かんだかと思うと飛び道具の様な羽の塊が凄まじい勢いで飛んでくる。

 リアは魔法の詠唱しつつ大剣を動かして身を守る。

 大剣の分厚さのおかげでなんとか受け切れるが、大剣を守りに回したせいで空中に浮くことができないので魔法を下に放ち滑空しその間に大剣を足場に戻す。

 カラスはリアが魔法詠唱をするのを待つかのように何もしてこなくなる。


「あいつ、リアが魔法詠唱に2秒くらいかかるってわかってるんだ....、だったら!」


 リアは大剣ごと突っ込む。

 これはもともと武器だ。

 乗り物のように扱ってはいるが物の本質は変わらない。

 魔法を詠唱せずにカラスの体を突き刺す。

 大剣の切れ味はそれほどよくはなく体に突き刺さるだけで切り落とすことはできなかったが、リアからすれば近づけただけで充分だった。

 ゼロ距離から特大の魔法をぶち込む。

 魔法陣を展開して上級魔法を同時に4属性放つ。

 火雷風氷。

 カラスはそれだけの魔法を同時に喰らいながら力尽き地上に落ちていく。



「あいつは私がもらう....他は頼んだ!」


 チハヤは箱の化物の前に立つ。

 箱と言っても鋼鉄の箱にベルトコンベアのような足を持ち、タンクの化物という方がしっくりくる。

 紫の髪を風になびかせながらチハヤは大剣を構え

 る。

 タンクの化物はチハヤを見ると大地を圧迫しながら近づき始める。

 この世のものとは思えない箱からは黒い手がいくつも溢れ出していて口のような隙間が不気味に微笑んでいる。

 さらには無数の目が蠢きチハヤを捉える。


「うぇ、見た目が気持ち悪いな...、でもこんなんばっか相手にしてると流石に見飽きたけどね」


 とりあえず外装の鋼鉄に斬撃を入れて見るが傷一つつかない。

 チハヤが斬撃を入れると相手は無数の手をチハヤに伸ばして捕らえようとしてくるが、チハヤは短剣に武器を切り替えて軽やかに切り刻む。

 短剣に武器を変えた途端にチハヤの動きは軽快になり相手の対処が全く追いついていない。


「手は柔らかいね....、手袋でも履いたら?」


 軽口を叩きながら弱点を探す。

 2分ほど斬撃を続けてわかったことがある。

 外側の皮膚部分は硬すぎてどこもダメージを与えれられないこととこのまま戦っていたらいずれ奴は私以外のやつと戦いはじめるだろうということ。

 奴も私も相手に決定打を与える手段がない、ということは戦うだけ時間を食うばかりで成果を上げられないということだ。

 チハヤ的にはそれでも充分なのだが、お相手さんはそうは思っていないらしい。

 さっきからチハヤではなく遠くにいる見習いの方を凝視してそっちに向かおうとしている。

 どうにか注意を引こうとするが一向に注意を引けない。

 タンクの化物は舌舐めずりをするかのような動きをするとチハヤを無視して見習い達の場所めがけて前進を始めた。


「おいおい、まて!どこへ行く気!」


 チハヤは大急ぎで追いかけてコンベアの上に立ち何度もコンベアを切り裂く。

 だが小さな傷くらいしか入っていない。


「ここも硬いな...」


 チハヤが攻撃に専念しすぎたせいで背後から忍び寄る魔の手に気づくのが遅れる。

 バチンといういい音がなりチハヤの身体はあっさりと吹っ飛ぶ。

 チハヤすぐに起き上がるが血を流していた。


「はは、いいのもらっちゃった...」


 少しのダメージだがまずいのは足痛めたことだ、さっきまでのような動きができるかどうか....。

 って考えていても仕方がない、できることをやる。

 チハヤはもう一度奴に近づいて斬撃続ける。

 相変わらず効果は薄いようだ。


「ったく、ちょっとくらい柔らかい部分残しとけよ...」


 チハヤがそう思った時、無数の手がチハヤを捕らえようと迫ってくる。


「まずいな、避けれるか?」


 チハヤは身をよじりながら回避に専念するが足に痛みが走りずっこける。

 そこ見逃さない奴はチハヤの両手を掴み口の中へと放り込んだ。


 〜口の中〜

 ひどい匂いだ、チハヤはそう思いながら手で鼻をつまむ。

