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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
32/76

32:一難去ってまた一難

どうも、二修羅和尚です!

まずは謝罪を。5000文字超えちゃいました!! 長くなって申し訳ない。


なんか、どんどん一話ごとの文字数が増えている気がする…



あと、今日33話を書き上げました。ストックがもう尽きたも同然でしたが、何とか一章終了!まぁ、まだエピローグ的なものも書かなくちゃですが、とりあえず、一区切りです!


まだ続くよ!

 はいきたこれ一番面倒臭いパターン。

 前への警戒を怠らずに、体を半身にしてどちらにも反応できるようにしておく。面倒なことが更に面倒になった。倍ではない。二乗である。クソッタレ。

 

 予想していた展開であるとはいえ、あまり現実に起きてほしくなかったことだ。おまけに、前門のコール、後門の海藻類+α。こうなってくると、俺が取るべき選択肢はコールを無視して海藻類たちからPさんを奪取。そのままクェルとともに逃走、というのがベストなんだろう。


 何か叫んで喚き散らす海藻類の言葉をシャットアウトして隙を伺う。油断してくれるならそれで結構。俺が楽になる。


 もはや、出会った頃の姿はどこへやら。今ではただ醜いだけの海藻類。まぁ、自身が仕えていた貴族の娘を誘拐したのだ。もう後には引けないのだろう。

 愚か、としか言いようがないのかもしれない。同情はしない。だって俺にとっては邪魔でしかないのだから。


 「うるせぇよ」


 その言葉とともに、コールが海藻類に向けて炎弾を飛ばした。

 ついでに俺にも飛んできた。何故だ、解せん。


 お馴染みの花の壁で防ぎつつ、視線を海藻類へ。

 着弾直後に炎弾の炎が揺れて露散したのを見るに、風の魔法でも使ったのだろう。不意打ちじみた攻撃に反応できるあたり、元筆頭魔法使いだった実力は本物のようだ。


 防ぎきった後、海藻類は杖をコールへと向け睨み付けた。


 「き、貴様!! 何故味方である私を攻撃した!? やるならそのいけ好かない男をやれ!!」


 俺も攻撃されたんですが。


 「はぁ? 味方? 冗談じゃねぇ。てめぇらみたいな輩は嫌いなんだよ。まだこいつのほうがマシだ」

 

 「なっ……!? 私たちを裏切るのか!?」


 「バーカ。最初から味方じゃねぇよ。お前らは強い魔法使いが必要だった。俺は強いやつと戦いたかった。それだけだろ。もうお前らの用件は終わったんだよ」


 「なんともっまぁ典型的な台詞を……」


 裏切ったんじゃない、最初から味方じゃなかったんだ。がリアルに聞くことができた。別に嬉しくない。やるなら別のとこでやってくれ。


 だが、今の会話でこいつらが仲間じゃないってことはわかった。


 「クッ……!! 傭兵風情が調子に乗るとは……!! だいたい、貴様があの決闘で勝っていたらこんなことにはならなかったんだ!! それを誰とも知れぬ魔法使いに……!! この責任をどう取るつもりだっ!!」

 「知るか。勝手に喚いてろ。俺がこいつに負けて、こいつのほうが強かった。それだけの話だろ」


 あっけらかんと言ったその言葉に、海藻類は言葉を忘れて口を陸に上げられた魚のようにパクパクさせていた。

 俺は意外なコールの言葉に驚いて、一瞬我を忘れた。


 こいつ、俺のほうが強ぇ! とかいってるイメージだったんだが。


 「舐めた口を……!! どれだけの金を払ってやったと思っているんだ!!」

 「んじゃ、あとで返してやるよ。もともと金には然程興味はねぇ。……まぁでも、俺に依頼を出してくれたことにだけは感謝してやるよ。おかげで、俺を負かす相手が見つかったんだからな」


