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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
34/76

34:一章エピローグと新たなフラグ

どうも、二修羅和尚です!

とうとう一章最終話です! というか、なろうで一章を完結させたのは何気に初めてだったり! 徐々にではありますが、読んでくれる人が増えてうれしい限りです!

本当にありがとうございます!

 それからの話をしよう……といっても、Pさんから話半分に聞いた話であるためにそれほど詳しいことはわかっていないのだが、簡潔に結果だけ述べるとするなら、今回の決闘騒ぎについては無事解決とのこと。喜んで帰って来た俺達三人をまとめて抱擁したアリエッタのパワーは忘れない。


 U・フルフート家の現当主であった成金豚は王国へ連行した後、裁判にかけられるそうだ。まぁ、裁判とはいえ、王政であるらしいこの国では最終的な決定権は王様であるそうなので、実質王様が決めると言ってもいいだろう。

 ユリウス曰く、Uの称号、並びに貴族としての地位と土地の剥奪は確実とのこと。死刑という可能性もあるらしい。一時的に王国の役人がフルフートの治めていた土地を担当するそうだが、それも代わりの貴族が見つかるまで何だとか。


 えーっと、他は何か……っと、そうそう。捕まった成金豚であるが、騎士団が到着したころには姿形が元に戻っていたらしい。それがなにか重要なのかと思うだろうが、考えるにあの姿は薬による魔力の変質が影響していたのではないか。

 あの時、ジシバリがエネルギーとして用いたのは奴の体力、魔力、そして近場の土地のエネルギーだ。クェルの何かを飲んであの姿になった、という言葉を信じるなら、その液体は魔力に作用すると考えるのが妥当だろ。体内魔力を限界近くまで花が吸収したために姿が元に戻った、とも考えられる。



 ……まぁ考えたところで、それがどうしたという話なんだが。


 「あぁ……お布団最高~」


 ボフッ、と枕に顔を押し付け、ゴロゴロとベッドの上を転がる。とにかく、昨日一日は俺が前の世界でも体験したことがないくらいには濃い一日だったと言えるだろう。

 故にその疲れを癒すため、俺がこうして次の日の昼頃までゆっくりまったりしていることはある意味必然の行動と言えるのではないだろうか?


 ほら、俺昨日めっちゃ頑張ったし。これくらい許されてもいいよね?

 

 「しかしあれだ。暇だ」


 昼までぐっすり寝たからなのか、妙に目が冴えている。こう寝てるだけというのも味がないし面白くない。いつもなら寝てるだけでいいやと思うんだが、やることがないっていうのも考えものか。


 「何か…何かないだろうか。俺が楽しめてかつ疲れることがなく、この部屋から出なくてもいい何か……」


 部屋をぐるりと見回してみるが、特にこれといって面白そうなものはない。


 森だったら、暇になったら外へ出て魔物たちと触れ合っていたんだが、ここではそうもできない。

 森にいた方が健康的な生活をしていた気がする。


 「……しーちゃん、元気にしてるかね…」


 思い出すのは、森での生活のほとんどを支えてくれたジャイアントアントの女の子だ。最後の別れ際、また会えるといってこちらに来たわけなんだが、このままここでヒモ生活が始まれば、会う機会なんてなくなってしまうのではないだろうか。


 「……ちょうどいいか」


 ベッドから降りてローブを着る。


 ちょうど依頼であった決闘も終わり、面倒な事件も決着したのだ。タイミング的には問題ないはずなので会いに行く、というのもいいだろう。ユリウスに言えば、許可くらいは出してくれるはずだ。


 というか、出してくれなかったら流石に怒る。


 あれだけ面倒臭がりな俺がわざわざしーちゃんに会いに来たと聞いたら、彼女は驚くだろうか。喜んでくれるとなお嬉しい。


 懐の飴玉の数を確認する。

 まだ数はあるが、そろそろ作っておかないと少々心もとないのも事実だ。しーちゃんにあげたら、ハニービーに蜂蜜をもらってまた作るとしよう。


 扉付近に立てかけてあった杖をアイテムボックスにしまって廊下に出る。するとそこには見知った顔があった。

 