 少し薄暗いので目を慣らしていく。

 食べられていま体内に入ったのはむしろチャンスだと思いたい。

 外壁は硬すぎてまともにダメージを与えられなかったが、体の内側からならどうにかなるかもしれない。

 チハヤは体の奥へと足を踏み入れた。



「あいつ食べられたぞ、本当に大丈夫か?」


 レルカは他人の心配をしているがまずは自分の敵倒すことに専念する。

 レルカの前には巨大なサメのような化物が空中に浮かび、レルカを睨んでいる。

 レルカはメガネをあげる仕草をした後に魔法の詠唱始める。

 レルカが詠唱を始めるとサメは口を開く。

 サメの口内を見たレルカはゾッとした。

 サメの口内からは触手のようなものが生えていてうねうねとう蠢いていたのだ。

 色も血色の良い赤色で気持ち悪さが増していく。

 見たくもない口内を見せられたレルカは速攻で片付けると心に決めて魔法を放つ。

 まずは様子見で下級の炎で皮膚を燃やそうとする。

 すると炎は皮膚に当たる前に消失した。

 何か変だと気付いて他の魔法も試すがどれも皮膚に当たる前に消失する。


「魔法そのものがきかない魔物か?」


 レルカがある程度攻撃を与えるとサメの皮膚が赤く光る。

 それに魔力的な何かを感じたのでレルカは防御魔法を展開する。

 先ほどのレルカの炎がサメの皮膚から反射される。

 なるほど、こいつはこちらの魔法を体内に留めておいて好きなタイミングで使うことができるのか、と推測を立てる。

 ならばこちらから攻撃をしなければいいのではという結論に至り、何もしないでいると普通に突進を繰り出してきた。

 あんな巨体に踏み潰されたら一巻の終わりだ。

 レルカは急いで逃げ出し間一髪のところで回避する。


「今のは危なかった....」


 正直に魔法そのものが効かないならレルカに勝ち目はないがまだ試していない魔法があるのでそれを今から試す。

 彼女は異空間から青白い棒状の物を取り出す。

 その棒は木の枝のように枝分かれしていてとても使いにくそうだった。


「双子の尾」


 レルカはそう呟き本のページを一枚破り捨てる。

 そうすると本のページが変化して白い実態のない剣へと変化する。

 彼女はその剣をサメへと飛ばす。

 剣はサメの肌を捉えて突き刺さりダメージ与えた。

 レルカはこれを見て結論づける。

 魔法そのものが効かないのではなく、属性魔法が効かないのだと。

 それが分かった彼女は1冊まるごとを媒体に剣を生み出す。

 さっきまでとは比較にならない大きさの剣の剣尖がサメの方を向く。


「白き斬撃とともに散れ...」


 レルカはそう呟き静かに手を振り下ろす。

 サメの体は一刀両断され内面図を見せながら崩れ去っていく。

 同時にタンクの化物の方から爆発音が鳴り響き機能を停止していた。


「生体リンクでもして強化されていたのか?」

 レルカは少し疑問に思いながらもカルシャの応援に向かった。


 皆が他の化物と対峙している間にカルシャはよくわからない物体と戦っていた。

 基本は棒状の形状で空中に浮遊しているのだが。さまざまな形状へと変化して襲ってくる。

 カルシャは風属性の魔法を何度か当てるがダメージが全く入っていない。

 当たっているという手応えさえいない。

 危険を承知で接近戦に持ち込む。

 鎌を振るい攻撃を試みるが、手応えがない。

 武器も魔法もダメ、他に何か手立てがないか考える。

 相手の攻撃は武器をすり抜けるようにしてカルシャの体に当たっている。


(もしかしたら....)


 カルシャは武器を捨てて拳を振るう。

 カルシャの生身の攻撃は確かに手応えとして拳に感触が残る。

 武器や魔法をすり抜けるのに生身の攻撃が当たるのは違和感があるが、ここは冥界だ、何が起きても不思議ではないと思い込む。

 奴の肉体はそこまで硬くない、人間の体のように柔らかかった。

 恐らくだが、体を自由自在に変形させるために肉質が柔らかいのだろう。


(これなら殴れる!)


