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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
28/76

28:決着

どうも!二修羅和尚です!


世間はゴールデンウィークだったり、和睦だったり、事件だったりで色々と大変そうなことで。



そんなことよりも、ストックが尽きそうで恐怖しております。早いとこ書き上げないと、一章の最後を待たせてしまう。


そんなこんなで、第二十八話、どうぞ!

俺の名前を呼ぶPさんの声が耳に届く。が、悲痛そうな声を出しているところで悪いのだが、いい加減熱いし息苦しいのでさっさとこの鬱陶しい炎を振り払わせてもらおう。


 俺を燃やしたと油断しているであろう炭酸飲料野郎…長いからなし。コーラが掴んだ腕を振り払う。いくら俺が筋力で劣るとは言っても、それでも一般人よりは上である。油断して力が入っていない腕を振りほどくなど簡単なものだ。


 そもそもの話、外から見たら燃えているように見えるのだが、実のところ俺の表面ギリギリを燃やしているだけであって俺自身は燃えていないのだ。

 相性の悪い、更には人を燃やして焼死体を築いてきた奴相手に無策で挑むわけがないだろう。


 ちなみに今回俺が用意した策は、体の見えないところに花を張り巡らせるというもの。花は俺が燃やされる瞬間に体の表面の酸素と魔力をエネルギーに変えて、俺は燃えずに済んだのだ。だが、すれすれでもえているので熱いし息がしづらい。なので、さっさと終わらせる。

 


 炎が晴れる。


 「ッ!? なんっ…!?」


 殺したと思っていた相手が動いたからなのだろうか。コーラがあからさまに動揺した様子を見せた。

  

 「ラァッ!」

 「ゴッ…ッ!?」


 そしてそれは大きな隙となる。

 即座に手にしている杖を振りかぶり、大上段からの振り下ろしを頭頂部に喰らわせる。じいさんからもらったこの杖はもちろんのこと一級品。だからなのかその強度も一級品である。そんなものを頭に思いっきり喰らえば、ひとたまりもないだろう。

 死ぬ事はない。多分。


 「『咲け』」


 頭を強打したせいか、目の焦点が合っていないコーラを確認。同時に自由になった体を全力で後退させ、魔法を使う。

 スズラン、ジキタリス、ヒガンバナといった俺が知る限りの毒を持つ花を巨大化させ、もうすでに意識が戻りつつあるコーラを覆い隠す。さらに、その周りを無害な巨花で覆っていく。

 空気の通り道もない、光も入らない様に容赦なく。


 いくつもの花の茎や蔓が絡まり、重なり、その強度を増していく。大きさでいえば直径で十メートルはありそうだ。花そのものも巨大化しているせいで、見た目は花の怪物と言っても過言ではないだろう。

 観客席に視線を移せば、そこには目の前で起きていることが理解できていないギャラリーの方々。あのユリウスでさえ口を開けて呆然としているではないか。Pさんに至っては、泣いているのか怒っているのか、判断のつかない顔をしていたので取りあえず手を振っておく。

 睨まれた。何故だ。



 ボンッ、という微かな爆発音が訓練場に響いた。もちろん、音源はこの花の化け物に囚われたコーラだろう。恐らくは意識が戻って、あそこから出ようと必死になって頑張っているのか。


 「まぁ、そんな悪あがきもすぐに出来なくなるさ」


 花の塊に手を置く。微かに振動しているのは中で魔法を使っているからなのだろう。所詮は花。有機物。燃やせばいいと思うのは道理だろう。

 だが、俺が魔法で咲かせたこの大量の花はすべて生きているのだ。つまるところ、水分を含んでいるのである。地面から吸い上げないくせに何故なのかは不明であるが、そこは魔法。ファンタジーだからしかたないと納得するしかない。ないのだ。


 話を戻す。


 俺が咲かせた花はそれに加えて巨大。燃やすことは難しい。そう思っていたんだが、先程時間稼ぎに咲かせた花が簡単に燃え尽きたのを見るに、コーラの炎の魔法はかなりのものなのだろう。

 だから閉じ込めた。


 小学生で習うことであるが炎とは酸素がなければ直ぐに消える。

 このファンタジーな世界での魔法における火がどうなるのかは知らない。もしかしたら酸素とか関係なく魔力でのみ燃えるのかもしれない。


 まぁ、それを含めての結論があの花の塊(あれ)なんだが。


 今回、あの花を咲かせるために用いたエネルギーはコーラを閉じ込めた空間内の酸素。普通なら考えられないものも栄養としてしまうのが俺の魔法の変わったところであり、俺の生命線だ。そうでなければ俺は戦うことなどしないし、出来なければじいさんに殺されていた。

 とりあえず、密閉空間で酸素がなけなれば動けなくなるだろうし、戦闘を続ける必要がない。油断もあり、時間もかかって余計な苦労もあったが、まあまあ納得のいく勝利だろう。


 内部から音がしなくなったのを確認。更に、花が枯れ始めているのを見て魔法を解く。枯れる、ということはもうすでに中の酸素はないのだろう。

 ちなみにではあるが、中心部の花を毒持ちにしたのはそうしたほうが俺が勝つ可能性があるから。最悪重傷、死に至るような毒を持つ花もあった。もっとも、燃やされても効果があるのかは不明だが、やらないよりはやった方がいいという判断だ。


