37:恐怖との出会い
本日二話目!! がんばりました!二修羅和尚です!!
二章三話、どうぞ!
暫くしーちゃんと戯れた後、二番目に挨拶すると決めていた女王のところへ行ってきた。
女王はカタコトで俺を出迎えてくれたのだが、これがまた嬉しいものだった。何せ、彼女は俺が最初に保護、世話をしたジャイアントアントである。
あのボロボロだった彼女がここまで成長してくれたのだ。今までここを離れていたこともあってか、涙腺が緩みそうになってくる。泣かないけどね。
ジャイアントアント達が森で取れた果物や、その果物を搾った果汁ジュースを運んでくると、次々と俺の前に置いていった。どうやらここで歓迎会でもしてくれるようだった。
ただ、全員で俺が食べる様子を眺めるのは少々勘弁してほしい。めっさ食べにくい。
歓迎会の様子を眺めながら、浦島太郎みたいだな、なんてことを考える。帰りに変な小包とか渡されないだろうかとアホな想像をしつつ、出てくる果物で腹を満たしていく。
途中、ジャイアントアント達が組み体操みたいなことを始めたんだが、これが彼らなりの踊りだそうだ。
もちろんすごいとは思うのだが、見た目が虫なので何ともいえない。俺としてはあれが人の女性だったなら文句なしだった。
いや、ジャイアントアントも慣れてしまえば愛嬌のある見た目はしているんだよ?
ただ、俺の求めるベクトルとは違うほうを向いているだけ。
目の保養や文明をとるか、それともここで魔物たちの優しさに触れた生活をするのか。
実に悩ましいものである。
なお、しーちゃんたちが美人に人化してくれれば森での生活が優勢となると思う。
「ギッ」
「お、ありがとうな」
飲み物のおかわりを頼もうかと思ったのだが、言う前に近くにいたジャイアントアントが顎の牙を上手に使って継ぎ足してくれた。なかなかうまいものである。
ふと気になってこの飲み物を入れているコップはどうしたのかと聞いてみると、じいさんに見本を見せてもらって自分たちで土を加工して作ったとのこと。彼ら彼女らが出す液には、巣を作るために土を固める効果があるそうだ。
割としっかりした作りで、内側も固めているため漏れ出したり、土が溶け出すなんてこともないようだった。
俺がいない間に、この子らすごいことやってない?
◇
「ほぉ、結婚のぉ」
歓迎会も終わり、俺が向かったのは以前使用していた部屋。どうやら俺がいない間も汚れないように手(アリの手、というのもおかしい気がするが)を加えていたようである。やだ、この子達優しい。
まぁでも、花は俺の魔力をエネルギー源としていたため、流石に枯れてしまっていたがそこはまた咲かせて何とかした。
そしてベッドで仰向けになっていたところで入ってきたのがじいさんだった。上の一言は、俺の愚痴を聞いた後のじいさんの一言である。
「そ。何がどうなってそうなったのかは俺にもわかんねぇんだわ」
「まぁお主が原因なのはよくわかったよ。それより、青林檎を出しとくれ。腹が減ったわい」
用意した花の椅子に腰掛けて催促してくるじいさんに、俺ははいよ、と魔法を使ってリアの実を実らせる。
巣の外には、魔物達が維持してくれているリアの畑があるのだが、そこまで行って実を採ってくるのは面倒だった。
「……そうだよ、これだよ! じいさん、あんたこれのこと知ってたな!?」
リアの実を森にいたときのように投げ渡しそうになったが、ふとその手に持った実の効果を思い出して投げるのを止めた。
そういや、俺はこの実についてじいさんから聞かねばならんのだ。
「む? その様子だと、これについて教えられたようじゃの。ちゃんと学んだか。関心関心」
「関心関心じゃないっての。これの効果聞いたけど、かなり凄い、もといヤバイやつじゃねぇかよ」
知っている限りでは自己治癒能力の向上、再生能力、病気の治癒、体力回復といった食べたものの体調を最高のものにする力に、魔法や身体能力などの超強化。魔力量の増大などだ。
「こんなもの作れるとか知られてたら、俺には厄介事しかやってこないよ! ヒモ生活とか言ってる場合じゃなくなってたわ!」
「安心せい。お主がリアの実を生産できることなんぞ、知っているのはお主が教えたアリエリストとかいう虫の主と、その従者くらいじゃろう。そもそも、希少ゆえにその存在を知る者は少ない。現物なぞめったに出てこんからの。その証拠に、お主がよったとか言うギルドでは知られておらんかったじゃろうて。あの冒険者どもも知っておらんかったよ」
ま、だからこそお主の賢者という名が広まったんじゃろうがな
最後にそう付け加えたじいさんに対して、俺は拗ねて花のベッドに顔を埋めることしかできなかった。
つまりあれだ。あの冒険者たちはリアの実のことを知らなかった。故に、彼らは出された料理やリアの実によって強化されたことを、俺が何かしらの手段で強くしたと勘違いした、と。
花園の賢者、などという名前は正直呼ばれても恥ずかしいだけだ。だが、その誤解を解こうとすれば必然的にリアの実について説明しなければならなくなる。
恥ずかしい思いをして普通に過ごすか、面倒事しか起こらない日常を過ごすか。
結果的に俺は前者を取ることにしたのだった。羞恥心など、楽をしたい俺にとっては屁みたいなものだ。必要ならプライドを捨てる事だって厭わないさ。
「あと、このリアの実について、一つ教えておいてやろう」
「ん? 何かあるのか?」
リアの実を美味そうに粗食するじいさんは、やっぱり美味いのぉ、と呑気な声を上げながら答える。
「このリアの実。確かに食べた者を強化する効果もあるが、正確には少し違う」
「そうなのか?」
その言葉に俺が疑問の声を上げると、じいさんは気分良く、うむと頷いて続けた。
「というのもじゃな、この実はその者に適した強化を行うようになるんじゃよ」
「……んん?」
つまりどういうことなのか。
詳しい説明を求めてみると、俺を例として話してくれた。
なんでもこのリアの実は、食べた者が魔法使いとして適しているなら魔法の才能や魔力を。逆に戦士や格闘家として適しているなら身体能力や体力を超強化してくれるらしい。俺はこの三年間リアの実を食べ続けてきたが、魔法使いとしては恐ろしく化け物みたいな魔力量と才能を誇るが、身体能力や近接戦闘に限れば並程度らしい。
つまり、俺に戦士としての才能はほぼ皆無と。どうりであんだけリアの実食べても、コールの近接格闘についていけなかったわけだ。なんだよ、リアの実。案外使えねーな
「まぁ、お主の場合は危険察知による回避も得意になったようじゃがな」
ありがとうリアの実。君がいなければ、俺は同い年くらいの女の子につぶされていたかもしれない。
ハグ的な意味で
……あれ、でも待てよ。ドラゴンのじいさんがリアの実を大量食べたら、いったいどうなるんだ?
