31:再戦と探索と
どうも! 毎度のことながら二修羅和尚です。
もう五月ですね。それなのに暑い。夏かっ
こうも暑いと冬の寒さが懐かしいですね。失ってから気づく……いや、違うか。
話は変わりますが、二修羅の家では暑くても関係なく鍋を食べます。美味しいですよね、鍋。
特に出しが染みた肉は最高。
そんなわけで、第三十一話です。どうぞ!
「今日あった奴の顔を、まして、この俺に勝った奴の顔を忘れるわけねぇだろ」
秘技、人違いですは見事失敗したらしい。どうやら、顔を完全に覚えられていたようだ。
ゆっくりと歩いて近づいていたコールは、一定の距離を空けて立ちどまった。昼に自滅で燃えてしまったローブは、買い換えたのかすっかり元に戻っている。
来ないのなら逃げようかとも思ったが、そうはいかないようで、完全にあいつの目が俺に向いている。まるで獲物を逃がさない野獣のようだ。野獣の視線。淫夢じゃない。
「で? 何か用か? 俺たち、急いでんだけど?」
「わかってんだよ。お前のとこのお嬢様が攫われたんだろ?」
「貴様…!! お前も共犯者か!?」
笑いながら魔法の炎をチラつかすコールに、クェルが吼える。だが、コールは違う違うと手をヒラヒラさせながらクェルの言葉を否定した。
「俺はそういう計画があるってことしか知らねぇよ。つーか、俺をあんな犯罪者みたいな奴と一緒にすんじゃねぇ。気分が悪ぃ」
「だったら、お前が俺たちを邪魔する必要はないはずだ。おら、そこどけ」
顔でも思い出したのか、心底嫌そうな顔をするコールに、言っていることは事実なんだろうとは思った。だが、そうであるならば、わざわざこんな中ボス、ないし四天王みたいな感じで登場する必要はないはずだ。
クェルを連れて歩き出す。が、俺はすぐに歩みを止め、クェルが前に出ないように静止させた。
直後、一歩前の足元が焼き払われた。何するんだという批判をこめてコールを睨む。
「だが、それとこれとは関係ねぇ。奴らは糞だが、今だけは感謝してるさ。こうして、またお前と戦えるんだからなぁ!!」
言い終わると同時にコールの炎弾が無数に飛んでくる。
俺は昼間の決闘のときと同じく、巨花の壁を築いた。
「くっそ、勘弁してくれよ……何故今あのイカレ野郎と戦わねばならんのだ……」
「カオル殿、どうする? 二人で仕掛けるか?」
「できれば逃げたいんだが、P……アーネスト連れ戻さないとだしなぁ……ユリウスさんの援軍待つのもいいけど、いつになるかわからんし……あ、面倒くさい……」
思わず頭を抱え込みそうになるが、それを我慢してさらに花の壁を厚くする。昼よりも火力が上がってる気がするんだが、お宅、覚醒でもしました?
一番いいのは、ここであいつを速攻で無力化して予定通りに事を進めることなんだが、生憎俺もクェルも相性が悪い。
昼に俺が倒せたのは不意打ち上等でいろいろやってだから、真正面から同じ土俵でとなると分が悪いのは確実。クェルもクェルでかなり強いのだろうが、あの男に勝てるかはわからない。そもそも、騎士と魔法使いでは比べられないんだが。
「クェル。ユリウスさんは後どれくらいでここに来る?」
「そうだな……兵の編成とここまでの行軍。急いでもあと二時間はかかるだろう」
「遅い」
思わず口に出た。クェルに睨まれるが、状況が状況だ。それくらいの文句は許せ。
「では、どうする? 私があの男の相手をしたほうがいいか?」
「その提案は嬉しいし、是非そうしたいとこなんだけど、たぶん無理」
壁の一部がこちら側まで炭化してきた。そろそろまずい。
「クェルは屋敷のほうに行ってくれ。たぶん、あいつは俺に目をつけてるしな。『咲け』」
屋敷に向けて巨花を咲かせると、クェルはその意図を察したのか、巨花を駆け上って屋敷のほうへと駆けていった。
それを見届けたところで壁を解除する。どうやら、もう攻撃は止んでいたようだ。
「随分とお優しいんだな。今の、攻撃しようと思えばクェルを攻撃できたはずだろ」
「ああ? 興味ねぇよ、んなこと。俺はお前と戦えればそれでいいんだ」
「……ああ、帰りたい」
炎対策の花を見えないように全身に纏う。
あくまで俺がやるのは時間稼ぎだ。屋敷にPさんがいるなら、すぐに取り返して帰ってきてほしい。
まだ帰ってきてなかった場合? クェルに任せたい(願望)
「さぁ!! 第二ラウンドといこうじゃねぇかっ!!」