 ギロリ、とまるで獲物を見つけたような目で俺を見るコール。このままPさんとクェル回収して帰りたいなぁとか考えてたから急に見られて苦笑いしか浮かべられなかった。

 本当、そういうの結構なんでほっといてください。


 「変な魔法を使う奴だとさっきの決闘は侮った。だが今は油断しねぇ。久々に、挑むつもりでいくぞっ!!」


 コールの姿がぶれた。


 それを見て、いやな予感しかなかった。

 これはやばいやつだ


 「『咲』」

 「遅ぇよっ!!」


 周囲に巨花を展開しようとするも、呪文を紡ごうとした瞬間にコールが目の前に現れ、そして俺が魔法を使う前にコールの蹴りが横腹に叩き込まれた。


 グェッ! という声が口から漏れ、蹴り飛ばされて宙を舞う。

 久しぶりの痛みに顔を歪めた。じいさんの一撃ほどではないにしろ、それでも痛いものは痛い。嫌になる。

 面倒だと言って全てを放り投げてしまいたいが、このままだと地面に激突、更にはコールによる追撃によって余計な痛み、怪我を負うことになるのは確実だろう。

 なら、このまま抵抗して迎撃する方がいい。疲れるのと怪我とならどちらも嫌だが、まだ疲れる方がマシだ。面倒だし、出来れば疲れることも御免被りたいが。



 幸いにもそれなりの身体能力はある。

 宙で体勢を出来る限り整えて、杖を地面に叩きつけることで蹴り飛ばされた勢いを緩める。


 「『咲け』」


 それでも勢いは止まらないので、魔法を使って花を咲かせた。

 突如現れた巨花は飛んできた俺を受け止める。今回咲かせたのは壁に使う頑丈な花ではなく、弾性のあるしなやかに曲がるものであるため、完全に俺の勢いを殺した。

 うまいこと茎の部分に着地を決める。


 同時に手にしていた杖をアイテムボックスに収納した。今に関して言えば、別に使わなくてもいいだろう。そもそも見た目だけだし。ただの鈍器である。

 気持ち魔法を使うのが楽になる気もするが、そんな気がするだけで持っているほうが面倒なのだ。


 閑話休題


 

 予想通りに突貫していたコールを視界に収めつつ、花の弾性を生かして跳んだ。


 結構な勢いと高さに若干ながらビビったが、何とかこらえる。あれだ、まっすぐに急発進するジェットコースターにでも乗っている気分だ。

 なお、俺はジェットコースターが好きではない。


 「なっ!?」


 コールの頭上を越える際に、奴と目が合う。

 驚きの声を漏らしたコールは一瞬立ち止ったものの、すぐさま反転して先程とは逆方向に駆けた。だが、遅い。


 じいさんなら片手間に俺のこんな奇策を破ってくるんだろうが、人間であるコールにそれを言うのも酷な話なのだろう。

 あの時のじいさんによる理不尽な暴力を思い出しながら、よく生き延びたもんだと過去の俺を褒めてやる。

 いい感じに余裕が出てきた。

 

 「『咲け』」


 俺とコールとの戦闘に気が取られていたのか、格好の的となっていた海藻類+α。

 自身の元へと文字通り飛んできた俺に焦ったのか、あたふたと杖を構えて呪文を唱え始める海藻類。Pさんを抱えた男は動かない。油断か、あるいは海藻類による指示なのか。

 どうでもいいか。やりやすいならそれでいい。


 四方八方の足元から生える花。その花の根が一斉に海藻類に向けられた。求めるエネルギーは奴の魔力。故に、あの花を退けるために魔法を使えば、その魔力ごと吸収される。


 純粋な魔法使い相手なら簡単に勝てるんだな。


 新しい発見に、これは楽だわと笑いそうになる。

 だからこれに対処できるコールとかいう奴はおかしいのだ。俺は悪くない。あいつが悪い。


 想定通り、魔法を使おうとして発動しないことに焦った海藻類。もう用はないので無視するに限る。狙うのはPさんを抱えた強化兵と思わしき男だ。


 海藻類が強化兵に向けて何かを叫んだ。それを受けて強化兵らしき男がPさんを地面に置き、杖を構える。迎撃の指示でも出したのだろうか、杖の先に赤い炎が灯ったかと思えば、バスケットボール程の大きさになった。



 だが俺が今まで相手にしていた奴のせいなのか、それを然程脅威には感じなかった。頭に浮かんだのは「雑魚やん」の一言である。あれでは、巨花一つ燃やすのも無理かもしれない。


 「『咲け』」

 

 後ろから追ってくるコールの気配を感じつつ、男の足元に向けて魔法を使う。その直後、大量の花が()()()から咲いた。

 ギャグ漫画などではキャラの頭から花が咲いた、などという描写があるが、ここまでくるとある意味気持ち悪い。

 俺の視覚に入った男の皮膚。そこを媒体として花が咲き、今も尚、容赦もなく男の体から体力と魔力を奪い続けているのだ。

 Pさんを降ろしてくれたおかげで、逆にやりやすくなった。感謝しよう。


 咲かせる場所などの調整が難しいのでPさんがいると巻き込む可能性があったのだ。


 ちなみに、じいさん相手に生き残れたのはこれのおかげだったりする。まぁ、それも力づくで打開されたんだが、強化兵といえどもこれをどうにかするのは困難なはずだ。じいさんのお墨付きだしな。


 念のため、もう一度魔法を使ってコールの妨害を行う。

 背後ですさまじい熱量を持った赤光が発せられたが、少しでも邪魔できたならそれでいい。


 「っ!? き、貴様ぁ!! このっ……!!」



 花を相手に四苦八苦する海藻類と、もうすでに倒れ伏した強化兵らしき男を無視して捨て置かれているPさんを回収。腰の部分を肩にあてて、俵を担ぐようにしてその場を脱した。

