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〜目覚め〜

ツイッターにて「#鼓動シリーズ」で検索かけていただければイラスト投稿もしています。

 〜目覚め〜

 私は見覚えのない部屋で目を覚ます。

 白一色の部屋には白いベッドが一つだけありそれ以外には物は何もない。

 私が辺りを見回していると白の扉から長身の男が入ってきた。

 男の見た目は黒いコートに黒のズボン、黒の靴と怪しさ満点の上に黒髪短髪で黒一色すぎて逆に清々しいまでの不審者のように思えた。


「よう、目が覚めたか?」


  男は親しく接してくる。

 私は口を開き、その男に今私の身に何が起こっているのか聞いてみることにした。


「あなたは誰?、私はどうしてここにいるの?」


  男は気まずい表情を見せながらも説明してくれた。


「あ〜、言いにくいんだけどな、まあ言うしかないか、まず、お前は死んだ、死んだからここにいる、ここは冥界で俺は死神だ、理解したか?」


  私は頭の中ががこんがらがった。

 そりゃそうだ、始めて出会ったやつにお前は死んだと言われても普通は冗談にしか聞こえない、誰でもそうだ。

 だけど私は違った、なんとなくだが自分が死んだことを覚えている。

 死因がなんだったかは覚えていないが、死んだと言う感触のようなものを心で感じていた。

 私は死神に問う。


「あなたは死神さんなんだよね、私はどうなる?魂を取られるの?」


  死神は頭をかきながら質問に答える。


「あー、お前の魂を取ったりはしないよ、それとその死神さんっていうのはもうやめろ、俺にはカラトっていうれっきとした名前があるんだ」


  カラトと名乗る死神は親指で自分を指しながらキメ顔を決めている。


「それはいいとしてお前ももう死神の一員だぞ、自分の姿を見てみろ」


  そう言われると私はベッドから立ち上がり自分の服装をチェックする。

 カラトと同じような服装だった。


「あれ?私いつのまにこんな服着てたの?」


  カラトは私の驚く姿を笑いだす。


「いつのまにって、最初っからだ、俺がお前の部屋に入る前からその服装だぞ、死神は基本黒コートに黒ズボンの服をきている」


  私は妙に納得した、死神が黒一色のイメージは誰しもが思うところではある、ただ、骨のような見た目ではなく元気な青年なのは意外だが。


「とりあえず動けるなら出かけるぞ、いつまでも寝てられるとこっちも困るからな」


  カラトは私を無理矢理に部屋の外へと連れ出した。



  部屋の外に出るとそこは長い通路であった。

 まるでホテルのような部屋の数があり左右に扉が一定の間隔で並んでいた。

 相変わらず眼に映るものが白一色でできておりここを作った人物はよほど白が好きなのかと思うほどだった。

  私はカラトの後をついていく。

 通路の途中に鏡があったので一応自分の顔を確認した。

 黒髪の短髪に小さいハートの瞳を持つドクロのアクセサリーが輝いている、青い瞳にそこそこ可愛いいと思えるくらいの顔面で少し安心した。

 少し鏡の位置が高いと感じたので自分の身長はかなり低いと思う。


「そういえばお前の名前はなんていうんだ?」


  突然自分のことを尋ねられたので私はテンパリ答えを出せなかった。


「え...えっと.....」


  いや、テンパっているせいではない、本当に自分の名前が出てこない、大事なことのはずなのに一文字足りとも思い出せない。


「なんだよ、わからないのか?」


  カラトが少し困り顔で私に尋ねる。

 私はうまい答えが出せずに軽くうなづく。

 カラトは数秒考えると指をぱちっと鳴らしていい案を思いついたとばかりに言い放つ。


「お前の名前はカルシャ=ネルムだ!俺が今考えた、いい名前だろ」


  私は強引なカラトの提案に顔がひきつきながらも名前がないのではこれから先不便だと思いその名前をとりあえず受け取ることにした。

 だがまだカラトを信用したわけではない。

 カルシャはカラトより三歩ほど前に出て振り向きながら少し険しい表情を浮かべてカラトの方に向き直る。


「名前は受け取る、でもまだアンタのことを信用しきったわけじゃないから」


  それだけ言うとカルシャは歩き出した。

 カラトはそんなカルシャの態度を見て、なぜか笑みを浮かべていた。



  だいぶ歩いたがまだ白い通路から出られていない。


「まだつかないの?」


  カルシャが痺れを切らしてカラトに言いよる。

 そんな様子を見た彼は「もう少し」とだけ言いなおも進み続ける。