 カルシャは声を上げながら化物に立ち向かう。

 カルシャの攻撃は着実にダメージを与える。

 化物の攻撃は手数が多いだけでそこまでパターンが多いわけではない。

 変形はするが攻撃のパターンが単調で、これまでの戦闘の経験のおかげで大体の攻撃地点の予想がつく。

 カルシャ自身素手での戦いは初めてだが、周りにもし他の死神がいれば体術の達人のように見えるくらいには動きが綺麗で無駄がなかった。

 カルシャの拳が化物の急所の様なものをかすめる。

 明らかの他とは違う反応を示す。

 カルシャははそこに狙いを定めて拳を振るう。

 力強い彼女の拳が化物の急所を捉えて砕く。

 化物は何か呪文の様なものを唱えながら巨大な魂へと姿を変える。


「終わったか....」


 カルシャは疲れてその場に足をつく。

 息を吸い込み大きく深呼吸する。

 そうしていると空中からリアが現れる。


「カルシャ!」


 リアは心配した様な表情でカルシャの方に走り出す。

 カルシャはリアの方向に向き笑顔を見せる。


「よかった...、カルシャが生きてるだけでリアは...」


 リアは泣きそうな顔でカルシャ抱きしめ、カルシャはそれを優しく受け止める。


「全く....、お暑いことね2人とも」


 レルカは2人の仲の良いところを見て皮肉げに話す。


「そっちも終わったの?」


 カルシャはレルカに問う。

 レルカは疲れた様な顔でサメの魂を見せる。


「まあ食われた奴もいるけど箱の敵も機能を停止してたから、あの子も倒したんじゃない?」


 チハヤの向かった方向を見てみると、チハヤがこちらに駆けつけてくるのが見えた。


「あの化物の腹のなかの赤い紋様みたいな部分ぶっ壊してやったら勝手に機能停止したんだ、外は硬かったがなかは柔らかかって助かった」


 チハヤは意外と余裕そうにしているが、明らかに足を負傷している、さっき駆けつけた時も速度はそれほどでもなかった。

 カルシャが見た感じだとリアとレルカ以外は満身創痍に近い状態だ、勝てたのは奇跡かもしれない。


「皆、ありがとう」


 カルシャは3人に礼を言う。


「何言ってんだ、私とあんたの仲だろ!」


 チハヤはカルシャの頭をなでながら言う。


「そうですね...」


 カルシャはあの一回の出会いが今回の勝利に影響を及ぼしたのかとも思っている。

 もしチハヤと出会う機会がなかったになら箱の化物はどうしようもない状況になっていたかもしれない。


「全く、これは貸しにしておきますからね」


 レルカはため息混じりにカルシャに言う。


「レルカさんもありがとうございます」


 レルカとの出会いがなければ魔法を使って戦うという基礎的なことをまだ覚えていなかったかもしれない。

 本を読むことの楽しさのきっかけを与えてくれたのもレルカだ。


「カルシャ、早く帰ろう、帰ったら私とカラトとどっか遊びに行こうよ、約束したよね」


 カルシャの方を向いて笑顔を見せるリア。

 カルシャは「ああ」と呟いて立ち上がる。

 私は不意にリアの後ろに何かがいることに気がついた。

 黒い何かだ。

 人形で身長は私くらいしかないが敵意を感じる。

 私はリアを払いのけてそいつの斬撃をもらった。

 私の体から赤い鮮血がほとばしる。

 その後その場に倒れ伏して体が動かなくなっていくのを感じる。

 これは味わったことのある経験。

 そう「死」だ。


「カル....シャ?....」


 リアは小さく恍惚の表情でそう呟いた

 リアにはまだカルシャがなぜ自分を払いのけたのかわかっていなかった。

この話はかなり長くなることが予想されたので三分割くらいに分けるのか一気に最後までやってしまうのか考えていたら、中途半端に書いてしまいました。

まだ後半部分が残っているのでこの話ともう1話で戦争編としようと思っています。

文章量が多いので読むのに時間がかかったと思います。

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