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61:橋がないなら作ればいい

短いです

「コーーーーーーーーーンッッ!?!?」



 場所はヤマト大国。その中州と本州を隔てる海域のど真ん中にて、人えではない獣の甲高い鳴き声が響き渡っていた。

 しかし一人を除いて誰もいないこんな海上の真っただ中では、そんな悲痛な鳴き声に反応する者などいるはずもなく、唯一の同行者である青年は内心でうるさいと文句を垂れながらも無視を決め込んでいた。


 まぁあそもそもの話、こうなっているのは青年――カオルのせいなのだが。




 それは遡ること数時間前。男二人組から金を巻き上げた直後の事だった。

 他にも仲間がいるかもしれないと探してみたカオルであったが、それらしい人影は見つからずに再び大通りへと戻った。狭い場所で襲撃される危険を考え、人目の多い場所のほうがまだ安全だと思ったからである。あと、逃げる際に隠れやすいというのも含めてだ。


 そして大通りを歩きながら考えた結果が、目的の橋にも同じような奴が待ち伏せしているのではないか、というものだった。

 隣町から執念深く追ってきている者達だ。となれば俺一人を相手にやりすぎだろ、くらい考えるのがちょうどいいだろう。そんな奴らなら、俺が都を目的地としていることもわかっていると考えてもいい。俺が情報を買ったように他の奴らも情報を入手しているかもしれないし、場合によってはあの店員さんに聞いたなんてこともあり得る。

 だがそれでも俺は都へ向かう他ない、というよりもこの中州にいてはまた狙われかねない。土地的にも広い本州に行くほうが安全で、しかも都なら紛れ込むのも容易いはずだ。

 うまくいかなかったときも、最悪の場合は森暮らしをすればいい。拠点さえ押さえればあとは自給自足……あれ? 俺ってしーちゃん達からのお世話なしで森暮らしできるっけ?


 ……まぁい、一か月くらいなら余裕! なはず! たぶん!


 で、だ。そんな理由もあって危険を冒してでも都へ向かうのは悪い話ではない。が、俺を殺そうとしている奴らが待ち構える橋には行きたくはない。

 ならばどうするのか。





「まぁこうするしかねぇわな」

「コーーーーンッ!?!?」

「喚くなっての」


 そんなこんなで今俺とシロは海の上を進んでいた。

 やっていることは説明すれば簡単なこと。渡れる橋がないのなら俺が自分で橋を架ければいい、ということだ。要は中州の海岸から巨花を本州に向けて咲かせて今もなお成長させている最中なのだ。


 アリストの街から地竜の森へ向かう際にもやったことであるが、楽だし速いために重宝しそうな移動手段だ。海を跨ぐ花とか人目に付けば騒ぎになること間違いないなので夜を待っての決行となってしまったが、海上を月を見ながらの移動とはなかなかに贅沢なようにも感じる。


 シロが喚かなければもっと風情があっただろうに。


 ちなみにシロがフードから出ている理由であるが、これは俺が無理やり出したのだ。俺のやり方のどこが気に食わないのか割と頻繁に俺の後頭部へ尾を叩きつけてくるシロに痺れを切らした俺は、フードの中からシロを出し、成長を続けている巨花のその最先端部分に蔓などで括り付けてある。もちろん、体に負担はないように気を付けているさ。


 まぁシロも暴れたら逆に危ないとわかっているからなのか先ほどから声を上げるのみ。まぁ、これで嫌われて本州に着いた途端逃げられたとしてもそれはそれで構わない。もともと何で着いてきているのかわからなかったんだし成り行きで、という曖昧な理由だ。いてもいなくても俺にとってはどちらでもいい。


 ……だがたった数日とはいえここで離れられたりすれば、俺も少し気落ちするかもしれないが。







 結果的にシロが逃げることはなかった。だがその代わりなのか、シロは本州の地に降り立ってすぐに俺のフードに潜り込むと、ペシペシペシペシと執拗に尾を後頭部に叩きつけていた。それも割と強めに。俺の頭は太鼓じゃないぞ。