 

 俺に向けて杖を向けた海藻類であるが、奴が出来たのはそれだけだったようだ。次には根が腕に絡みつき、大量の根が海藻類を押さえつける。


 見ようによっては、触手プレイしてるようにしか見えないので、見るに堪えない絵図である。


 「あ? ……ッチ、何だ、もう終わりかよ」


 攻撃が来るのかと思い、とっさにPさんを盾にしそうになったが、どうやらその必要はなさそうだ。

 みると、腕に纏っていた炎はどこへやら。物足りないような顔をしたコールが強化兵らしく男を足場にして立っていた。


 「もうちっと人質を続けてほしかったんだがな……ほんと使えねぇわ、こいつら」


 ゲシゲシと足元の男を蹴りつけながら愚痴を漏らすコール。その言葉が聞こえていたのか、もう一方で根に絡まれて転がっている海藻類が声にならない唸り声をあげて身を捩っていた。ただの変態にしか見えない。


 「……意外だな。お前みたいな奴って、自分が死ぬまで襲いかかって来そうなイメージだったんだが」

 「どんなイメージだよ。俺だって弁えるわ。無防備な女を俺達の戦闘に巻き込むわけにはいかないだろう。それだけだ」


 こいつが主人公でいいんじゃないだろうか?


 ……いや違う、そうじゃない。


 「そりゃ立派な考え方だこって」

 「そうでもねぇよ。お前がその女をどっか安全な場所に置いてくるなら、すぐにでも再開するぜ?」

 「Pさん。俺は君を、もう絶対に離さない」


 だからお願いしますもうどっか行ってください。


 Pさんは絶対離さないぞと言う意思の元、コールにその意図が伝わるようにPさんを抱きしめる。

 女の子っていい匂い……って、これじゃ俺が海藻類みたいになってしまう。



 「……ッチ、続ける気はない、ってか」


 「当たり前だ。誰が好き好んで戦闘なんかするかよ、面倒臭ぇ」


 「はっ、そうかよ。……けど、勝ち逃げってのは気にいらねぇ。つーわけで、機会があればまたお前に勝負を挑む。逃げんじゃねぇぞ?」

 「安心しろ。全力で逃げ切る」


 俺の言葉に、そうかよ、といって立ち去ろうとするコールは、ふと立ち止まってこんなことを聞いてきた。


 「おい、名前は何だ」

 「は?」

 「早く教えろ。俺に勝った相手の名前くらいは知っててもいいだろう」


 その言葉に、俺は考えた。


 これ、教えたら面倒な奴だ、と。


 「ジョン・スミスだ」


 故に偽名。確か、アメリカでの名無しの権兵衛みたいな意味だったと思う。


 「そうか、覚えたぜ。あばよ、ジョン・スミス! 次は勝つ」


 その言葉も相まって、去っていく後ろ姿が酷く滑稽に見えたのは俺だけの秘密である。





 ◇





 さて、Pさんの回収は終わったことだし、後はクェルを呼びもどせばそれでこの件は解決だ。

 足元で唸っている海藻類を無視しつつ、屋敷へと向かう。


 そう言えば、この屋敷にはまだマルフとやらが残っているのだろうか。海藻類達がここに戻ってきたことから、たぶんいるんだろうが状況的に逃げててもおかしくはない。

 まぁ、いないならいないでそれでいい。後はユリウス達に任せれば……



 そう考えていた俺の耳元に、何かの破壊音が響いた。

 音源は真正面。視線を向けるもつかの間、俺は前から飛んできた何かを確認する前に回避行動をとった。

 

 その何かが、激しく地面にぶつかりながらも勢いを緩めていくと、ようやくその正体がわかった。


 ボロボロになったクェルである。


 「お、おい、クェル。何があったんだ?」


 「う……す、すまない、カオル殿……油断、した……」


 手にしていた剣は真ん中で折れてしまっている。おまけに、体中に痣や切り傷。左腕など、腫れ上がっている箇所もある。骨が折れている様子はないが、もしかしたら罅でも入っているのか。

 クェルが負けたのか……あの頭おかしいんじゃないかと思うくらいには強いクェルが?


 いったい、何を相手にしたんだとクェルが飛んできた方を見る。

 そこにあるのは屋敷に開いた大きな穴。クェルが飛びだしてきた穴だ。


 そして、その穴の淵に、巨大な何かが手をかけて現れる。


 「ブヒャヒャヒャ! 小娘がぁ……調子に乗るからそうなるのだぁ……。何、あのいけすかないアリエリストを殺した後、我が妻アリエッタとともに可愛がってやるぅ……」 


 そんな気味の悪い言葉を発したのは、全長三メートル近くはある二足歩行する醜い豚の化け物。


 はっきり言おう。

 もう、おなかいっぱいなんで、帰ってもいいでしょうか?




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