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42:フラグって知ってる?

最近、感想でしーちゃんかわいい、という方が多いことに喜びを感じています。Pさん頑張れ。



どうも、二修羅和尚です。今回はアルスのパーティメンバーがフルで登場します。ぜひ、楽しんでください!

「では、賢者様との再会を祝って! 乾杯!!」



「「「乾杯!!」」」


「……」


 それなりに広いレストランの個室。壁には高そうな絵や魔物の頭の剥製、部屋の端には高そうな壺などが配置され、目測でいくらくらいするのだろうか、などと考えてしまう。


 アルスらに連れられてやってきたこのレストランであるが、ここはアリストの街でも一番といってもいい食事処だそうだ。普通なら街を訪れた貴族や、身分の高い者しか利用しないらしい。

 冒険者であるアルスたちがここを利用できるのは、高ランクが故の収入によるものなのだろう。


 ウェイトレスである若い男性が部屋の出入り口付近に待機する中、アルスたちは先に運ばれてきた高級そうな酒を手に乾杯の音頭を取った。


 

「カァーッ!! やっぱ高ぇ酒はうめぇなっ!!」

「おいジップ、もう少し味わって飲んだらどうなんだ? それに、賢者様も見ていらっしゃる」

「細けこと言うんじゃねぇよ! こういうのは楽しんでなんぼだぜ? なっ! 賢者様よ!」



 俺に話を振るんじゃねぇよ、面倒臭い。


 飲みっぷりのいいジップをアルスが注意するが、ジップの方はまるで意に介していないようでそのまま二杯目に手を付ける。

 まだ料理も来ていないのに早すぎるのではないだろうか。


 まるで漫才のような(大して面白くない)やり取りは放って置いて、俺は手元の酒を一口(あお)る。高級レストランらしくここはコース料理を出す店なので、最初の料理が来るまでの時間は暇だ。バイキングなら好きな時に好きな量を取れるうえ、ここにはアルス(小間使い)がいるんだがなぁ。


「お久しぶりです、賢者様」


 ジップにコース料理とか似合わねぇ(笑)などと考えて酒を飲んでいると、わざわざ俺のすぐ隣にやってきた少年が一人。見れば、金髪赤目の少年。日本でいうと高校生くらいだろう。アルスと同じくイケメンといってもいい男である。


「……すまん。名前がわからん」


 相手の挨拶、つーかアルスと同じパーティのメンバーだから花園で会ったことがあるはずなんだが、どうやら俺の頭はまったく覚えていないようだった。

 俺の言葉に、あはは、と苦笑いを浮かべる少年は、「それでは改めて」、と佇まいを直す。


「アルスさんと同じパーティのイクスバードです。賢者様、あの時は僕の治療をしていただき、ありがとうございました!」


 勢いよく頭を下げる少年、イクスバード。名前長ぇなぁとか考えつつ、そんな少年の言葉に「おう」、と一言だけ返しておいた。

 そういえば、かなりの重症を負っていた奴がいたような気がしないでもない。というか忘れた。


「それにしても、また賢者様と会えるとは思っても見ませんでしたよ。何度か、あの花園に行こうとはしたんですが、どうしてもたどり着けなくて……アルスさんなんか、信仰心が足りない! なんて言ってましたから」

「何それ、あいつ怖い」


 イクスバード……イっくん(長いから略す)の言葉に、思わず身震いしてしまった。信仰心て、俺は神様か何かなのか。天使にしか会った事ないぞ。


「まったく、奴には困ったものですよ。賢者様から何か言ってやって下さい。それであの男は止まりますから」


 未だにジップとあーだこーだ言いあっているアルスに目を向けていると、先ほどまで静かに酒を飲んでいた男がそう言った。

 年齢は俺と同じくらいだろうか。整った顔立ちに長い赤毛を後ろで一つにまとめている様子から女のようにも見えた。が、声からして男なのだろう。


 ……つーかこのパーティ、イケメン多すぎ問題。ジップもあれで強面な野性味溢れるイケメン、といってもいい顔をしている。


 俺が少々不機嫌になっていたのを勘違いしたのか、赤毛の青年は翠の目を細めてこちらに向き直った。


「その様子だと、私のことも覚えてはいないのでしょう」


 まったくもってその通りなのだ


「ログルムです。今後、覚えていただければ嬉しく思います」

「お、おう……」


 やけに丁寧な物腰で話しかけてくるログルムと名乗る青年は、そう言って俺に手を差し出してくる。恐らく、握手でも求められているのだろう。それに応じようと手を出す。すると、すごい勢いで出しかけていた手を取られた。


