ゾンビの特徴
ゾンビになって分かってきた事。
一番代表的だと思っているのが、僕達ゾンビには実は意識や感情が残っている者が殆どだと言うことだ。
映画やアニメでよく見るゾンビは理性や感情が無く、ただ本能が赴くままに生きている者を見つけると襲いかかる獣のように表現されている。
が、実際には違う事を身を以て体感している。
僕自身は勿論の事、ゾンビ同士であれば意思疎通が可能な事も分かっている。
ただ、意思疎通が可能なのはゾンビ同士だけであり、人間とゾンビでは意思疎通が限りなく困難だ。
と言うのも僕達ゾンビは生きている人間を近くで目視すると例えようのない強い欲求に襲われて、生きた人間を傷つけずにはいられなくなる。
あえて言うなれば、殺人欲求と傷害欲求と食欲を混ぜた感じだろうか。
とにかくこの欲求は抑え込む事がとにかく困難で、如何に人間の頃の意識と記憶があろうとも逆らいにくい。
幸い僕はまだ誰も傷つけてはいないし殺してもいない。
当然喰べてもいない。
どうしてもゾンビとなった今でも人間としての尊厳を保ちたい気持ちと禁忌を犯したくない気持ちが勝りなんとか抗えている。
それに加えてなるべく人間とのエンカウントも避けるようにしているからな。
さっきの男女二人にしたように。
まぁそんなわけで僕達の意思を人間に伝えようとしてもそれよりも前に襲いかかってしまうから伝える事は出来ない。
けど、ゾンビが相手であれば襲いたい欲求が一切発生しないので何も問題無く意思疎通が可能なのだ。
しかも、不思議な事に僕達ゾンビはとても少ない言葉数で伝えたい言葉を全て伝える事が出来る。
例えば僕が『こんにちは!あなたの名前はなんですか?』と聞こうとする。
その時僕は【アー】とか【ガー】と言うだけで今の言葉の全てを伝える事が出来る。
勿論相手も『こんにちは!私の名前は大山田小一浪です』と言いたい所を【アー】とか【ガー】と言うだけで伝える事が出来るのだ。
それはまるで秘密的道具のツーカーなんとかだ。
かなり便利である。
それにそもそも僕達は人間の言葉を話せない。
生きていた時と同じように喋ろうとしても上手く言葉を話す事が出来ないのだ。
別に喉に怪我を負っている訳でも舌を欠損している訳でも無い。
理由は分からないが何故か喋る事が出来ない。
この三週間で色んなゾンビと出会ってきたが、ちゃんと人間の言葉を話せるゾンビは一人も居なかった。
だから多分ゾンビであれば全員共通な事なのだと思う。
そして僕達の体は既に死んでいるからか、あらゆる身体能力のリミットが外れている。
痛みを感じる事は無く、それ故常に火事場の馬鹿力のとも言える怪力を扱う事が出来、同じく脚力も向上している。
視力・聴力もかなり向上しており、夜間でもかなり遠方まで物をハッキリと見る事が出来、複数の音や遠方から聴こえる音を細かく判別する事が出来るようになった。
正直ゾンビになってからの方が不便が無くなっている。
死んでいるから食事や水分補給は必要無いし、疲れもしないから休息や睡眠の必要も無い。
如何に人間という生物が不都合に創られているのかがよく分かる。
しかも死んでいるわりには一向に体が腐る気配が無い。
勿論一度負った怪我は治癒する事は無いのだが、それでも体が腐らないのはありがたい。
腐乱死なんて嫌な終わり方はごめんだからな。
……まぁざっとゾンビの特徴はこんなものだろうか?
1.ゾンビにはハッキリとした意識や感情を持つ者が殆どだと言うこと。
2.生きた人間を近くで見ると抑えがたい欲求が発生して人を襲わずにはいられなくなると言うこと。
3.ゾンビは人間の言葉を話す事は出来ず、ゾンビ同士であれば少ない言葉数で意思疎通が可能だと言う事。
4.あらゆる身体能力が向上している事。
5.休息や睡眠の必要が無い事。
6.体は腐る事が無い事。
この6つだろうか?
他にもまだ僕が気づいていない事もあるかも知れないからまた気づいたら随時記録しておくことにしよう。
とりあえずゾンビについてのまとめはこんなものかな。
ここでやる事は全部終わったし、そろそろ僕の住処に帰るとしよう。
ゾンビの特徴はまだまだある筈です。
多分。