〜生者と死者〜
落ちていく。
水の感覚を全身で感じながらゆっくりと降下していく感じだ。
(そうか...私は死んだんだ)
カルシャはもう一度死んだことを確認する。
はっきりと覚えている、リアをかばって斬撃を受けたことを。
その後のことをなにも覚えていないことも....。
やがて地面に足をつけ目を開く。
何もない真っ暗な空間。
ただ無限に広がりつづけるその空間にオレンジ髪をしたカルシャと同年代くらいの少女が立ったまま眠っている。
カルシャはその人物に近づく。
「あなたは....?」
カルシャは重い口を開いて少女に声をかける。
声をかけられた少女は目をゆっくりと開いて名を名乗る。
「ルシェ=イシュタール....」
弱々しくもはっきりとした口調で少女は答えていた。
「ルシェ....?」
カルシャの夢の中での名前と同じだ、単なる偶然か?。
ルシェの手を握るとほんのり暖かい。
もしかするとルシェも死にかけてここにいるのかもしれない。
(どうせ死ぬのなら私の残った力をこの子へ....)
カルシャはルシェへと魔力を送る。
どっちにせよ私は死ぬ、ならばせめて生き残れる方に渡すべきだと考えた。
たとえそれが赤の他人だとしても...。
ルシェに残ったカルシャの魔力を送り込む。
ルシェはカルシャの魔力を受け取ると。
「ありがとう....」
と静かに呟いた。
カルシャはにっこりと笑顔を見せてそのまま消えるのを待っていた、その時。
カルシャの中から血が沸騰するかのような熱さを感じた。
(嘘..、私の心臓....動いている!?)
カルシャの心臓は死神になってからずっと止まっていた。
だが、今はしっかりと強く脈を打ち続けている。
失われた命の息吹をカルシャは今感じている。
死神とは魂の強さのみで動いている。
もしも生命を得た死神などが存在した場合....。
カルシャは願う、もう一度目を覚ますことを。
友との約束を果たすために....。
仕事の休憩時間に投稿するアホ作者。