「っ!?」


 驚いて、思わず手を引こうとするも、それなりに力の入っていた手を振りほどくことが出来なかった。

 一方のログルムは、そのまま数秒、更にはもう一方の手までを重ねて上下に振り、それから手を離した。


「……イクス、私はもう、この手を洗わない」

「いや、洗ってくださいよ」


 天井を見上げ、しみじみとした表情で目尻に涙を浮かべるログルムに、イっくんの言葉が突き刺さった。が、効果はあまり見られない。

 俺知ってる、これ、アルス(あれ)の同類だ。


「ログルムゥー!! 貴様、パーティリーダーである俺を差し置いて、何て羨ましいことをぉ!!」

「フンッ! そこで騒いでいる貴様が悪いのだ!」



「すいません、賢者様。騒がしくて」

「まったくだな」


 隣に座ったイっくんが空いたグラスに酒を注いでくる。

 なんと気が利く少年なのだろうか。


「アルスさんもログルムさんも、賢者様と会ってから強くなったと言って大喜びしてたんですよ。ログルムさんなんか、使えなかった魔法が、地味ながらも一つだけでも使えるようになって。それで……」

「ああなるの?」

「あ、あははは……」


 ログルムの手を握って、関節握手だぁ!! などと騒ぐアルスと、顔に似合わない叫び声をあげているログルムの二人。酔っているからなのか、騒ぎ方がうるさい。黙れ。


「まぁ、二人とも伸び悩んでいましたから。それに、アルスさんはともかく、ログルムさんは……」

「イクス、それに賢者様も。楽しんでるか?」


 そう話に割り込んできたのは、程よく顔を赤らめたジップだった。ただ、俺とイっくんの肩をまとめて抱えるんじゃねぇよ。暑苦しい。


 一気に不機嫌になる俺を他所に、ジップはガハハと笑ってイっくん側の手に持っていたグラスを煽る。


「僕も賢者様と話せて楽しいですよ。……それにしても、あの二人、騒ぎすぎじゃないですか?」

「……確かにそうなんだよなぁ」


 賢者様成分を返せこのタコォ!! 返すかこの野郎ぉ!! などと言い争う二人。一周回ってもうあいつら気持ち悪い。あれか、ストーカーになったファンに追いかけられるアイドルってこんな感じなのかね? よくわからないけども。


「これだけ騒ぐなら、街の居酒屋でもよかったんじゃ……」

「まぁ俺もそう言ったんだけどよ? 賢者様はわりとこの街では有名人だからって気を使ってな。ここならこうした個室もあるからってよ」

「へぇー……」


 どうやら、考えてのこの店だったらしい。

 まぁジップやアルスの言うとおり、俺はこの街のギルドに来た際に顔と名前が知られている(主にPさんのせい)と考えても良いだろう。自惚れではない。迷惑極まりない事実である。

 今まではアリエリストの屋敷にいたり、最近はアリーネさんと一緒にいたため、近づいてくる輩はいなかったが、今夜はそのどちらでもない。街でトップクラスとはいえ、ただの冒険者しか周りにいないのだ。これを狙って話しかけてくる奴がいてもおかしくはないだろう。


