〜記憶の濁流と終戦〜
終戦。
リアは倒れたカルシャに生前の友の顔を重ね合わせる。
(ルシェ.....)
カルシャはたしかに生前の友に見た目が似ているが、性格は違っている。
身体能力もここまで低くない。
しかし、リアにはカルシャがどうしてもかつての友に見える。
なぜかはわからない、生前の記憶がそうさせているだけの紛い物なのかもしれない。
だが、確かに彼女は....。
思い出す。
あの日、隠れんぼして遊んだ、あの日、共に同じ場所にいた、あの日、一緒に眠った。
(私は悪魔.....あなたは.....)
急に頭が割れるように痛くなり頭を抑える。
もしかして、ただ私が重ね合わせてるだけなのか?。
そう思った時私の中に記憶が流れ込む。
なんの記憶?
(私は兵隊....あなたは......)
それは友が私の仲間を傷つけた記憶。
傷つけたのはカルシャ?
カルシャが友ではなく敵に思えた。
違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!。
カルシャは友だ、リアの友達を奪うなんてことはしない!。
曖昧な記憶を否定して自分という意思を保つ。
その時だった。
「う....」
カルシャが呻き声をあげる。
リアは感極まった表情でカルシャに近づく。
「頑張って!カルシャ!息を吸って!」
リアは必死に応援する。
カルシャはゆっくりと目を開けた。
「ここは...?、リア?.....、どうして泣いてるの?」
リアはカルシャを抱きかかえて泣いていた。
「カルシャ....良かった....もうダメかと思った....」
カルシャの傷がいつのまにか癒えていた。
誰かが治したわけではない、自力で死の淵から生還してきたのだ。
そんなことは普通あり得ない、あり得ないことだが現実に起きた。
〜白の城〜
生き残った死神達はゲートから城へと戻りゴールドクラス以上の死神から拍手喝采を受ける。
死神大王自らが声を上げて生き残りし死神達を讃える。
「皆の者よくやってくれた、皆の働きのおかげで余計な犠牲を払わずに済んだ、礼を言う」
カルシャはゆっくりと死神大王近づいて睨みつけた。
「何かな?」
死神大王はカルシャを見下ろす。
カルシャは威圧に負けずに今回の件の死神大王の落ち度を問い詰める。
「死神大王様、無知な私にお教えください、経験の少ない死神見習い達を最前衛にしていた理由を」
前線で戦っていた死神達は急に静かになる。
誰でもわかる、被害が最も多く出る順番だったのだから。
ただ、皆がそれ聞かないのは相手が死神大王だからだろう。
死神大王はふふっと笑うと生気のない目をカルシャに向ける。
「これはすまなかったな、よもやそのように考える者もいたとは」
「何かおかしいのですか?」
カルシャは少しキレ気味だ、言葉の口調が荒い。
「失敬、カルシャよ、お前は何か勘違いをしている、強きものを大事にするのは当たり前だろう?、逆に弱き者共など必要ない、それがこの世界の真理」
死神大王の考えにどうも納得のいかないカルシャは次の言葉考えている。
その間を逃さずに死神大王はカルシャとリアにペンダントを渡す。
「カルシャよ、今日からお前はゴールドの階級だ、これからも精進せよ、そしてリア、今回の戦いにおいて最も戦績を残したのはお前だ、よって今回の戦績を讃え、死神見習いリア=コルに魔王の称号とブラックの階級を与える」
周りから歓声のような声が上がる。
「いきなり見習いからブラックになっちまいやがった」
「あの子は前からやる子だと思ってたよ」
「ここからも見えたもんなリアの魔法!」
「すげーぞ2人とも〜」
といった内容の言葉を2人にかける
しかし、カルシャは不服そうな顔をする。
「どうした?カルシャよ、階級昇進に不服か?」
違う、そんなことはどうでもいい、死んでいった者達の魂は消えてしまったのだろうという現実にカルシャは寂しさを感じていた。
....気になっているのはそれだけではない。
リアの表情が浮かない、これほどまでに落ち込んでいるリアを見たことはない。
「リアどうしたの?」
リアはカルシャの顔を見るのを拒絶するように顔を合わせようとしない。
(疲れているのかな?今はそっとしておこう)
カルシャはリアに話すのをやめて死神大王が他の死神にも階級昇格や褒美を渡していくのを見ている。
(あなたは誰?)
リアの生前にカルシャに似て人物を知っているせいで記憶が曖昧になる。
リアは記憶に出てくる人物とカルシャがどうしても重なる不思議な現象に少し疑問抱いていた。
そんな2人を見た死神大王は微かに笑う。
「皆の者今宵は宴だ!今宵は勝利の余韻を楽しもう!」
死神大王の声に死神達は大声を上げた。
ここまで書いたので死神堕ちを書き始めますね。