 「あっ……か、カオル。そ、その……」


 「ん? なんだ、Pさんか」


 「アーネストよ!」


 少女、Pさん。本名アーネスト・P・アリエリスト。長いので言いやすいPさんと俺は呼んでいるんだが、Pさんはそれがお気に召さないらしい。


 「まぁそう怒るなって。かわいい顔が台無しだぜ?」

 「か、かわいいって……」

 「かわいい。Pさんかわいい」

 「うぅ……な、なんなのよ!! カオルのバカァ!」


 怒らしたら面倒だと思って褒めてみれば、どうやらうまくいってくれたらしい。

 未だに顔は赤いものの、Pさんはどこか嬉しそうなようすでそっぽを向いた。それを見て、これはいける、と少しからかうつもりでかわいいを連呼してみたんだが、Pさんはそれに耐えられなかったようで俺に子供染みた罵倒を投げながらどこかへ駆けて行ってしまった。


 「……流石にからかい過ぎたか?」


 今日からの生活に想いを馳せるあまり、俺のテンションも少々おかしかったようだ。あとで謝っておこう。覚えていて、かつ面倒に思わなければ、だけども。


 「ユリウスさん、いるか?」


 「ん? カオル君か。ああ、入ってくれ」


 ユリウスの部屋についたので、ノックをして許可を取ってから中へと入る。

 何かの書類だろうか、ユリウスはこちらを見ることなく黙々とそれに目を通して時折判を押していた。


 「仕事中だったか?」 

 「まぁね。だが問題ないよ。それで? 何か用かい?」


 チラッとこちらに目を移してくれたので、ああ、とその言葉に頷いた。


 「久しぶりに、あの森に帰ってじいさんたちにあいさつでもと思ってな。一時的に向こうに行く許可をもらいたい」


 一応、これから養ってもらう身であるため、こういった報告はしておいた方がいいだろう。勝手に行動して心象が悪くなる、何て事は避けたいしな。


 そして待ってろじいさん。お礼参りじゃぁ!! 勝てるとは思ってもないがなぁ!!


 「ああ、なんだ。そんなことか。もちろん、いいよ。すぐに帰ってくるのかい?」

 「場合によっては少し滞在するかもだ。まぁ、安心してくれ。ちゃんと帰ってくる」


 俺の森から出るときの行動を知っているなら、行ったきり帰ってこないと考えるかもしれない。もちろん、その可能性も無きにしも非ずだが、こちらの方が文明レベルが高いので俺としてはこちらがいいと思っていたりする。

 しーちゃんとかこっちに来てくれれば最高なんだが、魔物ってのは一般的には人間の敵だからなぁ…


 俺もよく仲良くなれた物だと昔のことを思い出していると、ユリウスはそうだ、と思い出したかのようにこういった。



 「カオル君。アーネストとの結婚式はいつ上げるんだい?」


 「……はい?」





 ◇




 「……連絡が入った。皆も知っているだろうが、どうやら王国の駒がしくじったらしい」

 「しくじった、とな? あれは奴が私欲で動いた結果だろうに」

 「愚者は利用しやすいが、こうなるとそれも考え物じゃな。いったい、何のために強化兵を融通してやったのか」

 「まぁよい。融通したのは強化兵でも一番性能の低い者達だ。此方に痛手はない」


 とある国のとある場所。

 数本の蝋燭で照らされた薄暗い石造りの部屋に彼らはいた。


 計七名。その全員が丈の長いローブにフードをかぶっていた。

 いかにも怪しいとしか言えない集団。カオルが見れば面倒ごとを起こされる前に全員を花の栄養に変えていただろう。


 「まあまあ皆さん。そうカリカリしても仕方ありませんよ? それに、マルフ・U・フルフートはあの薬の被検体にもなってくれたんですからそれで良しとしておきましょう」


 雰囲気が悪い中、ある一人がそう言った。

 声からしてまだ若い男は、ですよね、と隣の男に同意を求める。


 「然り。試作品とはいえ、強化の比は従来のものよりも遥かに高い。思考もはっきりしている。体内魔力に影響するせいか見た目が変わるが、方向性は間違っていなかったはず。成功と言ってもいいだろう」