 そう考えると、アルスのとった選択は俺にとっても良いものだといえる。あとでお礼でも言っといてやろう。一応、奢られる身だしな。


「まぁ、一番の理由は、賢者様との食事を邪魔されたくないってところだろうがな」

「張り切ってましたからねぇ。この店も、ランクとログルムの伝で無理やり今日予約しましたし」

「あっそう」


 やめておこうかな。


「ジップゥ!! 貴様何故賢者様と肩を組んでいるんだぁ!! 俺にもやらせろぉ!!」

「イクス!! その賢者様の隣の席、私と代わりなさい!!」


 向こうで騒いでいた輩二名が、今度はこちらの二人に目をつけた。目がマジである。

 もうこのまま帰ろうかな、などと考えていた時、救世主が現れるのだった。



「お客様、個室とは言え騒ぎ過ぎです。帰ってもらいますよ?」


 ウェイトレスさん、あなたが神か。









「サルバーニ帝国ぅ? どこだそりゃ」

「え、知らないんですか? 賢者様」


 ウェイトレスさんの必殺の一言により、落ち着きを取り戻した俺達五人(正確には二人)は、俺をジップとイっくんが挟む形で円卓状の席に着いた。あいつら二人が隣になると、暴走しかねないという判断である。ナイス、ジップ。


「まぁな。そもそも、ここがシャルル王国っつー名前ってのも初めて知ったしな」


 運ばれてきた肉料理に齧り付く。作法? 俺が知るか。


「で? その鯖帝国とやらがどうかしたのか?」

「サルバーニ帝国ですよ、賢者様」


 アルスたちが俺に語っているのは、ここ最近の出来事だった。

 この間まで、護衛の依頼で少し遠出をしていたらしいこいつらパーティは、依頼人を送り届けた先の街で帝国とやらのよからぬ噂を耳にしたのだという。


 まぁその前に、俺が国のこととかあまり知らなかったわけであるが。


「サルバーニ帝国は、軍事方面に長けた国。ここ王国とは数年前までは国境付近での小競り合いがあったのですが、今はその様子もありません」

「当時は、帝国が王国への侵略を目論んでるっつー噂もあったんだがな。最近、また動きが出てきた、何て噂を商人連中から聞いてよ」

「商人たちはそういった情報に敏感ですから」



 ログルム、ジップ、イっくんと決まっていたかのように順に話していく様子に、俺はふーんと返して酒を飲む。

 しかし、国境ね……


「アルス、この国の地図ってあるのか?」

「あまり正確ではありませんが、それでいいのならば」

「それでいい。貸せ」


 犬のように喜んで地図らしきものを手にして駆け寄ってくるアルス。こいつの扱い方、ちょっとわかってきたかもしれん。

 

 差し出された地図を見る。国の大体の形が描かれており、そのところどころで点の印と名前が書かれていた。恐らく、街の名前と場所なのだろう。左下部分には、森らしき場所の直ぐ側に記されたアリストの文字。言われたとおり、あまりいいものとは思えないが、大体わかればいいだろう。改めて、現代日本のすごさがよくわかる。


「帝国ってのはどこにあるんだ?」

「この地図で言うと、左側ですね」


 王国しか描かれていないようなのでアルスに聞いてみると、直ぐに答えが返ってきた。どうやら、アリストの街は地竜の森を挟んで鯖帝国と隣接しているらしい。


「……小競り合いってのは、この街でもあったのか?」

「いえ、それはありませんでした。見てのとおり、このアリストの街と帝国との間には広大な地竜の森が存在しています。進行しようにも、森の魔物たちが邪魔になりますのでリスクを犯してまでここに進行はしてこなかったのでしょう」

「実際、小競り合いがあったのはもっと北の領地だしな」


 ログルムとジップの言葉に、なるほど、と頷く。

 となると、地竜の森がある限りは心配ないってことだな。じいさんもいるし、森を越えるとか無理に等しい。やろうと思えば、じいさんの怒りを買って国が滅ぶこともありえるだろう。


「まぁ、俺には関係なさそうだからいいや」










 その後、酔って絡んでくるアルスとログルム(馬鹿二人)をジップとイっくんに任せて、俺は一人アリエリストの屋敷に帰還する。面倒臭い飲み会ではあったが、まぁ、それなりに楽しめたのは事実だ。奢りなら、偶になら誘われてやっても良いだろう。


 ちなみに、イっくんは17歳らしい。ジップと同じくらい飲んでいたが、酒に強いのだろう。ケロッとしていたのには驚いた。


 さて、リアの実リアの実っと。



 

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