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〜死神達の遊戯〜

「いや、おかしいだろ」


  私は自分の部屋で彼女にそう言う。

 私がいつも通り寝床から起きた時に目に移ったのが彼女の寝顔だった。

 なぜか私の部屋の住み着き、あまつさえ一人用のベッドに二人で寝ている。

 彼女の名前はリアというらしい、最近出会ったばかりで名前くらいしか知らないのだが、彼女は生前から私のことを知っている...、もとい、私に似た人物の記憶があるらしい。

 そのためか以前あった時は初対面にもかかわらず「やっと会えた!」などと騒ぎ立てた過去がある。

 私はため息を吐きながらリアの顔を見る。

 リアは嬉しそうに私を見続けている。

 まるで元気のいい子犬のようだと私は思う。


「カルシャ!、今日はなにして遊ぶの?」


 カルシャは困った顔をしながら考える。

 正直遊ぶと言っても、遊び道具などカルシャの部屋にはない。

 魔術に関する本が数冊と白いベッドくらいしか置いていない。

 あまり生活感のない部屋だなと、自分でも思い始めてはいた。


「何か遊ぶ物でも買いに行く?、ほら私の部屋って遊び道具ないし」


  リアは辺りを見回した後にうなづき、拳を突き上げながら喜んでいた。

 優しめに言ってもリアはかなり変わっている、性格とかもそうだがなによりもその行動が奇抜だった。

 黒の街へと降りるために広場へと出る。

 広場に行くと今日はカラトがゲートを担当していたので声をかける。


「おはよ、カラト」


  カラトはカルシャに気付き手を振るが、リアが隣にいることに気づき、急に普通にする。

 カルシャはカラトにリアを紹介する。


「この子はリア、昨日ここにやってきた死神見習いで今は私の部屋に置いてる」


  カラトはリアの紹介を聞き終えるとカルシャのことを褒め始めた。


「そういえば聞いたぜ、憎悪の洞窟の魔物を倒したんだってな、つい最近死神になったばかりでもうそれだけの実力をつけるとはやるな!」


  カラトが拳を前に突き出したので、カルシャは拳を合わせる。


「とーぜん、私だっていつまでもお荷物はやだしね」


  二人は笑い合う。

 カルシャには前にもこんなことがあったような気がした。


「カルシャ達ばっかり楽しそうにしてずるい!」


  リアがむすっとした顔で二人の中に割って入る。

 二人は慌てて離れてカラトがリアに対して謝罪する。

 瞬間的にリアの名を忘れたカラトが戸惑う。


「悪かったな、えっと...」


「リアだよ」


  リアは戸惑ったカラトに自分の名前を告げる。


「そうか、よろしくな、リア」


  名前を呼ばれたことに満足したのか、リアは無邪気な笑顔を振りまく。



  カラトと別れた後二人は街へと降りていた。

 リアはさっきのカラトの言葉に胸を躍らせているように小刻みにステップを踏みながら進んでいる。

 その言葉とは今度の休日は3人で被るように仕向けてどっかに遊びに行こうというものだった。

 カルシャは表情は少し困り顔だが、内心では少し楽しみにしていた。

 とりあえず本屋に入る。

 遊び道具といっても店などここくらいしかカルシャはしらない。

 ならば、まずは情報を集めることにした。

 本屋で黒の街ガイドブックを買ってパラパラとめくる。