 「まぁそれでも負けてんだがな」


 そう言ってカカッ、と笑ったのはこちらもまた若い男。先ほどよりも体つきはよく、一目で戦うことに慣れていると判断できる。

 そんな男は席を立った。


 「待て。どこへ行く」

 「ちょっくら運動に、な。こんなところそう長くは居られねぇし、なにより面白そうな女の話も聞けたんだ体が疼いてしかたねぇ」


 んじゃ、あばよ。


 軽い言葉を口に部屋を出て行った男。だが、いつものことなのかほかの面々は文句を言うことはない。が、軽いため息を吐くものも居た。


 「まったく……あれの身勝手さには困ったものだな」

 「だがあれでも将軍。実力は確かだ。それに、あの新薬を使った駒がまったく相手になっていなかった女というのも、確かに脅威ではある」

 「薬の生産はどうなっている?」 

 「安心せぇ。ちゃんと生産、改良も進めておる。そうさな……半年あればもっとよい薬を作れるじゃろう」

 「半年か……少し長いが、まぁいいだろう。それまでには準備も整う」

 「なるほど……あと半年で、その王国も終わりか」


 その言葉に、幾人かがニヤリと笑う。


 「しかし駒はどうします? 裁判にかけられれば、我ら帝国の存在もばれますよ?」

 「フンッ、心配するな。あれは輸送中に腕の立つ盗賊にでも襲われる。もちろん、我等は関与していないがな?」

 「なんともまぁ悪い顔してますねぇ」

 「そういうもんじゃよ、若造。お主も慣れる。……ところで話は変わるんじゃが、一つ報告じゃ」


 若い男の隣に居た、老人のような話し方をする男。恐らくは、その口調どおりの年齢なのだろう。

 彼の言葉に、他の面々は何だと問いかける。


 「実はのぉ、強化薬の作成と平行してもう一つ薬を作っていたんじゃがの? それがついこないだ完成した」

 「新薬か?」

 「然り。それも人に使うものではなく、魔物に使うものじゃ。元より人よりも強い生物じゃ。優秀な固体にそれを使ってやれば、それはもうすばらしいことになるじゃろう」


 ヒッヒッヒ、と気味の悪い笑い声を上げる老人。隣の若い男は若干引きつつも苦笑いを浮かべていた。


 「……ふむ、強い魔物を使えばいいんだな?」

 「然り。じゃが、まだちょいと不安要素があっての。使えば制御が効かんのじゃ。何とか言うことを聞くよう調整はしとるんじゃがそれだと強化の比率が下がるしのぉ…」

 「いや、それでいい。むしろ、比率を上げろ。制御は無視しても言い」

 「ふむ……というと?」

 「簡単なことだ。王国内でその薬を魔物に使ってやればいい。あとは勝手に暴れてくれるだろう。王国が弱ったところを我等が叩くのだ」


 そういって笑う男。それにつられて笑うフードの集団。彼らの頭の中には、蹂躙される王国民の姿でも思い描いているのだろうか。


 「では薬が出来次第報告しろ。以上、会議を終了する」

 

面白い、次も期待、などと感じてもらえたなら、ブクマ、評価お願いします!

それと、一章完結にともない、ストックがつきました!ごめんなさい!なので今日から毎日投稿は無理です。

なるべく書き上げたら更新としますが、不定期になってしまうのは許してください。

現在、三章までは話をどうするか決めているのでそこまではがんばろうと思います。

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