 やがて通路の終わりが見えてきたのでカルシャが駆け出した。

 一体外はどんな感じなのか?そんな好奇心が彼女を突き動かす。

 通路を出た先で彼女が見たものは、眼下に広がる黒いビルが立ち並ぶ都市と黒い雲のようなものに光が遮られているような空でこの世の物とは思えない光景だったが。


「これは...何?」


  彼女はそれよりも気になっていたのが自分が今出てきた建物だった。

 白い巨大な城のような建築物であり、何処と無く黒色の世界にはアンバランスな白一色で出来上がっていて明らかに後から建てられた物であることがわかる。

 だが、それ以上に気になったのは、この城が空中に浮いていることに気づいたことだ。

 眼下に広がる都市がかなり下に見えている。


「どうだ?俺たちの城は?」


  カラトが自慢げにカルシャに告げる。

「俺たちの城?」


「そうだ、俺たち死神達がこれまでに作り続けてきた冥界においては天国とも思える場所だ」


  冥界なのに天国と思えるって...とカルシャは気になりながらも話を続ける。


「まあここが死神達の住む城だってのはわかったけど、天国と思えるってことは冥界はやばいとこなの?」


  その質問をきいたカラトの表情が一気に暗くなる。


「あー、まあなんだ、すぐわかるさ」


  カラトはそれだけ言うと階段のある方を指差して降りろとだけ言うとそのまま城の中へと帰っていった。

 カルシャは目的もないのでとりあえずここはカラトの言うことを聞いておこうと階段を降りていく。


  階段を降りた先、そこはこの城の広場のようであった。

 かなり広く100人くらい人が集まっても大丈夫だと思えた。

 どうやら先客がいたらしく茶髪のロングをなびかせたやる気なさそうな女性の死神が今にも眠りそうな顔で前を呆然と見つめていた。

 カルシャはその女性に声をかけてみた、その女性がカルシャに気づくのにそう時間はかからなかった。


「新人の死神ね、名前は?」


 そう聞かれたのでカルシャは自分の名前を名乗った。


「カルシャ...と、じゃあ今からゲートを開くからこれよろしく」


  と四つ折りの紙を渡された。

 カルシャが紙を開いて確認する前に黒いモワモワした空間の歪みのようなものが出現し女性の死神に突き落とされた。



  突き落とされて何時間くらい経ったのだろう、頭がまだガンガンする。

 カルシャは立ち上がり辺りを確認する。

 どうやら森の中のようだ、さっきのモワモワはまだ確認できるが、とりあえず四つ折りの紙を開いて内容を確認した。

 内容はこうだった。


「苦楽の森にて植物の魂が発見された。各自死神見習いはこれの早期回収を行うこと」


  植物の魂?なんのことかはわからないが、とりあえずそれらしいものを探すことから始めた。

 周辺を探して見ても植物ばかりでどれが目的の物なのかわからない。

 困りながらも探索を続けていると急に芳醇な甘い香りが漂いはじめ、なぜか足がその匂いのする方へとと進んでいく。

 カルシャは困惑しながらも足を運んでいく。

 香りの正体がわかった、今カルシャの目の前には薄いピンク色の球体のような果実が実っている。

 なぜだろうか、この果実の匂いを嗅ぐと自分を抑えられなくなる。

 果実の香りを嗅いでいるとだんだんと身体が火照ってきて体温が上昇していき、口元から溢れ出てくる唾液が脳にはやく食べたいと言う信号を送る。

 カルシャはだらけきった顔のままその果実に手を伸ばした。

 カルシャの手が果実に触れた時に気づいてしまった。

 これが、罠だと言うことに。

 果実の裏にはかなり太いツタが付いていて目の前の植物のような大木から生えていたのだ、カルシャの表情は一瞬の内に氷付き、体温が急速に冷えてへんな汗が額から落ちる。

 手が果実から離れなくなりさっきまでの良い香りから一変してむせかえるような植物の腐臭が目の前の切られた大木のような植物から臭ってくる。

 次の瞬間大木の木の杉目が開いたかと思うとそこから目玉のようなものがうきでてじっとカルシャを見つめてくる。

 さらにその大木の中には無数の鋭くて細い針のようなものが生えてきていた。

 カルシャは必死に果実から手を離そうとするがなぜか外れない、まるで強力な瞬間接着剤のごとく粘着力で力一杯引っ張っても果実ごと動くだけでほとんど意味がなかった。

 カルシャが何もできないでいるとツタが動き始めてどんどん大木の方へと引き寄せられる。

 引き寄せられる方向と逆の方向へと踏ん張るが徐々に近づいていく。


「まずい...このままじゃ....」


  思わず声が漏れた。

