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銃火器ダメ。ゼッタイ。

 んぁぁぁぁぁ……っ!

 少し休むつもりがいつの間にか夜が明けてしまったな。

 随分と長い時間休んでしまった。

 暗くて人間があまり外に出ていない夜中こそ一番活動しやすい時間帯なのに勿体無い事をした。


 本来僕達ゾンビに睡眠も休息も必要無い。

 ゾンビになってから24時間ぶっ続けで活動をした事なんて何度もあるから間違い無いし、それで支障と不調をきたした事も無い。

 だが、人間であった頃の名残なのか横になって目を瞑っていると幾分楽になった気がするのだ。


 勿論疲労感や痛みを感じないからそれは完全な気のせいなのだと思う。

 でも、こう、言葉では言い表しにくいが何となく体に変化があったような気になるのだ。

 四肢や手足の指を失くした人が今もそこに失くなった部位が存在する感覚があると錯覚する事を幻肢痛ファントムペインと言うらしいが、それの疲労回復版?

 言うなれば幻疲癒ファントムヒーリング?的な感じだろうか?


 しかも、更に不思議な事にそうやって目を閉じて横になっていると異様に時間が経つのが早いのだ。

 意識は間違いなくハッキリしている。

 周囲の音や光の変化も事細かに記憶している。

 でも、気づけば今日みたいに休み始めたのは真夜中だったのに、気づけば朝になっていたり、数分程度の休息のつもりが数時間経っていたということはザラにある。


 まるで本当に寝ていたかのように。

 でも、寝てはいない。


 人間の頃ではあり得ない感覚だが、別段休む事によって何か不都合が生じた事は無いのでたまにこうやって休む事がある。

 今回はちょっと失敗してしまった感じはあるけどな。


 これが僕個人の異変なのか、ゾンビ全員の共通の特徴なのかはまだ分からないが、時間を早く進めたい時にはかなり便利だ。

 流石に夜が良いからってこんな朝から夜まで休むつもりは流石に無いけど。


 ……でも今日はこれからどうしようかな?

 人間もそろそろ活動を始める時間帯だから遭遇エンカウントの確率は高くなるから外に出るなら慎重に行動しなきゃいけないし、かといって家の中に居てもやる事なんてもう無い。

 片付けは終わったし、持って帰った物の整理も今は特に必要無い。


 ……となるとやっぱり外に出るのが一番か。

 どこに行こうかな?

 近くに小中高大と過去の思い出の品が詰まっている魅力的な場所はあるのだが、ああいう大人数を収容するのに便利な場所は当然多くの人間が立て籠もっていて、一つの城みたいに堅固な警備体制が敷かれている。


 何度か進入を試みようと下調べをしたが、毎日違う人間が複数人で1時間毎に交代で見張りと見回りをしていて、敷地内に入る事の出来る場所は車やコンクリートブロックでバリケードが作られている事が分かった。

 当然警備担当の人間は斧やバットなどで武装しているから僕が単騎で突っ込んでいった所で勝てる見込みは無い。


 だから中に入って色々物色するという事が出来ないのだ。

 人間さえ居なければ毎日のように行くのに。

 全く世知辛い。


 大型のショッピングモールも同様な警備体制だから進入は困難を極めるし、規模は小さいながらもスーパーなんかも似たような感じだから正直攻めにくい。


 でも、意外と人が集まっていないのは家電量販店とかだ。

 最初はあぁいう普段買えなくて生活に便利な家電製品が置いてある場所も人が殺到するのかと思いきや、全然そんな事は無かった。

 これは最近知った事なのだが、人口が減り過ぎた事によって全ての発電所で働く職員が完全に居なくなり、なんとか稼働させようにもゾンビが徘徊しているせいで手を付けられずにいるんだとか。