 本を見ている間もリアはじっとしていない、カルシャの耳に息を吹きかけてきたり、目の前で手を上下に動かして読むのを邪魔してくる。

 その妨害に耐えながら読み進めてこの街にある玩具屋の位置は大体把握した。

 本屋を後にして玩具屋へと向かう。


  玩具屋に着くと遊び道具を見てみる。

 リアはすでに気になるものに手をつけまくっているが、カルシャの予算はそこまで多くない為、しっかりと吟味したいところ...。


「カルシャ〜これ面白いよー!」


  急なリアの声にカルシャは振り向く。

 そこには大剣を風魔法で浮かして、ボードのように扱って空を舞うリアの姿があった。


「なんで玩具屋に武器が置いてるの!?」


  カルシャの真面目なツッコミに店員らしき死神が答える。


「本店では様々な顧客に対応するためにあらゆる世界から流れ着いた玩具らしき物を商品として拾ってきているのです」


  自信満々に話す店員を見つめる、呆れた表情のカルシャはリアに戻してくるように促すが。


「これください!」


  リアはそれが気に入ったらしくどうしても手放さない。

 しょうがなく会計に出すカルシャだが、いざ会計となると少し発狂してしまった。

 この前の憎悪の洞窟の魔物の魂でも足りず、カルシャがこれまで稼いだほとんどの魂を使ってしまった。

 それを尻目に喜ぶリアだが、カルシャの落ち込む姿を見て少しは察したように落ち着いた。

 店員は大きい買い物をしてくれた二人にスポーツチケットを配布してくれる。


「フロスポ?」


「そうフロートスポーツ、略してフロスポ、こういうアイスの形をした棒状の剣でこのボールを打ち返して相手のコートに5回先に入れた方の勝ちっていうシンプルなスポーツです」


  嬉々として語る店員だがカルシャはこんな名前のスポーツを聞いたことすらない。

 少し怪しいと感じたカルシャはさっさと退散しようと店から出ようとするが、リアは目を輝かせていたので仕方なく参加することにした。

 参加すると発言するやいなや店員に店の奥に連れて行かれて着替えさせられる。

 肌の面積が多い服で水着というらしい、というかこの世界に黒コート以外に衣装があることを今知った。

 この店の屋上にフロートスポーツ用のコートがあり、屋上の地面には砂場が貼られていて、滑り込んだりしても怪我がないように配慮されているようだった。

 ルールそのものはテニスの様な感じで、相手のコートにボールを打ち返して相手のコートにボールが落ちれば1点。

 これを5点先に先取した方の勝ちで、4点同士になるとジュースになりそこからは2点先取制になる。


「ジュース!美味しそう!」


  リアはあっけらかんにそう発言する。

 さっきもフロートスポーツ用のフロートソードが美味しそうと言ってはかじっていた。

 私とリアは互いのコートに入った後、向かい合う。

 最初のサーブ権は私にあるようで、ボールを受け取る。


「行くよ!、リア!」


  カルシャはサーブを決めてリアのコートに入る。

 リアは一歩たりとも動いていない。


  カルシャ1ー0リア


「ちょ!、ちゃんと打ち返しなさい!」


  カルシャはフロートソードをリアに向ける。

 よく見るとフロートソードをまたかじっていた。


「ああ、ゴメンゴメン、つい美味しそうで」


  笑いながらカルシャの方を見てくる。

 カルシャは背中で隠しながらも拳を握りしめて。

(殴りてぇ〜)

