表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

〜出会い〜

 目がさめる。

 いつもの光景、いつもの部屋。

 私はベッドから起き上がる。

 ふと気になり、酷い火傷していたはずの右手を見てみる。

 昨日までの火傷の跡はすっかり良くなり痛みも感じない。

 試しに鎌をふるってみるが、違和感なく素振りができたので、もう大丈夫だと思う。

 部屋の外へとでようとした時に、扉を叩く音がした。

 どうせカラトが呼びにきたのだろう感づいたカルシャだが、一応礼儀良くどうぞと声をかけた。


「失礼する」


 その声でカラトではないと気づく。

 扉を開いて現れたのはカルシャの2、5倍近くはあろうかという巨体の大男であった。

 男は死神のコートを着ているが肉体がなく、むき出しの骨をさらけ出している。

 瞳の部分が赤く光り存在感放ちながらカルシャを見下ろすかのように凝視する。

 少し怖気つきながらも同じ死神なので攻撃されることはないだろうと会話を試みる。

「あなたは誰?、私に何か用?」

 カルシャは相手に正体の提示を求める。

 大男は咳をこみながらも正体をあらわにする。


「我は死神大王、そなたのこれまでの成績を称え褒美を授けにきた」


 死神大王と聞いたカルシャはまずい発言をしたと思い態度を改める。


「死神大王様直々の褒美ありがたく頂戴いたします」


 カルシャができるだけの言動の良い言葉を選ぶ。

 死神大王は大きくも優しい声で笑うとカルシャの頭を撫でながら。


「そこまでかしこまらなくても良い、我はただそなたに褒美を与えにきたのだからな」


 死神大王は手に持っていたドクロの顔のついた鎌をカルシャに与えた。


「その鎌は死神の鎌、そしてこれも授けよう」


 カルシャの名前が彫られたシルバー色のペンダントを首にかける。

 階級の昇格を大王様に祝福されるというのは死神として嬉しいことなのだろうが、それ以上にカルシャは不穏感を感じていた。

 そう、所詮階級はシルバーなのだ。

 ブラックなどの高い階級ならともかく、まだシルバーになったばかりの死神にわざわざ足を運ぶだろうか?、という疑問だ。

 死神大王はカルシャの顔を見つめながらこんなことを聞いてきた。


「ところで、ルシェという名に聞き覚えはないか?」


 なぜだろうか?、夢の中にいた自分と同じ名前のことを聞いてきたのだ。

 答えようと思いもしたが、なぜか寒気の様な風が背中をくぐり抜ける様な気持ち悪さがあり、本当のことを答えなかった。


「いえ、私はその様な名前を聞いたことはありません、力になれず申し訳ございません」


 死神大王は良いとだけ言う。

 そして間を置いた後再び言葉を出してくる。


「ところで、そなたには今日、我の出す任務を与えるつもりなのだが、良いな?」


 その答えは了承した。

 標的のリストをもらい受け、カルシャは広場へと向かう。

 その様子を死神大王は静かに見ていた。



 憎悪の洞窟。

 今カルシャはその場所に立っている。

 何度も足を踏み入れた場所で、彼女にとってはもはや庭の様な場所だ。

 死神大王からもらったリストを見た彼女は嬉しい気持ちで洞窟の奥へと向かって行く。

 そう今日の標的はあいつだ。

 前はカラトときたおかげでなんとか逃げ切れたが、今回は一人での挑戦だ。

 冷たい風が吹き抜けて肌寒さは洞窟奥に進むたびに強まる。

 そしてあの場所へとたどり着く。

 洞窟の奥。

 洞窟奥とは思えないほど広く開いた場所。

 ここまでくるのは久しぶりだ。

 今度は負けないように作戦もあの日からずっと考えていた。

 武器を構えて魔法の詠唱を始める。

 まだ標的は見えていないが、なぜ魔法を詠唱するかというと試して見たいことがあったからだ。

 約8秒の詠唱、小さい炎を出して松明につけて岩にくくりつける。

 この作業を繰り返して視界を明るくする。

 一応洞窟に目を慣らしてから奥に入ってきたが、明るい場所を作れば奴をおびき出しやすい。

 奴の子供は熱感知なのか火をつけておくと近づいてくる性質があった。

 ここにくる前にカルシャが使える全魔法を奴の子供に試したが、効果が一番高いのは火であった。

 とにかく待つ、奴が現れるのを。

 数分が立つ。

 大気が震えて奴が近づくのを感じる。

 武器を構えて深く深呼吸をする。

 ついに奴が姿をあらわす。

 奴は目玉だけでカルシャと同等の大きさだ、まともにやりあっても勝ち目はない。