 とりあえず、これで本州に着いたことは間違いないだろう。着地直前に上空にあがって見てきた。もちろんシロも一緒だ。あとはここから東に向けて歩けば都に到着だ。そこまでいけば紛れ込むことも容易い。うまく紛れ込んだら観光をしてみるのも一考だろう。


 橋で待ち伏せをしている奴がいるのであれば、自分で橋を渡したこの方法はかなりうまくいくはずだ。

 俺が橋を通らない限り、待ち伏せしている奴らが動くことはなく待ちの姿勢で行動しなければならない。何日もして俺が来ないことに痺れを切らし、街を捜索したとしても俺の姿はなく、その数日間で俺はかなりの距離を稼ぐことができるだろう。都に着くことも不可能ではない。


 向こうさんの不幸は唯一俺の魔法が特異すぎたことなんだろう。実際俺の魔法があってこその作戦である。これが普通の魔法だったなら今頃待ち伏せしているであろう誰かと戦闘になっていた可能性も否定できない。



 もっとも、俺の予想が外れていなければ、の話であるが。これで待ち伏せしてなかったらすごく恥ずかしいことになるぞ。


「さて行くか」


 そう自分自身に合図の言葉を出して歩を進めた。実際あまりここに長居していられないことも事実。できるだけ本州側の橋から遠ざかるように巨花を成長させてきたのだが、あまり角度をつけて橋を渡すと、目がいいものなら月明りでこちらを目視してしまう可能性がある。人目が付かないとはいえ、月明りもあり遮蔽物が何もない海の上だ。十分に考えられる。


 そして近隣住民に見られていないとは限らないのだ。

 中州から伸びてきた巨大な植物から人が降りてきた、などと言われれば俺でもそいつは怪しいと判断する。


 偽装が解けていないことを確認し、いつもよりもフードを目深に被る。すると、中にいたシロが俺の顔の横側へと身を乗り出してにらんできた。どうやら窮屈になって邪魔、ということらしい。俺のフードなのに態度がデカいなこの狐。


 海岸の砂浜に足が埋まる感覚。うまく歩けないしバランスをとるのが面倒臭いために顔をしかめそうになる。

 やがて砂浜を超えた俺はそこで息を吐き、本州の森の中へ入る。

 俺にとっては何もない砂浜で野宿するよりは多少危険でも森の中で野宿する方が都合がよいのだ。というのもまずは雨風を多少軽減してくれるし、潮風にさらされることもない。食料は俺の魔法でどうにかなる。

 それと、砂浜と違ってここの土の方が魔法を使いやすいのだ。



 普段は俺の魔力で花を咲かせ、その維持をしているのだが、俺の魔法はそれだけでなく俺が指定したものを自身のエネルギーとして利用する。例を挙げれば空気なんかも該当するのはさすがというべきか。

 ただ当然俺が指定したエネルギーは花が咲いている間常に消費されていくのだ。そしてそれは物体であっても変わりはない。花を咲かせる代わりに髪の毛をエネルギー源としたのがよい例だろう。だがなくなってしまえばそれまで。多少余韻で残ることはあるだろうが、指定エネルギー源がなくなり次第花は枯れて最後には消滅する。


 そしてこれらの問題を無視してくれるのが大地の力。いわゆる土に含まれる養分である。森の養分というのはすさまじいもので、俺が花を咲かせるのに多少使ってもその量は全体からしてみれば微々たるものだ。そのため勝手に花が消えることはなく、俺の任意のタイミングで消せる。俺にとって非常に便利なエネルギーと言えるだろう。


 余談ではあるが、森での戦闘なら負ける気はしないね。戦うつもりもないけどな。



「さて、明日中には街に着かないとな」


 先日のように野営地を探しだした俺はそのままノコンギクに囲まれ、花のベッドマシマシで眠りにつくのだった。


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