 大木の中にはいるまで残り数メートル、かなり腐臭が強くなるが意識を保つのがやっとなほどの異臭に耐える。

 さらに近ずくとあまりの匂いの強さに力が抜けてしまいもう抵抗する気力がなくなってしまった。

 大木の中まで数センチ、カルシャの柔肌に大木の針が食い込もうとした瞬間にそれは起きた。

 急にツタの部分が斬り裂かれ繋がっていた果実と切り離されたのだ。

 カルシャは今だといわんばかりに果実と一緒に一気に後退した。

 少し離れると状況が整理できた。

 ツタを切り裂いたのは他の死神だ。

 なぜならさっきカルシャが踏ん張って耐えていたであろう地点にコートに着いたフードを被った死神が短剣を手に立っていたからである。

 カルシャが礼を言おうとその死神に近づこうとすると急に地響きがなり大地が盛り上がった。

 さっきの大木があったところにはぽっかりと穴が空き大木の正体が露わになった。

  大木の正体とは5メートルほどある植物の化け物だったのだ。

 口から生えたツタから新たな果実が生えていてあたりに先ほど嗅いだ良い香りがほとばしっているが、化け物の見た目のせいでもう食べたいとは思わなくなった。

 化け物の見た目は、頭が大木でできていて体は植物が纏わり付いていていた上に大木の辺りに目玉が3個ありじっと死神を物欲しそうに見つめている。

 身体は待ち伏せの罠に特化しているようで異様に手足が短く、とても素早く動けるような身体はしておらず、森に溶け込むような色合いをしていて肉眼では判別しにくい。

 この化け物はまさしく冥界に住むにふさわしい見た目と悪意のある行動をしているように思えた。

 死神が短剣を構えると化け物は大木のそこから茶色の体液を吐いてきた。

 死神はそれを見ると一瞬で危険を察知したのか横に躱す。

 体液が地面に被弾したそこらいったいが強烈な臭いと共に溶け始める。

 茶色の体液は胃酸だったのだ。

 もしあの死神が助けてくれていなければカルシャは今頃あの化け物の栄養となっていただろう。

 そう思うと冷や汗が止まらない。

 死神はそのまま戦い続け、化け物を切り刻んでいく。

 あんな小さい刃一つであの化け物を圧倒している光景にカルシャは恐れとともにどこか美しさを感じていた。

 1分と満たない戦闘は死神の勝利に終わった。


「短剣ひとつであんなのを倒すなんて...」


 言 葉にもならないことが起こった現実にカルシャは呆然と立ち尽くしていた。

 死神がカルシャの前に立つとフードを脱いで素顔を晒した。

 その死神の素顔を見ると女性であることがわかった。

 髪の色は紫で後ろの方で髪を束ねてポニテールにしている、また瞳の色は黄色に輝き綺麗な色をしている。

 死神はカルシャに話しかける。


「あなたも死神見習い?」


  カルシャはうなづく。

 死神は興味なさげな顔をしながらも続ける。


「たぶんあの植物が目標でこれで終わりだと思うから帰りましょう」


  死神が振り返りゲートのある場所へと歩きだした時にさっきの植物から青と黄色の炎のようなものが吹き出してきた。

 死神は振り向き直して短剣を握り締めその炎に斬りかかる。

 死神の短剣が炎に触れると四散していた炎が死神の短剣に集まっていく。


「今のは何...?」


  二人とも顔を見合わせる。

 何が起きたのか理解できなかったが、おそらくこれが魂の回収なのだろうと思うことにした。

 帰り道の間にお互いのことを話した。

 死神の名はチハヤ=カラットといい生前のころは凄腕の盗賊で元は族長をしていたらしい。

 私の生前はどんな子だったのかはまだ思い出せない。

 興味はあるが急ぐようなことでもないので自分の名前だけ告げた。

 チハヤはどちらかというと物静かなイメージの容姿をしているが彼女の心に熱い何かを感じた。

 そうしているうちにゲートが見えてきた。


 ゲートをくぐると元いた城に戻ってこれた。

 先ほどの茶髪の死神が眠りながら立っていたのでカルシャは彼女を起こす。

 あくびをしながら彼女は起きる。


「なに?もう朝?」


  彼女は寝ボケてるのか、朝かと聞いてくる。

 カルシャは植物の魂の回収をしてきたと報告をした。

 すると茶髪の死神はチハヤの武器を確認し始める。

 確認し終わるとご苦労といい、もう部屋に戻っていいと言われたのでカルシャとチハヤは広場で別れた。

 また再開できることを思いながら。












ツイッターでイラストも上げてますよかったらどうぞ。

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