 そのせいで電力の供給が行われず、電気を使えなくなってしまってきているから自然と電化製品の金銭的な価値も利用価値も失われて今は誰も見向きをしなくなっているらしい。


 使えない電化製品はただの置物だ。


 なんて皮肉を言われるくらいにはこの国ではもう電化製品に価値は無いからどこの家電量販店にも人は基本居ない。

 たまに建物の広さを考慮して根城にしようとしている人間を見かけるけど、食べ物を一切扱っていない家電量販店では結局食料面での問題が解決出来ないので途中で挫折してどこかへ行ってしまっている。


 そう考えると家電量販店は良い狩場のように思えるかも知れないが、どんな電化製品にしろ、あんな重くてかさばる物は僕も要らない。

 第一持って帰るのも面倒だし、物によっては一時的に行動が不可能になりかねない。

 そんな時に人間に見つかったら集団でリンチにされて殺される事受け合いだ。


 なんやかんやで連中も逞しい人間だ。

 少しでも身の回りから脅威を排除しようと隙あらば僕達ゾンビを襲って数を減らそうとしてくる。


 特に昼間はそれが顕著だ。

 明るいから遠くまで見通せて、離れていても連携が取る事が出来るから集団での戦闘に適している。

 何より昼間は本来人間が活動すべき時間帯だから意識はしっかりと冴えているし、頭の回転も早いから僕達ゾンビを狩る為の作戦や計画を練って実行する絶好の時間帯なのだ。


 夜はゾンビの特性上僕らの方が圧倒的に有利だが、昼間は完全に人間の独壇場。

 僕も何度昼間に殺されかけた事か。


 1対1とか1対3までなら何とか僕個人でも対処出来る。

 けど、それ以上の人数となると流石にしんどい。

 多方向から先の尖った槍みたいなもので刺されかけたり、岩や金槌とか重くて硬い物を投げられたり。

 僕も戦闘のプロじゃないから全ての攻撃を予測して避けるのには限界がある。


 しかもそれと同時に傷害欲求も発生するから攻撃を避けながら、でも誰も襲わないように我慢に我慢を重ねて限界以上に欲求を抑え込事でやっと誰も襲わずに耐える事が出来るから冷静になるどころの話じゃない。

 人間と遭遇エンカウトとすると常にギリギリの状態を強いられる。


 だから僕はこういう時はゾンビの力をフルに使ってその場を離脱する事に専念する。

 昨日みたいに大きな声で叫んで怯ませたり、傷口に手を突っ込んで肉片や血を撒き散らして怯ませたりして隙を作る。

 それで包囲網に穴が出来たら全力で走って逃げる。

 ただただ走って逃げる。


 ゾンビ=ノロノロ歩いてまともに走る事の出来ない存在みたいに思われがちだが、近年の映画や漫画でも表現されてきているように実際はそんな事は無い。

 陸上選手並みに素早く走る事が出来る。

 多分色々体のリミッターが外れているお陰だろう。

 呼吸も必要無いし疲れも感じないからずっと走り続けられるしな。

 マジでやばい時はいつもそうやって突破口を見つけて逃げている。


 多分人を襲う事に躊躇いの無い奴ならこの身体能力があれば余裕で瞬殺なんだろうけど、僕はそんな事をしたく無いからどうしても逃げの一手を詮索するしか無い。

 その甲斐あって未だに一人も傷つけていない訳だし。


 あーでも本当未だに銃器を携えた人間に出くわして無いのが唯一の幸運だな。

 使う側からしたら頼もしいけど、使われる側からしたらたまったもんじゃない。

 あんなの使われたら余裕でオーバーキルだ。


 銃火器駄ダメ。ゼッタイ。


 ……よし!

 今日の目的が決定した!

 万が一に備えて銃火器を持った人間に遭遇エンカウントしても良いように防弾チョッキか何かを探しに行こう。

 備えあれば憂い無しって言うしな。


 そうと決まれば早速出発だ!



文章評価と感想評価を頂きました。

大変執筆の励みになるので沢山評価をして貰えるとありがたいです。

感想・批判も随時受けて付けていますのでどんなご意見も気楽に書いて貰えれば幸いです。

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