 と密かに考えていた。

 二回サーブでサーブ権交代のルールのため再びカルシャのサーブだ。


「今度こそしっかりしてよね!」


「オーケー、本気で行くよ〜」


  緩い感じに返してくるリアは本当に大丈夫なのかなと思いつつもサーブを繰り出す。

 まあ、リアが弱すぎたら接待プレイでもすればいいかと思い始めた時には、ボールはカルシャのコートの中に深く沈んでいた。

 一瞬すぎてなにが起きたのかわからない、ちょっと意識を逸らしただけで点を取られていた。


 カルシャ1ー1リア


「イェ〜イ、一点〜」


  変な踊りを踊るリアを見ながらカルシャは考察する、いくら自分が油断したとはいえコートに着地するまで気づけなかったのだ。


「急に黙っちゃったね〜、カルシャ...!」


  次はリアのサーブだ。

 私は全神経を研ぎ澄ませてリアのサーブを待つ。

 リアの手からボールが離れる。

 カルシャはしっかりと身構える。

 そして、リアのフロソはボールに当たらず自身のコートに落ちる。


 カルシャ2ー1リア


「あちゃ〜、結構難しいね〜」


  リアは頭をかきながら笑っているが、カルシャにはその笑いが今は不気味に思える。

 さっきまではただの能天気なやつだと思っていたが、正体不明の技があるというのは心臓に悪い。

 ...まあ心臓なんてとっくに動いてないんだけど。

 リアが再びサーブの姿勢に入ったので身構える。

 リアの手からボールが離れる。

 今度はちゃんとボールにあたるが、威力が弱すぎる。

 アンダーサーブという山なりサーブは安定性はあるが、実質チャンスボールだ。

 カルシャは勢いよく走って飛び上がり渾身の一撃でボールを叩き潰すかの如くフロソを振るう。

 リアは滑り込み必死に手を伸ばすが、届かない。


 カルシャ3ー1リア


「よし!」


 拳を握りしめてガッツポーズをするカルシャ。

 しかし、そんな自分を恥ずかしがったのかすぐにやめる。

 カルシャのガッツポーズを見てニヤニヤしているリア。


「へ〜、カルシャ嬉しいんだ〜」


「な...何よ!、別にいいでしょ!」


  熱くなって赤面した顔を見てリアはさらに笑う。

 プク〜と膨れ上がった頰になっているのに気づいたカルシャは精神を落ち着けて次の自分のサーブに気持ちを切り替える。


「ま、あと2点で私の勝ち」


「む〜、少しまずいな〜」


 リアはなにを考えているのか基本わからないが、今だけは割と困っているであろう。

 さっきまでの余裕そうな笑顔が消えかかっている。


「3ー1...」


 カルシャ急に呟いて構えを変える。

 そしてこれまでに見せたこともない威力の高いサーブを繰り出した。

 あまりの威力を前にリアは立ち尽くしたまま動けない。

 ギュゥゥ!というような風切り音とともにボールは回転しながら飛んできたのだった。

 リアはポカ〜ンと口を開けていた。


 カルシャ4ー1リア


「何今のずるい!」


 リアはカルシャを右手で指差して左手を駄々っ子のように振っている。


「いや、これ私の技術だし、別にズルくはないと思うんだけど...」


 カルシャは少し笑いながらリアの怒り顔を見る。

 結局再びサーブを決めてカルシャが勝った。



 コートから二人が出てくると、リアは納得できないというかのようにカルシャを見つめていた。


「む〜、やっぱりなっできない!、もう一回!」


 リアは再戦を申し出てくるがカルシャは断る。

 なぜならもう、今日が終わるからだ。


「ごめんリア、でも今日はもう帰らないと、遊びもいいけど体力を温存しとくのも大事でしょ?」


 リアはむくれっつらでカルシャを睨んでいたが、実際今日という日を楽しんでいた。

 カルシャもリアと遊べて楽し...い..?。

 リアと遊んで楽しい?、私は...。

 そうだ、この感情は生前の記憶のものか?。

 リアといて少し生前の記憶が蘇ったのか?。

 生前のリアは私と似ている人物の友達だったらしい、もしかするとそれは私の生前なのか?。

 まあ、思い返せばこの日まで年の近しい友と遊ぶことなど考えたことはなかった。

 ただただ楽しいという感情に生前の記憶が感化されただけかもしれない。

  .....、なぜ私には生前の記憶がないんだろう?。

 ここに来てカルシャは急に震えが止まらなくなった。

 皆は多かれ少なかれ生前の自分を知っている。

 だが、私は名前さえも....ルシェ?。

 カルシャの脳裏にちらついたのはあの夢で見た名前だった。

 もしかしたらあれは夢ではなく、私の生前の記憶なのか?。

 そのことを考え出すと苦しくなる、呼吸は乱れ汗は吹き出し体温が上昇したような感じになる。

 息苦しそうに喘ぐカルシャを見かねたリアはいきなりカルシャに抱きついた。


「ちょ!」


 あまりに突然で考え事が吹き飛ぶ。


「カルシャ、暗いこと考えるのダメ!、今は楽しいことを考えて!」


 リアの体温を直に手で感じる。

 暖かい気がする。

 何だろうか、人肌というものには優しさを感じてしまう。

 私は徐々に落ち着きリアの頭を撫でた。


「ありがとうリア、少し心が和らいだ」


 と無理にでも大丈夫ということを示す。

 リアは心配しながらもカルシャと共に城へと戻っていった。














 


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