 注意すべきなのは奴が巨大なナメクジで口から糸を吐くことでこちらの動きを牽制してくることと、卵から生まれる奴の子供の数がどれだけかということ。

 ナメクジはカルシャの作った松明に糸を吐き出して捕まえようとする。

 カルシャの思った通りナメクジは熱感知の瞳を持つが対象が生きているかどうかの判断はついていないようだった。

 その判断ができると連続で魔法を詠唱し、いろいろなところにカルシャと同程度の大きさの炎を発生させ、ナメクジの注意を引く。

 ナメクジは急に現れた5箇所の熱源に慌てたように子供達を放つ。

 それを見越していたカルシャは風の魔法を起こし数匹ずつであるが確実に子供を炎の中に誘導する。

 数回繰り返せばカルシャの魔力が尽きるが子供の数は想像した通りくらいの多さであった。

 なんとか全魔力が尽きる前には終わらせれた。

 あとはでかいやつだけだ。

 奴もようやく熱源を全てその巨体で潰して消して終わり、本物のカルシャがどこにいるか把握したようだ。

 子供を全て失い激昂したのかカルシャに一直線に迫る。

 カルシャは冷静に対処する。

 まずギリギリまで奴が近づくのを待ちながら風の詠唱を続ける。

 奴に圧殺されるギリギリを狙い高く飛び上がる。

 奴の弱点はあそこだけだとカラトの戦いを見て学習している。

 高く飛び上がったカルシャは奴の目玉に向かって勢いよく落ちる。

 奴の瞳にカルシャが映った時にはカルシャの鎌が奴の残る瞳を切り裂いた。

 勢いよく血のような物が噴出し勢いよく飛び出る。

 奴は大きな悲鳴のような声を上げて倒れ伏す。

 ぐったりとしたそれはもはや死に際の生き物のようであった。

 両の目を潰したのだ、最早視界はなく暗闇が広がるだけの生き物に情けをかけ一撃で魂を狩取る。

 新しい鎌の切れ味は申し分なく奴の身体にもすんなり刃が通り魂を狩取った。

 これまでにカルシャが倒してきた魂などとは比較にならないほど大きいな魂が手に入った。

 だがそれよりもカルシャには自分の能力が向上し、大きな敵を倒せたことによる充足に満ち足りていた。

 大きく息を吐き、元きた道を戻ろうと思ったが、奴の現れた方向にはまだ道が続いていたため好奇心に負けて進んでみる。

 疲れは残っていたがまだ探索くらいならできる。

 足元の水たまりを気にしながら進む。

 洞窟のさらに奥へと進んで行く。

 この時のカルシャの気分は強敵を打ち取り、自信が付いてきていたので怖いものがないような気がしていた。

 洞窟の深奥には奴の苗床のような場所があり、そこを魔法で焼き払う。

 奴の糸でつくられた苗床が焼き落ちる。

 すると急に苗床が焼かれたのが原因で死神のコートを着込んだカルシャと同じくらいの子が落ちてくる。

 カルシャは急なことだったので反応が遅れ手を伸ばすが間に合わない。

 その子は勢いよく水しぶきをあげながら水の中に叩きつけられた。

 水の中とはいえカルシャの足がつくくらいの水の量だ。

 心配になりながら、その死神を水たまりから引っ張り出す。

 水たまりがない場所にまで連れて行くとコートのフードを取り素顔を確認する。

 その子の顔を確認すると、あったこともないのに懐かしい感じがした。

 そう、どこかであったことがあるような感じだ。

 その子のことは本当に何も知らないのだが。

 しばらくするとその子が目覚めた。

 大きいあくびをしながら白髪を揺らし、赤い瞳を開いてカルシャの方に視線を注ぐ。


「あなたは誰?」


 カルシャに投げてきた質問は至極真っ当なものだった。


「私はカルシャ、あなたの名前は?」


 質問に答えてから質問を返す。


「私は...ria、リア=コル!」


 リアは元気よく自分の名前を語る。

 そして勢い良くカルシャに抱きついてきた。

 一瞬なにが起きたのか把握できなかったカルシャだがすぐにリアが抱きついてきたのだと気付くとリアの頬を手で押して遠ざける。


「なによ!急に!」


 カルシャは怒りの表情でリアを見るが、リアは満面の笑顔でカルシャの体に抱きついたまま離れようとしない。


「やっと、やっと会えた...」


 小さくリアが囁いたのを聞いたカルシャは顔を硬らせる。


「やっと会えたって?、私達始めて会うよね?」


 リアはキョトンとした顔でカルシャを見つめる。


「あれ?、なんでだろう?、でもなんかカルシャを見てたら急に...」


 リアの瞳から涙が溢れ出す。

 感情の起伏が激しいのか、さっきからコロコロと違う表情を見せるリアに対し、カルシャはいたってシンプルに接していた。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