「マジだるいわー」
◇
フルフート邸の庭で二人の魔法使いによる戦闘が始まる中、クェルはカオルに言われたようにフルフート邸の内部へと侵入していた。もちろん、窓は蹴破っている。
「無駄に大きいな……虱潰しに探すしかないか?」
目に付いたいくつかの部屋を開け、中を確認していく。
中には、扉を開けた瞬間に中から切りかかってきた強化兵と思しき男たちもいたが、一対一であるならば問題はないようで、戦士タイプも魔法使いタイプも問答無用。一撃で仕留めている。
「なめられているのか……?」
あまりの手ごたえのなさに、クェルは顔を顰めた。だが、今はそれでいいのだと自分に言い聞かせ、部屋の探索を続ける。
予定では明日騎士団に捕まるからなのだろうか、執事やメイドの姿は一切見えない。夜中だから寝ているということも考えられなくはないが、外であれだけの騒ぎになっているのに誰も騒がないのはおかしいだろう。
炎の赤い光が窓を通して屋敷の廊下を照らす。
奥から二体。どちらも戦士タイプだ。
「……問答無用で、押し通らせてもらう!」
瞬間、剣を構えたクェルが突貫。普段の鎧姿でさえ速い彼女のその速度は凄まじいもので、強化兵二人が反応を示す前にその背後へと移動していた。
少しの間クェルを見失った強化兵は、すぐにクェルを見つけて振り返った。
上半身のみが地面に落ちる。
「はぁ……何体いるのだ、これは」
大量の血が廊下を汚していくが、クェルはその様子を振り返ることなく剣を振り、付着した血を払う。
アーネストを守りながらでは発揮できなかった実力も、今なら存分に振るう事ができる。
そんな未熟な自分を責めながらも、クェルは先を急ぐのだった。
◇
「まだかよクェル!!」
「ハアァッ!!」
「ん゛っ!?」
屋敷に向けて文句を言った瞬間に、コールが肉薄、更に蹴りを叩き込んできた。
何とか杖を割り込ませたが、毎度のごとく筋力が足りずに勢いそのままで吹っ飛ばされる。
かなりの勢いがついているため、このまま地面を転がるのは勘弁、と花を大量に咲かせることでクッション代わりに。これでかなりの勢いと衝撃は殺せたが、それでも痛いものは痛い。
「おっと」
すぐさま俺の体を押し上げるように大きめの花を咲かせ、そこを足場にして跳んで離脱。
炎弾によって花が燃やされる様子を冷や汗をかきながら着地する。
「……おい、何手加減してんだ」
「はぁ? 何お前、痛いのが好きなの? Mなの?」
「そういうことじゃねぇんだよ!!」
否定の言葉とともに火炎が放たれる。
それをまともに受けるつもりはないので俺とコールの間に巨花を咲かせることで壁として攻撃を防いだ。
「うるせぇな……」
別に手加減してる、とか、舐めプしてる、とかそういうのじゃない。むしろ、長引いたら面倒なのではやく倒れるか中止にしてくれとさえ思っている。俺だって面倒だけど仕方なくがんばってるんだ。
ただ俺の繰り出す攻撃って全部花によるものだから、ヒットするまえに燃やされてるんだよ。花で炎相手に正攻法で勝てるわけないじゃないですか。何? 頑張ってる俺に対する嫌味か何かですかぁ?
そんなわけで、攻撃は無意味だと知ったためにこうしてクェルがPさんを連れてくるまでの時間稼ぎをしているわけなんだ。なお、痛いのと熱いのと焼け死ぬのは嫌なのでそこは本気で頑張ってる。YDKなんだよ、俺は。
「本気のお前じゃねぇと、勝っても意味がねぇ……!! あんまり舐めてっと、殺すぞ?」
「んなもん知らねぇし、興味の欠片もねぇっつーの」
何故俺がこいつの個人的な考えに合わせにゃならんのだ。
腕に炎を纏わせるコールに対抗して、こちらも杖を構えた。近接に持ち込まれれば、断然こちらが不利。あくまで時間稼ぎだから、この距離を保つのがベスト。
そう思ってた時期があったんです。
「な、何故貴様がここにいる!?」
声がしたのは、俺の背後。聞いたことのある耳障りなその声に、俺はあーあと天を仰ぎたくなった。
「はずれのパターンかよ……」
振り返れば、そこにいたのは暗くて見にくいが、海の海藻類の如くうねうねとした緑の長髪の男と、フードを被った男。
そしてそんな海藻類の腕には、気絶している出あろうアーネストの姿があったのだった。
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