チラリとじいさんに目を向ければ、そこには最後の一口をおいしそうに租借する老人の姿。だが、こんな姿でもじいさんは属性竜? とか呼ばれる存在である。
……もともとあれだけ強いのが、更に強くなる?
あまり考えないほうがいいかもしれない。
じいさんの敵になることだけはできるだけ避けるようにしよう。
「しかし話を戻すが、結婚するのも良いのではないか? この近くを拠点にするならば、我としてもやりやすいしの」
「やりやすいって、何がだよ」
「……まぁ色々じゃな。それに、結婚はお主の願望じゃっただろうに。何を迷う必要がある」
何かをはぐらかしたようにも感じる言葉だったが、俺が聞いたところで答えてくれないのだろう。無理に聞き出そうにも、相手が相手だから不可能に近いが。
とりあえず、俺はここに車での馬車で思い至った結論をじいさんに話す。
しばらくの間、フムフムと話を聞いてくれていたじいさん。
「つまりお主が求めるのは、美人で甲斐性があり、優しく接してくれて尚且つ面倒事を持ち込まない、養ってくれる者、ということでいいのかの?」
「まぁ、理想を言えばそうなる」
ふむ、とまたしても考え込む。すると、何か思いついたのか顔を上げた。
「我の孫はどうじゃ?」
「それ、もう聞き飽きてるよ……。第一、見たことないし写真もねぇんだ。何も言えないつーの」
そもそも本当にいるのかもわからない相手だ。何故嫁にしようと思えるのか。それに、いたところで性格もわからない、見た目もわからないってんじゃどうしようもないわ。
「今はこの森にはおらんからのぉ。まぁ帰ってきたら会わしてやる。楽しみにしておれ」
「期待はしない。……って、そうじゃなくて、今は俺がPさんと結婚させられるって話を―――」
そこまで言いかけたところで、不意にじいさんが天井を睨み付けた。
それもただ上を見ただけではなく、じいさんの瞳孔が爬虫類のように変化し、一瞬で先ほどののんびりとした空気が露散した。
「カオルよ。どうやらお主に客のようじゃ。一緒に着いて参れ」
「……え、この状況でそういう事言っちゃうの?」
そこは危険だからここにいろ、とかじゃない?
あ、ないですか。はい、着いていきます。
文句を言おうにも、あの目が怖い。仕方なくついていけば、じいさんは巣の外に出るようだった。俺もそれに続く。
時刻は御者さんと約束した時間にはまだ早いようでまだ陽は沈んではいなかった。
まだ明るいため、花園の花は元気に風に揺られている。
しかし、その花園のあちらこちらで顔を覗かせる魔物たちは花園のある一点を見つめたまま、警戒して動こうとはしていなかった。
「……ほぉ。また骨のありそうな虫が来おったわい」
じいさんも魔物たちと同じ場所を見ているが、その表情に緊張はない。逆に楽しそうな顔でヌハハと笑う。
何がいるのか、と俺も皆に続いてそこを見た。
そこにいたのは一人の女性。
初めて会うはずなのだが、どこか初めて合う気がしない女性だった。
彼女は一人花園の花を眺めていたのだが、ふと何かに気づいたのかこちらを向いた。
目が合った
心が高鳴った
恐怖で
あ、あれ、おかしいな。ここってときめくとか、そういう場面じゃないのだろうか。
な、何故俺は恐怖を感じている?
目が合ったその女性は、俺を見つけるとにっこりと微笑み、こちらへ歩み寄ってくる。
その様子を俺はじいさんの影に隠れながらみていた。
おいじいさん。そんなあきれた目で見るんじゃない。本当に怖いんだよ……!!
「あなたがカオルさんですね」
やがて、すぐそこまで近づいた彼女はそう俺の名前を呼んだ。
はっきり言います。怖いです助けてくださいおじいさん。
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