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拠点は民家!

 さて、と。

 さっきのコンビニかは歩く事約三十分。

 やっと僕が拠点にしている家まで辿りつけた。


 今、僕が拠点にしている家は元はごく普通の民家で特に特徴は無いのだが、道中それなりの数の人間がウロウロしているからエンカウントとしないように気をつけないとうっかり襲いかねないからどうしても家から離れた場所に行こうとすると帰るのに時間がかかってしまう。


 ここに帰って来る途中も三人ぐらいの中年のおっさん達が現実に悲観しながらボソボソと家の中に隠れて話しているのが確認出来たし、多分母親と生き別れた娘が寂しさから大泣きしそうな所を何とかなだめようとしている父親の姿も確認出来た。


 正直どれだけ声を潜めようと、気配を消そうとしてもこんな真夜中でシーンとしている場所では僕達ゾンビには全くの無意味。

 生きている人間なら聞こえないような音や声も僕達なら余裕で聞く事が出来るから残念だけどバレバレだ。


 まぁ彼らのせめてもの救いはこの辺にはもう僕以外のゾンビは居ないという事か。

 ゾンビは基本生きた人間を襲う。

 それは先の解説通り、抑え難い欲求が全身を支配するから。

 だから、この周辺の人間は既にゾンビに喰い荒らされて殆ど残っていない。

 よくよく探せば今の人達みたいに見つける事も出来るのだが、多分そんな面倒な事をするくらいなら最初からもっと人が多い所に行けば良いと考えて皆んなどこかへ移動していったのだろう。


 腐ってもゾンビ。

 人並みには考える力はある。


 まぁ僕は僕が自分自身に定めたルールを破らない為にも生きた人間には極力接触をしようとはしないし、したくない。

 共喰いなんてまっぴらゴメンだからな。


 ……そんなわけで僕は今思いもよらぬ緊急事態に遭遇してどうすれば良いのかが分からない。

 僕は今住処の二階にいるのだが、誰かが玄関から入って来やがった。

 それも声と足音からして三人だ。

 人が誰も寄り付かないよう死体から採取した血液を玄関や窓、壁などに凄いばら撒いて如何にも凄惨な事件現場を演出したのに全く効果が無かったらしい。


 平和なあの日本なら絶対人なんか寄り付かない感じなのに。

 適応能力高過ぎか!



「外があんな感じだったから中はもっと酷いのかと思ったけど割と小綺麗だな」


「本当。腐臭もしないし血の臭いも全然しないわ」


「荒らされてもいないようだな。……でも、誰かが生活しているような跡も無い。珍しいな。こんな場所がまだこの街に残っていたなんて」



 あーあーもう土足で入って来やがって!

 小綺麗なのは当たり前だ!

 誰が好き好んで汚い場所を住処にするか!



「まぁいい。どっちにしろここなら少しは安心して休めるだろうよ」


「だといいけど。あまり油断は禁物よ。どこから何が出て来るか分からないんだから」


「やめろよ縁起でもねぇ。折角落ち着いた場所を見つけれたんだからそんな事言わないでくれよ」



 残念。三人組のうちの女が言った通りここには既にその『何が』に該当する僕がいる。

 フラグは立った。後はどうやってこいつらを追い払うか。


 1.姿を見せて脅かす。

 2.大きな物音をたてる。

 3.大声で叫ぶ。

 4.その他。


 考えられる選択肢は主にこの三つか。

 でも、1は効果的だろうけど僕にリスクがある。姿を見せて対面してしまったら襲いかからないといけなくなるかも知れない。

 それは駄目だ。


 なら2はどうだろうか?

 これは正直悪くない。けど、物音の原因を探りに上に上がって来られたらアウトだ。

 確実にエンカウントしてしまう。

 2を選ぶのなら慎重にやらないといけないな。


 案外3が安定しているのかも知れない。

 ゾンビの低くて太い雑音の入ったノイズみたいな不快な叫び声が上から聞こえたら流石に驚くしかなり警戒する筈。

 運が良ければ僕以外のゾンビが近くに来ていればここに呼ぶ事が可能だ。

 そうなればもう僕は何もしなくていい。

 そのゾンビが三人惨殺するもよし、恐れを感じて三人が逃げてくれるもよし。

 あ、もうこれ3でいいや。

 その他の選択肢は破棄!

 1と2も同じく!

 それじゃやりますか!



「ゴアァアァアァアァアァ!!!!!」



 うん。我ながら凄い不快だ。



「なっ!?今の声……ゾンビか!?」


「ね、ねぇ!マズイよ!早く逃げないと!」


「クソっ!ここでも駄目なのか!」



 けど、そのかいあってか効果はあったらしい。後一押しだな。

 それゆけ人間退散兵器第一号!

 僕は隣にあったそれを階段から落とし、ゴンゴンゴンゴンと音を立てながら三人の前まで転がしてやる。



「う、うわぁぁぁぁぁ!?逃げるぞ!」


「嫌ぁぁぁぁぁ!」


「うっ……オェェェェ!」



 効果は抜群!

 見事三人の撃退に成功した!

 いやー我ながら用意周到だと思う。

 万が一の為にこんな物を作っておいて良かった。

 僕はさっき階段から落としたマネキンの首を拾い上げて元の場所に置き直す。


 このマネキンは僕が過去の品を探している時に見つけた物だ。

 最初はコレクションとして持ち帰ったが、これ血や泥の汚れをつけて加工してやれば本物の首に見えるんじゃないかと思ってこうして作ったんだ。


 汚れを施すのに主に血を使っているからリアリティはかなりあるし、こんな真夜中の暗い中で見れば生首だと思い込んでもおかしくない。

 少なくとも僕が同じ事をされたら絶対にビビる。


 まぁそんな訳で『二階に人を喰っているゾンビが居ると思わせる大作戦』は成功に終わった。


 やれやれ。

 これでやっと休めるな。


ちょいちょいグロい表現は出て来ますがあくまでもコミカルを目指します。

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