 こちらから積極的に殺そうとは思わないが、相手が殺しに来ているならもう原因から除去しないと危ないだろう。まぁ、死んだらそれまでってことで。俺が死ななければそれでいい。



 魔法が解除され、数多の枯れた花が消えていく。

 最後に残ったのは着ていたはずのローブが全焼し、全身が煤まみれになったコーラの姿。確認のため、彼の真下から花を咲かせて持ちあげてみる。が、反応はない。

 死んでいるのかと思ったが、どうやら生きてはいるようだ。


 あの環境下で死んでいないことに驚いたが、まぁ生きているなら生きているでいいだろう。

 

 指輪に念じ、アイテムボックスから森から持ってきた飴を取り出す。

 リアの実の果汁と蜂蜜を混ぜて作った簡単なものだが、材料が材料なだけに効果は凄い。

 リアの実のような絶大な効果や即効性はないが、体力と魔力の回復、外傷の治癒、体調不良の改善など、効果は小さいがなめている間それらが持続する優れものである。


 「…で? これ、俺が勝ちってことでいいんだよな?」


 飴玉をなめながら、審判役をしていたロドリゲスさんに声をかける。

 彼は少しの間言葉が出ずに唖然としていたが、すぐに気を取り直して勝者を告げた。


 「この勝負、カオル様の勝利!!」












 「カオル!!」


 観客席で見守っていたアーネストが席を立った。カオル君のところにでも駆けつけるつもりなのだろう。クェルもこちらに一礼してから娘を追った。


 本当なら私も一緒に行きたいところではあるが、そういうわけにはいかないのが現状である。


 「な、な、なな……!?!?!?」


 現実が受け入れられないのか、隣ではマルフ・U・フルフート殿が言葉を失くした豚のようになっていた。哀れなものである。が、自業自得と言うほかない。欲をかきすぎた結果だ。


 「ではフルフート殿。約束は守っていただきます。よろしいですね?」

 「ふざけるな!! 何だあれは!? 何か不正をやったに決まっている!!」


 喚き散らす目の前の男。その姿は酷く醜い。アリエッタを出せと言われた当初は、私自らが赴いて殺そうかとも思えたが、今はそんな気すら起きないほどだ。

 この男と、同じステージに立つ必要はどこにもない。


 「不正だ不正!! こんなもの、私は認めないぞ! 私はお前との約束など…」

 「強化兵、でしたかねぇ」

 「っ!? き、貴様、それをどこで…!!」


 たった一言。それを呟いてやれば、フルフートは酷く動揺した様子を見せてくれる。

 なぜこんな男が我らと同じ称号持ちなのか甚だ疑問だ。先代は有能ではあれども、子育てについては無能だったようだな。


 「あなたが自分で言ってましたよ。それに、我が家の筆頭魔法使いであるカーマインとずいぶん仲がいいようだ」


 ウィリアムからの報告で、この男がカーマインと情報のやり取りをしていたことは知っている。今回の件も、この二人が主導者なのももちろんのことだ。

 その事実を突き付けてやれば、反論などできないだろう。否定しても嘘だとわかる。


 「ああ、それとカーマインが連れてきた強化兵の彼のことなんだけど……すっかり元通りになって全部話してくれたよ。理性はなくとも、おぼろげながら記憶は残っていたようだ」

 「っ!? う、嘘だ! でたらめだ! 強化兵が、自我を取り戻すはずがない!!」


 あの日の夜。私はカオル君からリアの実を少しばかり分けてもらい、瀕死寸前で生きながらえていた強化兵の男にそれを与えた。

 見る見るうちに回復した男は、洗いざらい話してくれたさ。帝国で何が行われているのかをね。


 そこからわかるのはこのフルフートが称号持ちであるにも関わらず、敵国である帝国と繋がっていたことだ。まさか帝国もフルフートではなく、元には戻らないと思っていた強化兵から情報が漏れるとは思っていなかっただろう。


 もっとも、これも奇跡の果実と言われるリアの実あってこそなんだが。


 「マルフ・U・フルフート。君は少しばかり調子に乗りすぎた。すでに陛下には報告済み。時機に王都の騎士団が到着し、君は王都で裁判にかけられる」

 「く、くっぅ……!!! ユリウス、貴様ぁ…!!」


 拳を振り上げるフルフート。口ではなく怒りで手が出るとは。つくづく哀れな男だ。


 ナイフを抜いていたウィリアムを目で制止させる。

 

 そして同時に懐から杖を抜き、その先端を奴の顔面に突き付けた。


 「私も嘗められたものだね。これでも、昔は戦場でも名が知られていたんだけど?」

 「く、くぅぅぅ…!!」


 この男が拳を振るうより、私の魔法がこの男の頭を粉々にする方が速い。

 それがわかるくらいの頭はあったようで、私を睨みながらも黙るしかないようだ。


 「マルフ・U・フルフート。同じ貴族だった者としての最後の慈悲だ。大人しく君の領で陛下の沙汰を待つと言い」


 悔しそうに目を伏せるフルフート。

 

 私はそんな彼をよそに、下で嬉しそうにしながらカオル君に飛び付いたアーネストを見て微笑ましく思うのだった。


 アーネスト。恥ずかしいからって殴りかかるものじゃないよ…

 

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か、感想とか、レビューでもい、いいんだよ?(チラッ)

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